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▲写真1:ロジクール「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」12,880円+税。(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その72
ポインティングデバイスの未来の形は?
~ロジクール「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」をめぐって~


納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。


●マウスというポインティングデバイス

マウスというポインティングデバイスは、本当によく考えられていると、つくづく思う。まず、何がすごいといって、発想された当初は、扱うパソコンの画面も小さく、今とはまったく異なった環境だったというのに、今もなお、当初のアイデアに一切変更が加えられず、実用品として使えているということ。もちろん、細部の進化はものすごいし、無線化やボタンの配置など、使い勝手の向上へのアイデアは次々と実現されている。

しかし、例えば、ノートパソコンに付いているトラックパッドやアキュポイントのようなポインティングデバイスの場合、専用に作られたデバイスだけあって、ノートパソコン以外の環境に組み込んでも、今一つ、その機能を十全には発揮できない。ポインティングデバイスというモノは、基本的にはそういうものだと思うのだ。環境に合わせて作られたものが、もっとも使いやすくて当たり前的なデバイス。

ところが、マウスはそうではなかったというのが、すごいと思うのだけど、しかしマウスの「相対座標」という考え方は、慣れないと直感的に使うのは難しい。私たちは、もう忘れてしまったけれど、マウスの、一旦浮かせて再び転がすといった操作は、あまりコンピュータ的ではなく、かといってアナログの世界にはあまりない操作だった。

そして、現在、画面に直接触れて操作することができるようになって、ポインティングデバイスというモノ自体がレガシーアイテムになりそうなムードもあるけれど、しかし「指」というのは、ポインティングデバイスとしては、あまりにも曖昧というか、「ここ」という一点を指し示すのに向かないため、タブレットやスマホならともかく、パソコンの操作においての実用性は低いのだ。スタイラスペンも、どちらかというと線を描くアイテムであって、ポインティングデバイスとして使いやすいかというと、それは違う。何より、ドラッグ&ドロップ的な操作が、決定的に弱い(とりあえず、現時点では)。

●トラックボールも進化し挑戦する

そう考えると、マウス的な操作感と絶対座標で操作できるため直感的に動かせるという意味で、「トラックボール」というのは、かなり優秀なポインティングデバイスではないかと思うのだ。特に、画面上のオペレーションに限定すれば、マウスと比べても引けを取らない気がする。というようなことを、ロジクールの「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」を使いながら考えた。実際、置きっ放しで動かさずに使えるトラックボールというのは、マウスに比べて、かなり操作に使う体力が少なくて済むし、狭い机の上でも、どうかすると膝の上でだって操作できるというのは、とてもありがたい。絶対座標で動いているのも動作として分かりやすい。

この「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」、名作「MX」シリーズのマウスで、その技術には信用があるロジクールが満を持して発表した「MX」の名を冠した製品だけあって、すさまじく挑戦的な製品でもあるのだ。いや、良く考えられているのだけど、いきなりマウスの代わりにするには、ちょっと慣れとコツが必要な製品だ。まず、慣れない内は、その形状がマウスに似過ぎていて、手にすると、ついマウスのように動かそうとしてしまう。これはもう慣れるしかないのだけど、マウスより少し大きな筐体は、手を被せた時のカーブが快適過ぎて、そのまま動かせるような気がしてしまう。それだけ造形が良くできているということでもあるのだけど(写真02)。

マウスのように持って、親指でトラックボールを操作し、人さし指で左クリック、中指で右クリック、というのが基本姿勢(写真03)。さらに、人さし指で操作できるホイールがついている。このあたりのボタンはMXシリーズを踏襲している。細部のボタン位置が微妙に違うので、MXシリーズの上位機種に慣れている人ほど混乱しそうだが、Macのマウスに慣れた身だと、ボタンで混乱することはない。むしろ、そのたくさんのボタンを使いこなせなくて悲しかったりする(写真04)。

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▲写真2:手前から見た形状は、ほとんどマウスだ。(クリックで拡大)










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▲写真3:このような形で操作する。右手用の製品なのだ。(クリックで拡大)



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▲写真4:ロジクールのMXシリーズに準じたボタンの数々。ホイールの後ろの接続機器を切り替えるボタンは、機能が固定されているので、他の機能を割り当てることはできない。(クリックで拡大)






●多機能性が求められる現在のオペレーション

かつて、筆者が使ったことがあるトラックボールは、昔のPowerbookに付いていたもの。手前にボタンが付いていて、その向うにボールが付いていたタイプだ。また、大きなボールの手前にボタンが付いたタイプも使ったことがあった。どちらも、ボールの操作をメインに考えたデザインで、ボタン操作は基本的に左右クリックのみ。大型のタイプは手のひらでボールをコントロールしながら親指でボタンを押すと便利だった。

マウスも同じだけれど、これは、画面上の任意のポイントをいかに素早く指し示すことができるか、というインターフェイス用のデザインだと思う。だから、カーソルを目的の場所に持っていってクリック、という操作にはとても便利だ。カーソルの移動距離が長い場合、マウスよりも便利かも知れない。しかも、大画面向きだから現代のパソコン向きとも言えるだろう。でも、この形のトラックボールが一般的になったとはとても言えないのが現状。

パソコンが高機能化し、アップルでさえマウスに右クリック的な操作を付与する現在、マウスが担っている操作は、ポインティングではなく、マニピュレーター的なものなのではないだろうか。ドラッグ&ドロップという操作が、すでにマニピュレーター的であるが、それ以外でも、例えば選択操作、描線操作なども、素早く、広い範囲で行う必要がある現在のパソコン作業では、シンプルなポインティングデバイスでは対応しきれないのだ。

●ワイヤレストラックボール MX ERGOという解答

という状況にあって、トラックボールの新しい形を模索した解答の1つが、「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」の独特な形なのだと思う。そう考えると、ボールをコントロールしつつ、複数のボタンに無理なくアクセスできる形になったのは自然なことのように思える。さらに、このトラックボールは底面についている磁石と付属の金属板によって、全体の設置角度が変えられるようになっている(写真05)。これが、かなり効果的なのだ。
ほぼマウスを握った形そのままになる角度(写真06)と、マウスを外側に傾けたような角度(写真07)は、前者がボタン操作が多い場合のセッティングで、後者はボールのコントロールをメインに置いたセッティングなのだと思う。もちろん、そういう機能的な意味でなく、手首のクセとか好みや設置場所などに応じてフレキシブルに角度を変えられる、ということなのだと思うけれど。

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▲写真5:この背面に磁石で貼り付ける金属板で角度を変える。(クリックで拡大)



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▲写真6:これが平たい形状。ボールよりもボタン操作に重きを置いたセッティングと言える。(クリックで拡大)



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▲写真7:こちらは、斜めにした状態。ボールコントロールに重点を置いたセッティングだが、この角度が汎用的に操作するのにバランスが良いと思われる。(クリックで拡大)




しかし、使ってみた当初は、思想は分かるけれど身体が付いていかないというか、ついマウスのように本体を動かしてしまったり、親指でのボールのコントロールがうまくいかなかったり、右クリックの中指に力が入りにくかったり、長時間使っていると指がプルプルしてきたりと、ほとんど使えない状況だった。それが、短い距離のカーソル移動ならとてもスムーズに扱えるようになり、2週間くらいでコツをつかんだようで、マウスよりも楽に操作できるようになっていた。ポイントは、腕を机に付けて手首を浮かせず、親指にはやや力を入れてボールを回すことのようだった(写真08)。

マウスのように本体を動かす必要がないので、設置面積が少なくて済む上に、手首を浮かせる必要がないため長時間の操作でも疲れにくい。無線だから膝の上に置いてリモコン感覚で操作できるし、トラックボールならではのポーンとカーソルを飛ばすことができるので大画面での操作も楽。親指を休ませるスペースもあって、配慮も行き届いているのだ。ただ、そこまで慣れても、うっかり本体を動かそうとしてしまうのは止められない。
各ボタンへの操作の割当は当然可能だし(写真09)、ロジクールの無線マウスと組み合わせれば、併用することも可能。ボールの脇にあるスイッチは、ボールの速度をワンタッチで変えられるもので、細かい操作にも素早く対応する。接続先のパソコンをワンタッチで切り替えることもできるので、1台のトラックボールで複数のパソコンの操作も可能になる。細かい機能を上げていくと、それだけでレビュー1本分になるくらいの高機能トラックボールなのだ。

これだけの機能をスムーズに操作できるのならば、マウスかトラックボールかの選択は、もう好みの問題になる。そして、もしかしたら、現在のパソコンにおいて、ポインティングデバイスとしては、もしかしたらトラックボールが正解かも知れないという気にさせる「ロジクール ワイヤレストラックボール MX ERGO」の出来の良さではあったと思う。

そのくらい、「今のポインティングデバイス」を考えて作られた製品であり、逆に言うと、このMXシリーズ以外で、道具としてのポインティングデバイスを考えた製品が他にどれくらいあるのだろうかという気にさせる製品なのだ。


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▲写真8:小指を机に付けて、手首から肘も机に付けて、親指に少し力を入れると安定して操作できるように思う。(クリックで拡大)



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▲写真9:各種設定は、サイトからダウンロードできるソフトウェア「LOGICOOL OPTIONS」を使って行う。(クリックで拡大)










 



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