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●第36回:au「INFOBAR A02」
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●第35回:ユカイ工学
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●第34回:スペックコンピュータ
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●第33回:シャープ「COCOROBO」
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●第32回:エステー「エアカウンター」シリーズ
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●第31回:SONY NEX-7
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●第30回:Dyson Hot + Cool
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●第29回:ドコモ スマートフォン「P-07C」
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●第28回:東芝扇風機「SIENT」F-DLN100
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●第27回:OLYMPUS PEN
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●第26回:ウォークマンSシリーズ
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●第25回:シャープ「IS01」
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●第24回:パナソニック「Let'snoteシリーズ」
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●第23回:カシオ「EXILIM G」
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●第22回:富士通「FMV-BIBLO LOOX U」
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●第21回:Panasonic「LUMIX DMC-GF1」
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●第20回:Tivoli Audio
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●第19回:SONY「VAIO Wシリーズ」
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●第18回:KDDI「iida」
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●第17回:富士フイルム「FinePix Z33WP」
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●第16回:ダイハツ工業「TANTO」
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●第15回:ソニー「VAIO type P」
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●第14回:デジタルメモ「pomera(ポメラ)」
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●第13回:日本HP「HP 2133 Mini-Note PC」
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●第12回:ウィルコム「WILLCOM D4」
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●第11回:リコー「GR/GX」
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●第10回:オンキヨー「KM-2W」
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●第9回:東芝gigabeat Uシリーズ
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●第8回:ティアック「SL-A200」他
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●第7回:NEC携帯電話「705iμ」
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●第6回:ソニー「XEL-1」
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●第5回:日産「GT-R」
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●第4回:au携帯電話「INFOBAR 2」
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●第3回:新幹線車両N700系
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●第2回:ソフトバンク携帯電話「913SH」
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●第1回:マツダ「新型デミオ」
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ソニー「VAIO type P」
パソコンの新しい利用スタイルの提案
ソニー ポケットスタイルPC「VAIO type P」
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ソニー社内の3Dプリンタで無数に出力されたtype Pのモックアップ。容積と機能性はトレードオフの関係にあるが、今回は「手づかみ」できるサイズを最優先したという(クリックで拡大)
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type Pの利用環境を想定し、ソニー社内では男性向け、女性向けの専用バッグも試作された。これらはすべて見本ではあるが、PCを持ち歩くという「経験」がイメージできる(クリックで拡大)
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広告などで用いられているソニーのtype Pイメージ写真から
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●コンセプトを製品に落とし込む上での苦労

−−ポケットスタイルというコンセプト、そしてこのキーボードでこのサイズ。これをどう形にまとめていったのですか。

詫摩:今回のデザインは半年前くらいに終わっていて、あとは量産のための調整をしていました。
振り返ってみると、デザインのディテールももちろん頑張りましたが、そもそもこれを持って何ができるのかという「経験」をデザインしたかったんだと思います。
ポケットスタイルというのも、いつもポケットに入れて持ち歩けるということではなくて、荷物がいっぱいで「えっとパソコンはどうしよう…」となったときにポケットに入れられたら便利だよねという話をしたことがあるんです。普段はパソコンは大事に扱いますが、「あ、つかんでいる」と無意識にやっていることに気がついたときに、これってものすごくイノベーションだなと思って。カジュアルにつかめるとかポケットに入れられるとか、そういう経験をデザインしたかった。

そういった点を機軸に、例えば角のアールやビス穴の排除、クラフトマンシップの仕上げなど、最終的には凹凸がなくてポケットに入れやすいとか、カフェで気軽に使いたいということがやりたかった。内部では「旅パソコン」と言っていたんですけど、どこかに行くのにカバンにすっと入れるときに凹凸のある形でなく、極力シームレスで1本のアールで出来上がった形であれば引っ掛かることもないということですね。

−−すごくシンプルですよね、特にギミックもないですし。オーソドックスなデザインなんだけど何かカッコいい。

詫摩:実際このコンセプトをシンプルに仕上げていくのは逆にすごく難しいんです。デザインって表層的な部分だけじゃなくて中のストラクチャーとすごく密接に関係があります。それこそコネクターの数から部品の位置から。じゃあこの形にするときに最適な基板のレイアウトとか、もっと言うと1個コネクタを減らすとどういう形になる、増やしたらどうなるということを散々やっています。アイデアはすごくシンプルなんだけど、それを実現するための見えないところのソリューションはたくさんあるんですよね。

−−シンプルに見せることが難しい。基板はエンジニアの方が担当されていると思いますが、最初にこの形ありきですよね。そこにきちんと収まっていたのですか。

詫摩:全然収まっていなくって(笑)。基板、新規のディスプレイ、ワンセグのアンテナ、バッテリーも新開発。それらを全部掛け合わせて収めなければいけない。
最終的に幅120ミリのラウンドコーナーでまとめましたが、幅123?あればバッテリーの持続は何分延びてとか、コネクターを全部入りにしたらどれくらい増やせばできるというような検証モデルをすべて作りました。

最終的にはコンセプトの本質的な部分に立ち返って、まずサイズありきで、そこにフルサイズのキーボードを入れたらあと何が入れられるかという優先順位を決めていきました。

−−モックアップは社内で出したのですか。

詫摩:はい、社内で。うちの中に3Dプリンタをやっている部門があります。

−−社内にあるといくらでも出せるのでいいですよね。

詫摩:皆さんそうおっしゃるんですけど、デザイナーはこれ全部図面を書かないといけないんで(笑)。削って作ればいいんですけどね。3Dプリンタは逆にデータが必要になってくるので。

−−最終的に現在のデザインを選んだのは、これだけの数のモックを作った中で、何か腑に落ちるところがあったのですか。

詫摩:実を言うと直感なんですけど、最初に作ったモックがほぼ製品と同じなんですよ。僕はこれでいきたかったけれどスタッフは納得しないので、テイスト違いのいろいろなデザインを作って、「やっぱりこれだよね」と戻ってきたのが正直なところですね。

−−モックは社内の皆さんを納得させるためのツールとして必要なのですね。

詫摩:1つは、設計チームの中でバッテリーや画面の大きさ、コネクターの数を決めるためにモックは必要です。それから、実はデザインって内部が一番怖いんです、お互いデザイナーだから突っ込みし合うので(笑)。それでデザインを通すのはすごく難しいんですけど、内部で「これでいこう」と腹をくくるためのテイスト違いのモックはやっぱり別にあって、その両方の壁をクリアしてできた形ですね。

−−詫摩さんはこれまでコンピュータのデザインを担当されてきたのですか。

詫摩:今回のプロジェクトに参加するまではロンドンに赴任していました。そこのデザインセンターではリサーチ的な仕事やアドバンスデザインを担当していて、商品からはしばらく離れていたんです。その前はVAIO TR、PDAのクリエTH55、5.1chのスピーカーなどを手がけました。

−−エンジニアさんとのやり取りも含めて、詫摩さんの今回のデザインツールやワークフローを教えてください。

詫摩:最初は手描きのスケッチブックから始めます。形が出来上がっても細かい造形のアールなどを描き込みます。線の勢いとかあるので手描きのスケッチは大事にしています。スケッチは2次元CADを使って2次元にします。その後オペレーターの方にFRESDAMで3Dにしてもらいます。場合によっては3D CADでサクッと作ってということもあります。ちなみにエンジニアはPro/Eを使っています。

−−そのデザインに対して設計・製造に落とし込む段階で修正があった場合は、指示してオペレーターに直してもらうのですか。

詫摩:機構などが中に入るか入らないかを毎回デザイナーが確認しながらモデラーさんに変更指示を出し、きれいな面を作り直してもらいます。

−−モックはFRESDAMのデータをSTLにして出しているのですか。

詫摩:はい、そうです。

●type Pに見えるソニーらしさ

−−最後に、ソニーさんに取材するときはよく聞いているのですが、デザインにおいて「ソニーらしさ」というのは何か基準があるのですか。

詫摩:ソニーのデザインはデザイナー同士の切磋がかなり厳しいですよね、「何でこうなの」という議論が絶えません。ソニーは、クリエイティブセンターの中でOKが出なければ誰にも見せない、外に出さないとか、ものすごい厳しいです。少林寺の世界ですね(笑)。門を出るのはものすごく大変なんですよ。どんなに納期が迫っていてもクリエイティブセンターの中で承認が出ていないから事業部にも見せられない。だから細かいところまでクオリティが出せるのかなと思います。

−−細部に至るまで妥協しない。それは最終的な製品にもしっかり出ていますよね。確かにソニー製品には中途半端なものは見当たりません。

詫摩:あとはモノ作りへのチャレンジ。デザインだけの問題ではなく、設計と一緒に行うチャレンジとして毎回ハードルがあるんですね。「だいたいここだったら間違いなくできる」というモノ作りから、半歩進んで違う素材で作ってみよう、こういう素材が使いたいという何かを毎回盛り込むので、量産のギリギリのところまで毎回毎回設計者とデザイナーのせめぎ合い必ず起こるというのが特徴です。普通に量産性で考えたら、「これでやりなさい、この素材を使いなさい、妥協しなさい」というのが起こりますが、必ず企画の段階かどこかでワンステップ何かチャレンジしていくというのがソニーらしさかもしれません(笑)。

伊藤:ポイントポイントの判断がソニーらしさなのかもしれないと思っています。「え、そっち選ぶ? そんな大変なことを選んじゃうの?」みたいなところが、私どもにはあると思っていて(笑)。

ある意味、品質的にはかなりチャレンジングで、もしかするとそれによって商品が出せないかもしれないのにそっちを選んでしまう。そこは思い入れで「そっちしかないだろう」みたいなのが自分たちの共通意識にあります。それは「そうはいっても」と最初は思っていても、デザインが出てきたときに「やっぱりこっちだよね」という判断をみんなでしてしまうところかなと思います。

−−言い換えると、今まで世の中になかったモノを出すという気持ちですか?

伊藤:ええ、だからあえて難しいほうを選んでしまうと思います。「ソニーはこうあるべきだからこっちです」というような大儀で仰々しくやっているのではなくて、みんなで話している間の意識の中とか判断するポイントなんでしょう。その積み重ねで最終的なアウトプットが変わってきているのかもしれませんね。

−−クリエイティブセンターの中では、最終的に皆さんの合意が必要なのですか。

詫摩:そうです。事業部サイドがいいと言ってもクリエイティブセンターでノーが出れば「すみません、もう1回やり直してきます」ということになります。

−−クリエイティブセンターの皆さんが納得するものが、自分にとって納得できない場合もありますよね?

詫摩:そのせめぎ合いは必ずありますね。個人的にやりたいことがあっても、VAIOブランド、もしくはソニーブランドだからこうだという部分が必ずあって、そこのバランスは毎回苦しむところです。でもそこがまったく野放しになるとデザインもバラバラになってしまうので、そのバランスは慎重にやっています。

−−自分とチームとのせめぎ合いをデザイナー皆さんがそれぞれ持っていらっしゃるのですね。アドバンスデザインの経験はtype Pにも生かされていますか。

詫摩:アドバンスデザインは、造形もさることながら商品企画というのでしょうか。例えばウォークマンは造形だけではなく新しいライフスタイルを生み出したことが非常に大事だと思っています。

デザインランゲージ以外に商品企画ランゲージがあります。新しい商品のあり方自体をデザインするのがデザインだという考えもあって、今回「経験をデザインしたい」という話をしましたが、type Pにはその発想が生かせたと思います。

−−ありがとうございました。


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