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●第23回:カシオ「EXILIM G」
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●第13回:日本HP「HP 2133 Mini-Note PC」
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●第5回:日産「GT-R」
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●第4回:au携帯電話「INFOBAR 2」
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●第3回:新幹線車両N700系
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●第2回:ソフトバンク携帯電話「913SH」
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●第1回:マツダ「新型デミオ」
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日産GT-R
日産GT-R、
そのエクステリアデザインの完成まで

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後ろから見た日産GT-R
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前輪部分
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Cピラー部分
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丸型のテールランプ
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インテリアのスケッチ(上)と実際の運転席(クリックで拡大)
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●GT-Rらしさを自ら模索

−−GT-Rの写真を最初に拝見して、そのスタイリングに生き物のような、命を感じるような印象を受けました。デザインの力ですよね。ここに至るまでかなり試行錯誤されましたか。

すごくしています(笑)。今回はスカイラインから枝分かれし、GT-Rとしてオリジナルでエクステリアデザインを持つことになりました。そう言われてもじゃあどうすればいいのかが、とっかかりとして悩むところでしたね。

2001年に「GT-Rコンセプト」を作りましたが、あの後にちょっと時間をあけて、デザインのスタディを再開しています。改めて2001年のコンセプトはどういう感じだったのかなというのもあるし、グローバルに出すにあたってああいう方向でいいのか、それとももっと違う方向がいいのかとか、それは本当に考えました。

−−2003年の冬以降はスカイライン的な記号は使わないということになったのですよね。

それは微妙です。GT-Rはその前まではやはりスカイラインですから、GT-Rの先祖=スカイラインなんです。だからGT-Rらしさといったときに、スカイラインの要素はどうしても入ってきます。結果的に今回のテールランプは丸型の4灯ランプになっていますが、これはGT-R=スカイラインの伝統でもあるし、切っても切り離せないですね。先祖が同じですからそのDNA、遺伝子はどうしても出てきてしまう(笑)。

−−それはファンの方のニーズにお答えする使命、責任をお感じの面もあるのでしょうか。

お客さんにGT-Rとして見てほしいといったときに何が一番いいのかという意味では、全体のフォルムもGT-Rらしい形を作ろうと思っていました。しかしディテールの部分では、例えばテールランプは、アイデアの発想段階ではとくに丸型以外も否定していません。デザイナーからのアイデアは結果的にこういう丸ランプが出てくる。ということは、やっぱりみんなこういうのを欲して期待しているんだよねというので、それは素直に。

−−このデザインの他に、まったく違うスタイリングもありましたか。

幅はすごくありました。最初にオープンコンペ形式で日産の4拠点(アメリカ、ヨーロッパ、原宿・クリエイティブボックス、厚木)のデザイナーに声をかけました。やってみたい人は絵を描いて出しなさいといったら相当の数がきて、その中には本当にトラディショナルな、例えばアストンマーティンとかオーセンティックな雰囲気のものから、改造車みたいなものまで、ものすごく幅があったんです。

僕とデザインの役員である中村史郎さん、その他関係者の人たちと、それらたくさんのスケッチを見ましたけど、実際にデザイナーが描いてくれた絵を見るとコミュニケーションがしやすくなる。これはちょっといきすぎだよね、これではちょっと大人しいよね、これじゃあGT-Rとしてエレガントすぎだよねとか。そしてだんだん収斂(しゅうれん)していって、結果的に現在のデザインの方向になりました。

少しメカニカルな要素を醸し出して、ちょっとシャープなエッジとかを利かせながら、いろいろなところで表情のある面使いをしている。マシンなんだけどちょっと動物っぽい、そういう雰囲気です。

−−ジャパニーズテイストというお話でしたが、日本のデザイナーは意識しないでもそれを出せるものでしょうか。

出せるでしょうね。日本人の立体感とかはアメリカや欧州、韓国や中国の人とも違いますから、意識しなくても出ます。でも意識的にやるときには、潔さやちょっとシャープなエッジを利かせている感じ。あとは先ほど言ったメカっぽさ、ハイテク感というところを意識しています。

−−日本的というと、デコラティブな造形というより捨てていく印象があります。そういう面も感じるし、メカっぽさも動物みたいなものも感じる、すごくいろいろな見え方のするクルマですね。

いろいろな想いが入っているというのもあるかもしれません。

−−機能そのものに薄いカバーを掛けたような印象もありますが、マシンの形そのものを生かしたデザインなのでしょうか。

パフォーマンスを外観から感じてほしいので、全部隠してしまうとエレガントになってしまいます。このクルマはどんな走りをするんだろう、どういう性能を持っているんだろうというのが実際に走らせてみないと分からないというより、見て「なんとなくすごそうだ」というのを感じてもらいたいですね。

−−先ほど言われたオープンコンペですが、世界各拠点からの応募で、採用されたのは日本のものだったのですか。

これもまた微妙ですね。オリジナルに一番近いデザインは日本人の案ですが、開発している過程である部分はここのアイデアを取り入れたり、微妙にいろいろ取り込みつつ完成させたという感じです。ある意味、日産デザインの総力が入っています(笑)。ある部分ではヨーロッパのデザイナーのテイストが入っていますし、ある部分はアメリカからの提案のニュアンスが入っています。

●コンペから最終的なカタチに

−−コンペに関してもう少し聞かせてください。絵が集まったのはいつ頃でしょうか。

2004年の1月下旬か2月くらいかな。期間は1ヵ月くらいしか与えませんでした。

−−そのときにはデザイナーの方々に、「今度のGT-Rはこういうものでいく」というデザインコンセプトを提供していましたか。

いや、コンセプトはあまり言っていません。グローバルに出しますよという話と、先ほど言った3つのキーワード。それと、主要な諸元寸法と目標性能に対して空力的なことも考えてくださいということです。

どういう狙いでデザインするかは逆に考えてもらいたかった。とくにアメリカやヨーロッパのデザイナーがGT-Rをどういうふうに見ているか、どういう発想で考えてくるかを知りたかったですね。

−−本当に大枠だけですね。

みんなからの提案を見ながらこちらの考えとすり合わせ、だんだんコンセプトを固めていきました。我々もGT-Rとして作るときに、どういうディレクションで作るのかは一番最初の落としどころで、頭だけ、考えだけでは決められないところがあります。実際形にしていくつか見てみたいというのがありました。

−−最終的に型に起こすときは、クレイモデルをリバースエンジニアリングしてデータに取るのですか。

今はクレイモデルと3DのCADデータ、両面です。日産はAliasとICEMなどを使っていますが、データ先行で立体を作ってみたり、データが苦手なところは手で形を作ってそれを計測して、計測データをもう1回断面に落とし込んできれいにならしたりします。そういう作業を何度も繰り返しながらやっていくので、完成したときには3Dデータが一緒にあるんですよ。

データが得意なところはデータ先行でやるし、データが苦手な微妙なニュアンスとか手でやって、それをデータに取り込みます。最後はデータですね。CADデータになったのは2005年の後半です。

−−スケッチからクレイモデルにしたときに、スケッチのイメージと違う感じが出たりしますか。

出ますね。矛盾もあります。スケッチよりも立体のほうが良くなってきたときにはそちらを生かします。

−−長谷川さんはすべての工程を見られて、ジャッジされているのですか。

最終的なジャッジは中村史郎さんですけど、ジャッジの手前まではチームを含めて私がやっています。

−−今回のGT-Rは、長谷川さんの個人的な見解も含めてどのくらいの完成度でしょうか

180%です(笑)。やれることは全部やってきていますので。。

●ファンクションとエモーショナルと

−−改めてGT-Rは、エクステリアデザインのバランスをとるのが難しいクルマかなと思いました。

相当難しいですね。フロントフェンダー1つとっても非常にユニークな形をしています。Aピラーをブラックアウトしてほとんど後ろに下がるような形でルーフを作って、その後Cピラーにサイドビューでも折れていて、セクションでも折れています。こんなCピラーは世の中に存在しないんですよ。

普通、クルマのデザインは参考にできる形があります。真似しているわけではなくて、困ったときに「こういう場合はみんなどうやっているのかな」と見ると、工夫など教わるものがあるんです。でもGT-Rの場合は前例がまったくなくて(笑)、本当に自分たちで考えるしかなかったんです。

−−それはチャレンジングで面白いですよね。

そうですね。終わって出来上がったときには、何にも似ていない、本当にこのクルマでしか表現できない形になったという満足感は高いです。

−−受注台数は予想を上回る好評と聞いています。業界内でもかなりインパクトのあるデビューをされましたね。最後にインテリアに関して特筆すべき点はありますか。

インテリアは、ドライビングするときの視覚情報や操作するための機能などを、ハイスピードな領域でも安心して運転できる環境にしたいということが基本にあります。

それにエクステリアと同様、ファンクション的な課題と、デザインとしてのエモショーナルな要素のバランスですね。ファンクションだけでは形は発想できないですから。ドライバーを囲むようなインストの流れの中に、メーターなどの視覚情報を水平に並べて、独特な空間を演出しています。

あとは全体的に柔らかいもので巻くようにしています。メカニカルなんですけど、見た目や触感がソフトな感じ。すごく速く走れてしまうクルマですから。レーサーの方などに、「硬いものがむき出しになっていてそれが自分の近くにあるとすごく気になる」という話を聞いたので、そういうのを少し和らげるような処理も考えています。

−−高速で走る場合は包まれている感覚のほうが安心できるのでしょうか。

いろいろなアプローチがあると思いますが、今回はそういうアプローチでインテリアをデザインしました。

助手席も同様に安心感ですね。例えば助手席の目の前を硬いもので覆ってしまうとちょっと怖いかなというのに対して、ソフトなパッドで覆って、ハイパフォーマンスなクルマに乗っていても包まれるふうにして、ホッとするような空間にしてあげたいと考えました。

−−なるほど。では、言い残したことがあればお願いします(笑)。

GT-Rはけっこう空力開発が大変だったんです。エクステリアのデザインだけじゃなくて、アンダーフロアやエンジンルームの空気の流れなど、車両トータルで達成しています。私も今まで、スカイラインや他のクルマの空力を開発している中で風洞に通っていますが、これだけ通ったことはないくらい風洞の中でいろいろな形を決めてきました。風洞の中でいろいろな形を検討することが多かったクルマですね。

それとクルマを見てもらえば分かりますが、プレスですね。鉄やアルミなどを使っているのですが、プレス技術の限界に挑戦してもらっています。難しいところは一番伸びる素材であるスチールで作っていますが、エクステリアのフロントフェンダー、リアフェンダーはプレス成形が難しい形をしていますので、ここは関係者を含めてかなり苦労してもらいました。

−−ありがとうございました。
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