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日本HP 「HP 2133 Mini-Note PC」
デザイン力でミニノートPCの価値を高めた
「HP 2133 Mini-Note PC」

2008年の夏にデビューした日本HPのミニノートPC「HP 2133」は、登場とともにモバイル系ユーザーの注目を集めた。UMPC、ネットブック、5万円パソコンとにわかに活性化してきたモバイル系PC市場の中でも、HP 2133はそのデザインや仕上げのクオリティにおいて群を抜いている製品だ。低価格帯にありがちなチープな仕上げを否定し、筐体にヘアライン加工のアルミを使用したHP 2133、その開発コンセプトを聞いた。

http://www.hp.com/jp

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日本HPのノートPCを担当するプロダクトマネージャの菊地友仁氏
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ヘアライン加工のアルミの筐体は独特の風合いを持つ。写真は使用機であるが、表面の汚れも気にならない(クリックで拡大)
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四方の角は丸くデザインされ、ネジを用いない仕上げとなっている(クリックで拡大)

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4列のアルファベットキーのキートップは凹面に処理されている。一番上のファンクションキーの列と一番下のスペースキーの列は平坦で、指先の感触でキー列の違いが分かる(クリックで拡大)
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タッチパッド周りのクリックボタンは上下に配置されることが多いが、HP 2133では左右に振り分けられている(クリックで拡大)
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 ユーザーをひきつけるHP 2133の魅力とは

●気品を感じさせるミニノートPC

−−HP 2133は何よりデザイン、仕上げの美しさが際立っていますね。

まず、HP 2133の設計やデザインはアメリカのヒューストンに部隊があって、デザイナーもそちらにおります。日本では直接デザインにタッチしてはいませんので、今回は私がマーケティングの立場から説明いたします。

HP 2133の仕上げは、手前味噌になりますけど群を抜いている気がします。デザイン面はもちろん機能面でも充実していると考えています。この製品ジャンルは、今でこそUMPCやミニノート、ネットブックと呼ばれることが多いのですが、このカテゴリーは市場に定着しつつあります。

ただHP 2133の設計段階ではそういう市場はまったく存在していなかったので、何か参考製品があって作るということではありませんでした。そういう点から必然的に独自の路線を打ち出せたと思っています。それから、価格も市場に受け入れられた大きな要因になっていると思います。

−−HP 2133はスタンダードモデルが59,800円、ハイパフォーマンスモデルが79,800円ですね(2008年10月22日、それぞれ44,730円、64,680円に値下げされた)。

各社さん、価格を抑えるためにいろいろなことをしていて、分かりやすいところだと素材や機能を落としている場合が多いのですが、HP 2133に関しては筐体にフルアルミを採用しました。

製品のコンセプトとして、基本的にはビジネスでも十分に使っていただくというところがあります。ビジネスマンの方に毎日過酷な状況の中で持ち歩いて、3年、4年と使っていただける、それに耐えられる仕様のものですね。軽くて丈夫というポイントを両立するための素材としてアルミを用いたのですが、見た目も美しさや高級感があって、満足感が得られると思います。

−−筐体にアルミを使った製品は珍しいですね。

パソコンでアルミを使っている製品は我々が調べた限りこれが初めてです。それまでも金属が使われている機種はありましが、一番多いのはマグネシウム合金です。チタンもありますが非常に高価でして、マグネシウム合金は軽くて硬くコストもそれほと高くないメリットがあります。ただマグネシウム合金は金属としてはあまり美しくない素材ですので、塗装やコーティングが必要です。

そうしますと、ユーザーにとっては傷がついてしまうことがありますし、再利用の際に塗装をはがさなければいけない工程がありリサイクル性能もあまり良くありません。アルミは美しいのですが、多少軟らかくて傷つきやすい素材ではあります。そこで表面にアルマイト加工(※陽極酸化という処理をしてあらかじめサビさせ金属を強くする)を施し、さらに傷がついても目立ちにくいようなヘアライン加工を行って、素材の質感を生かしています。

−−キーボードのデザインも印象的です。

ビジネス用途を意識して、キーボードにもこだわっています。他のミニノートは結構キーボードが小さいですね。キーピッチでいうとデスクトップPCのキーボードは19ミリ。HP 2133は17.5ミリ確保しています。このカテゴリーの製品では一番キーピッチの広いキーボードです。小さいマシンですとキーピッチが14ミリ程度の製品もありますが、やはりタッチタイピングを行うには厳しいです。HP 2133ではボディサイズいっぱいまでキーボードを広げて17.5ミリ確保しました。

また、非常に細かいところですけど誤動作を避けるため、主要なアルファベットキーは凹面になっています。そしてスペースやファンクションキーはやや膨らませています。触っているうちにキーの役割が分かるようなカタチになっています。

−−ディスプレイを開いたときの佇まいも特徴的だと思います。

これは、ディスプレイの高さを抑えるためにヒンジの部分をキーの裏側に回り込むような形で作ることで、高さをできるだけ抑えるデザインになっています。飛行機や新幹線の中で使っていただくことも想定して、エコノミークラスに乗りますと、前の方がリクライニングを倒されてディスプレイが十分開けないということがあります。そこでこういった機構を選びました。

さらに、通常のノートPCはハードディスクやメモリを取り替えるためのスロットにアクセスするためのネジや、筐体の裏と表を留めるためのネジが見えているのですが、HP 2133ではネジが見えないようにデザインしています。

●新カテゴリーとしてのミニノートPC

−−HP 2133の製品企画の際に、日本の市場動向などをアメリカに伝えているのですか。

製品によっていろいろなパターンがありますが、HP 2133に関しては日本の意見も大変大きく取り入れています。やはりモバイルノートの市場は日本が一番大きく、また先行していますので、我々からアメリカ本社にこういう仕様を盛り込んでほしいというリクエストをかなりしました。

−−アメリカはクルマ社会なので3キロのノートPCでなにも問題はないですからね。

アメリカは「Big is Great」の世界で、身体も日本人より大きいですからね。15インチのノートPCとかを平気で持ち歩いています。


−−日本ではLet'snoteがモバイルビジネス市場をリードしていますが、最近になってUMPCやスマートフォンなどモバイル市場がまた賑やかになってきていますね。

パソコンのマーケットは実はほとんど伸びていません。2000年を過ぎた頃から飽和状態で、一番伸びても年率4、5%くらいです。マイナス成長のときもあって、他社のシェアを狙うしか伸びる余地がなかったんですけど、そんな中で今唯一伸びているのがミニノート/UMPCと呼ばれる市場です。

調査会社によっても違うのですが、このマーケットは年率で大体400%くらい成長していて、ノートPC全体では5%くらいのシェアですけれど、3年くらいで20%くらいまではいくというようなデータもあります。個人の市場だけで見るとすでに15%を超えています。ミニノート市場はパイ自体を伸ばしています。今までパソコンを使っていなかった人にも広がりつつあるということで、ちょっと寂しい業界になりつつあったところに、一筋の光が入ってきたような製品ジャンルですね。

家電量販店などではノートPC全体の5台に1台はミニノートが売れているという状況です。ただ、おそらく量販店としてはあまりやりたくない製品だと思います。

−−安いですからね(笑)。

単価も安いですしその分儲けも薄利であると。それに、人が付いて対応するというのは、20万円のパソコンも5万円のパソコンでもあまり変わらないんですよね。ということで、人件費的な負担もあるのですが、お客様の興味が一番ここにあるので、対応せざるを得ない状況にはなっていると思います。

−−HP 2133はLet'snoteの一番小さいモデルとサイズは近いですが、価格は1/3くらいですので、今後、市場の構図が変わる可能性もありますね。

パラダイムシフトが起きていると思います。元々モバイルノートは日本のメーカーが非常に強かった。外資系のメーカーというのは基本的に世界で同じものを販売することによってコストを下げて効率よく回すというのが強みなんですけれど、モバイルパソコンの需要はほとんど日本にしかなかったのです。ですから日本市場向けに特化したパソコンは非常に作りにくかったんですけれど、その分日本のメーカーさんが20万円クラスで展開されていた。そこにドーンと5万円台で市場に新しい選択肢を加えました。

我々は1キロ前後の軽くて薄い製品は弱かったので自由にやれるのですけど、日本のメーカーさんはジレンマがあると思いますね。自社に20万円の製品があって、本当に5万円台の製品を投入できるのか。社内競合してしまうし、ハードウェアのパフォーマンスやバッテリー駆動時間の差だけでは15万円の価格差は説明できません。かといって参入しないと外国勢にシェアが取られてしまう。難しい立場にいらっしゃると思いますね。

東芝さん、NECさんが新モデルを投入され、富士通さん、ソニーさんも検討されているようですけれど、日本以外で展開すると言われているメーカーもあって、皆さん悩まれているのかもしれません。

−−ワールドワイドで展開する場合、HP 2133が日本以外でも受け入れられるという確信はあったのですか。

そこは悩みどころというか、本当に売れるのかという意見は社内でも非常に多かったです。モバイルノートは日本にしかないくらいの小さなマーケットで、こういうものを持ち運びする人が何人いるんだ、何人買ってもらえるんだという議論はありました。

ところが幸か不幸か世界的に景気も悪くなってきているというところで、価格面もあると思うんですが、HP 2133は日本以外でも爆発的に売れています。中でもアメリカでは絶対に売れないと言われていたんですけど、アメリカで一番売れているような状況です。

ですから、本当に価格から入って使われているお客様も多いと思いますけど、使ってみると結構取り回しが良くて、小さいカバンにも入るしいいじゃないかというように、お客様の考え方も変わってきているようです。

−−HPはこれまで200LXやOmniBookを作られていますので、この市場はご存知ないわけではないですよね。

そうですね。実は小さなPCも過去に作っているんですよね。当時は米オレゴン州のコバリスというところで200LXなどを製造していましたが、そこにいた設計者たちがヒューストンにも参加してHP 2133にも携わっていると聞いています。ですので、そこの血も多少入っていますね。

●設計者=デザイナーの企業風土

−−デザインに関してですが、HP 2133も例えば角のアールなどにHPらしさがあると思います。その「HPらしさ」の取り決めなどはありますか。

明文化されているものはないはずです。ただ個人的には、最近の製品を見ていてHPらしさは薄れてきているのかなと思っています。歴史的に、モノ作りでは設計者とデザイナーが同じ人のケースがあり、HPもこれまではそうでした。設計者がデザイナーも兼ねてプロダクトデザイン全体を考えていました。

そこでHPでは、2006年にデザイナー専門のチームを発足させました。メンバーは約15人でデザイナーのバックグラウンドは非常に多様です。パソコンだけではなく、ステーショナリーをデザインしていた人なども交え、国籍、出身も全然違う人たちを集めました。

このチームがデザインを手がけ始めてから、例えば個人向けノートPCの「HP Pavilion Notebook PC」など、今だとそんなに珍しくないですけど左右非対称のデザインで天板を取り入れたりとか、素材に今までパソコンに取り入れたことがないものを使用しています。例えば日本写真印刷という京都の会社のプラスチック加工技術ですね。自動車の木目の模様を作ったり化粧品のパッケージを作ったり、そういうプラスチックの加工技術を初めてパソコンに取り入れたりとか、新しいことを始めています。そういった意味で、昔からHPを知っている人にとってはちょっと変わったんじゃないかなと思うところがあるかもしれないですね。

−−そのチームには日本人デザイナーはいらっしゃるのですか。

残念ながらいません。アジアの人は何人かいるのですが。


−−2006年にデザインチームを誕生させたのは、どこもそうだと思いますが技術的には平均化されてきて、デザインこそ差別化の時代だというところからでしょうか。

まさにその通りですね。パソコン自体、我々メーカーといっても基本的にはOS、ハードディスク、ディスプレイパネルなどを集めて組み立てるアセンブラーなんですよね。では価格競争ではないところでお客さんに選んでいただくポイントはどこかという議論が重なって、それはデザインだろうということで専門のデザイン部門を立ち上げたという背景があります。

−−驚いたのは2006年まで設計者とデザイナーが一緒だったということですね。確かに昔は日本もそうだったと思いますが、それが2年前まで続いていたというのは衝撃的ですね。

アメリカのメーカーですよね(笑)。それほどデザインは気にしなくて、安ければ売れるだろうという感覚があったと思います。

−−過去においてもHPのデザインは優れていると思います。なかなかデザインアイコンを感じるパソコンはなくて、アップルかHPかというくらいに思っていました。ですから、HPにはインハウスに非常に優れたデザイナーさんがいらっしゃると思っていました。

確かに設計者とは言いながらデザインに特化した人たちはいました。でも、明示的にデザインチームというかたちでは分かれてはいなかったのです。

●ライバルはビジネスモバイルPC?

−−先ほどのお話もありましたが、HP 2133の日本でのターゲットはビジネス利用がメインですか。

ビジネスメインとは明言しにくいところあります。バックグラウンドとして「ビジネスでも使っていただけるPCを作りましょう」というところで企画していますが、現状ではまだビジネス市場には広がっていないですね。個人のお客様が大多数で、これからビジネスのほうに伸びていくと思います。HP 2133は新しいカテゴリーの製品ですが、企業ユーザーさんというのは保守的なところが多少ありますので、本当に仕事に使えるのかを十分検証されてから導入されるお客様が多いのです。そういった意味で、検証は多くのお客様からしていただいていて、企業ユーザーにも導入が始まりつつあるところですね。

−−HP 2133を見て、最初は企業内の個人ユーザー、平たく言うとマニアな方から入っていくという印象を持ちました。

まさにその通りです。ただ企業のお客様でもモバイルのノートPCを営業や従業員の人たちに持たせたくても持たせられなかった。一番は価格障壁があって、20万円の製品を従業員全員にはなかなか持たせられない。そこに低価格製品が出てきたということで、「これだったら従業員に持たせられる」という企業ユーザーさんも出てきていますので、これから広がっていくと思います。

−−確かにビジネスユースは保守的にならざるを得ない面があると思います。例えばCD-ROMがまだ必要だとかいうところですよね。

企業ユーザーは本当にそうですね。今でもフロッピーディスクがなければダメとか、シリアルポート、パラレルポートがないとダメとか言われる場合もあります。実際に使わないとは思うんですけど、仕様書にはそう書かれる。ただやはり値段には勝てないんですよね。使用目的を明確にされたお客様が導入するという感じです。

−−目標台数やライバル機は想定されていますか。

台数に関してはHP全社のポリシーとして具体的な数字は公開していません。指標としてはHPのノートPCのラインナップは20数種類あるのですが、その中でHP 2133は一番二番を争う数字が出ています。ライバルというのも難しいですね。各社さんからいろいろな機種が出てきて、各社各様いろいろな面に特化した製品があって、どこの何というのは決めにくいですね。ただUMPCやミニノートの中で競合するというより、狙っていく市場としてはビジネスモバイルPC系だろうと思っています。

−−ビジネスモバイルPCのリプレースは市場が大きいですよね。ただそういったマシンと比較すると、HP 2133はどうしてもCPUパワーなどスペックが追いつかないですね。

CPUやハードディスク容量は、時代とともに積極的に上げていきたいですね。ただ一般のお客様の用途ですと、現状のスペックで十分だと思います。他のミニノートに比べるとハードディスク容量も120GB/160GBありますので、オフィスアプリケーションや、インターネットやメールであれば快適にご使用いただけると思います。


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