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Interview Index
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pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン

●フォルムそして構造をデザインするためにVectorworksをずっと使っています。ドリルデザイン
●デザイナーを強力に支援する必須のデザインツール「Vectorworks」/設計事務所ima
●デザインとエンジニアリングを融合したサービスを展開。三枝克之/有限会社咲和惟
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim」×芝 幹雄(デザイナー)
●建築、インテリア、プロダクトをボーダレスに活躍するデザイナー、田中行氏を支える「Vectorworks」
●Autodesk Visualization Contest 2010」の審査員、カーデザイナーの和田智氏に聞く
●低価格CGツール「CINEMA 4D」の計り知れない導入効果
●PTCジャパンが提案する最新のソリューションとは
●美しさに隠れた機能が光る日用品デザイン「フォルム」のモノ作りに迫る
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim Professional 2007+」
●ソリッドシンキングジャパン:「solidThinking」
●日本SGI:Asterismによるデザインビューシステム
●日本SGI:開発中のデザインツール


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* pd WEB Interview
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今、デザイナーのための
新しいツールの開発を進めています

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CASESTUDYのコーナーでは、各種デザインツールのユーザー事例をお届けしていく予定だが、第1回目は日本SGIによる開発中のデザインツールに関する話題をお伝えしよう。リリースは2008年とのことで、現段階でその詳細は明確ではないが、開発担当者の平井直哉氏の言葉から、従来にない画期的なツールであることは間違いなさそうだ。
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平井直哉
日本SGI高度ビジュアル・メディア開発本部インダストリアル・デザインセンターマネジャー。開発中のデザインツールだけではなく、医学・教育用のパッケージ「Virtual Anatomia(バーチャルアナトミア)」の開発にも参加。MRIによる実際に生きた人体のモデルデータからのビジュアル制作を手がけ、医用画像の世界でも最先端に関わるデザイナー。
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平井氏デザインによる自動車「アストロノミア」とそのアイデアスケッチ。アストロノミアの詳細は平井氏による下記コラムをご参照ください

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話を聞いた日本SGIの平井直哉氏*
* ●主軸はWSからソフトウェアへ

−−まず、現在の日本SGIのモノ作り業界へのアプローチを教えてください。

もともと我々はグラフィックスワークステーションを中心に展開してきた企業ですが、CPUやグラフィックスの性能向上に伴い、HPCは別にして、デザインなどミッドレンジ市場においては弊社の優位性を出しにくくなりました。日本SGIとしてはハードウェアで築いたネットワークをフル活用し、ソフトウェアで自動車をはじめとするモノ作り業界に貢献しようと思っています。

−−デザイン市場においては、WSからソフトウェア企業への転身ですね。

日本SGI独自のソフトウェアの研究開発チームとして「高度ビジュアル・メディア開発本部」という部署が設立されました。ビジュアライゼーションの技術部門からR&Dに特化したグループが独立したかたちです。

ここで現在、自動車メーカーなどの上流工程のデジタルソリューションの開発を主に行っています。従来の日本SGIのプログラマーがアプリケーションを提供するだけでなく、私のようなデザイナーも加え、デザインのワークフローの整備を目指しています。特徴的なのは、今のデザイナーやエンジニアに使いやすいかたちでのデザインツールを提供していこうという取り組みです。

−−ということはモデラーやプレゼンテーションツールを作るということですか? エイリアスやRTTに代わるようなものなのか。あるいは上流だけでなく、下流工程まで流れるものなのか、非常に興味深いですね。

モデリングツールの開発にはまだ着手していませんが、いろいろと模索してアイデアを練っています。私自身もいろいろな3Dツールを触ってきましたが、基本的に満足してはいません。既存のモデリングツールは、ユーザーがツール側のルールに則ったかたちでないと使いこなせないというある種のハードルが存在します。デザイナーはステップ的なことが意外と苦手です。紙と鉛筆の関係のように、もっとダイレクトに素早く画面上に出したいのが本音なのですよ。

面をコントロールするために線をコントロールしなければならない。線をコントロールしてデザインするというのは、感覚的に、立体を触っている人からすると、一歩下がった後ろ側的なコントロールになってしまう。クレイをスクレイパーでガッと削るような、いらない部分をザクザクと削り落とすようなスピーディーでダイレクトなモデリングツールがないかなという声はよく聞きます。みなさん思っていることは同じかもしれません。

●すべてのデザイナーにプレゼンテーションツールを

−−そのデザインツールはプレゼンテーション用途のようですね。エンジンから開発されているのですか。

コミュニケーションを中心としたプレゼンテーションツールというイメージですね。自動車業界でもビジュアライゼーションがビジネス的に大きくなってきていると思うのですが、我々は特定分野の限定された人のツールではなく、デザイン現場のみなさん全員に使ってもらえるツールを念頭に考えています。

開発はゼロベースからです。CGの最新トレンドを基本的にすべて取り入れて、従来よりも軽く、速く、美しくという点を特徴にしていきます。もちろん求められているリアリティは現在の技術の限界まで極めるということを考えています。操作も改めて覚えなくていい、昔からよく知っていたような既視感があるソフトがついに登場! という感じにしたいですね。

−−楽しみです。

今の現場で使われているツールは、自分のイメージが頭にあっても、そのイメージを画面の中に投影するにはそれなりに時間がかかります。それをもっと早くもっと簡単に、自分の頭の中にあるイメージをそのまま出せるようにしたい。8割くらいはソフトウェア側でオートマチックに表現し、そこから先の仕上げの表現は各デザイナーの出番にしたいと思います。

−−自動車業界に特化したツールですか?

クルマが一番多いとは思いますが、一般的な家電デザインもターゲットとして想定しています。たとえば携帯電話にしても時計にしても、今後はより個性的なデザインが登場してくると考えています。今の携帯電話の表面のモデリングは、まだそれほど極端なリフレクションの変化などは求められていない時代だと思うのですが、今後はそれを意識したデザインが主流になるかもしれません。クルマではそれはもう何十年も前からのテーマなので、まずクルマのデザイン開発において満足できるものであれば、最終的には家電デザインでも満足してもらえるだろうという気がしています。

●デザイナーに優しいツール

−−各種形状データを読み込んで用いるプレゼンテーションツールといったイメージですね。

基本的には、いろいろなツールのネイティブデータを読み込んでいきたいと考えています。はじめは自動車メーカーでメインに使われているツールのデータ形式をターゲットにしていますが、将来的には家電メーカーで使われているツールの読み込みも可能にします。

将来的には、2Dのスケッチソフトも用意していきたいですね。まだ漠然としていますが、これから求められるデザインツールとは、我々が今開発しているソフトの基本概念の延長線上に存在する気がしています。

−−日本SGIのオリジナルツール群の位置づけですね。CADツールは製造系から段々上がってきたツールなのでパラメトリックだったりして、デザイナーはスケッチを描くようにできないと言います。もっとフレンドリーなツールが出てきてほしいというのが、多くのデザイナーの希望です。

私自身もデザイナーですので、そこを念頭に置いて開発していきましょうとプログラマーには常々声をかけています。そうしないとパラメトリックに陥りやすい(笑)。数字的に答えを導き出そうとすると、そういう傾向になってしまいがちなのだと思います。

デザイナーのスケッチは何千本と線を引くうちに、その中から不思議な線が出てきます。その1本の線こそ神様が自分にくれた本当の1本なんじゃないかなと。それを探りたい、見つけるようなツールが欲しいよねと。それは紙と鉛筆じゃないとなかなか出せないのかなと思うのですが、SGIですからね、デジタルでそれを可能にしてみたいです。

−−スケッチというデザインの入り口から、紙と鉛筆ではなくてデジタルでやっていければという提案ですか?

また違う切り口の世界が見える気がします。ただ個人的には紙と鉛筆を否定していないし、そのスタイルは絶対守らないといけないと思います。3Dやモデリングツールがいくら進化したとしても、クレイモデリングは絶対にやめてはいけないのと一緒ですよね。アナログとデジタルのお互いの良さがバランス良く1つに結びついたスタイルが、今後の理想的な開発スタイルではないでしょうか。

●世界をリードするためのツールを

−−基本的にCADツールはほとんど輸入品で、日本のユーザーの声はなかなかリアルタイムに反映しない状態で、ずっと不満がありますね。現在開発中のツールは、従来のツールの概念を超えるものになりそうですね。

昨今の日本のモノ作りは、日本独自の文化をもう一度見直し、本来あった良さを世界に見せよう、そういうムーブメントがデジタルでも起きつつあると思います。ところがフタを開けてみると、そのためのツールや素材は半分以上が海外の商品だったりする。

全部が全部、日本製というのは難しいテーマだとは思いますが、いずれ解決したい目標として持ち続けたいですね。デジタルならではのデザインツールを作っていく我々としては、日本人が世界でリードできるためのサポート体制も念頭に置いて開発していくことを目標の1つにしています。

少し話がそれますが、今後日本が世界でリーダーシップを発揮するためには、コンテンツ作りも避けては通れない1つのテーマですよね。今まで以上に世界で通用するコンテンツ作りを行っていくためにはクリエーションツールも一緒になって進化していかないと、日本のコンテンツ作りは世界に遅れをとるのではと心配しています。

我々が目指している自動車のビジュアライゼーションはビジネスとしては出来上がっている世界であり、また求められるクオリティもかなり高い世界です。そこに我々の新しいツールを投入していくということは、我々もチャレンジ精神を高いレベルで強く持ち続けるクリエイターと同様でなければと思います。

−−リリースはいつ頃になりそうですか。

2008年の夏を目指していますが、開発が順調であれば前倒ししたいとも考えています。

近い将来、世界で活躍している日本のデザイナーから「使いやすいよね」と言ってもらえる日がくることを願って開発チーム一丸となり、日々頑張っています。

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アストロノミアのデザインコンセプト
平井直哉
車名の『アストロノミア-Astronomia-』はギリシャ語の『天文学』とか『桁外れな』などの言葉をベースにしています。
『星-astron-』と『法則-nomos-』


Photoデザインのキーワードは「概念を覆す」です。本来は、4年後、5年後と手の届きそうな先の世界をイメージしてデザインを進めていくのですが、今回はこのデザインとは別に、数世紀後の高速移動形態を先行的にデザインし、そのエッセンスをキープしながら現代に落とし込むといった変わった手法にトライしました。

エクステリアの基本コンセプトには日本SGIが持つプロダクトの独自のユニークさがベースとして存在しています。SGIのプロダクトは常にどの時代おいても独特の輝きを放っています。今回のクルマの細部にはその「想い」を装備していますので、ぜひ見つけ出してほしいと思います。

アストロノミアの用途は以下のとおりです。
1)日本SGIプロダクトデザインを象徴するイメージ
2)各種イベントデモにて日本SGIが紹介する各アプリケーションのモデルカー
アストロノミアを家電系から自動車までの各メーカーにアピールしていくことで、日本SGIが単に製造工程における可視化だけでなく上流工程のデザインに関する可視化をもサポートしていくことの決意表明として感じていただきたいです。


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