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▲写真1:OLYMPUS「Tough TG-5」オープンプライス、実売価格54,640円前後。ボディカラーは写真のブラックの他にレッドもある。(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その69
コンパクトデジタルカメラの正しい未来
~OLYMPUS「Tough TG-5」をめぐって~


納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。


●TG-3からTG-5への進化

オリンパスのコンパクトデジタルカメラ「Tough TG-3」は名機と言ってよいカメラだった。防塵、防水のタフなカメラとして、当然必要な機能である、ズームレンズが繰り出さない構造を利用した、レンズ面を被写体にくっつけて撮影できる1cmマクロと、4倍ズーム全域に渡るF2.0の明るさは、それだけでも、スマホのカメラにはできない機能を実現していたし、高級一眼レフカメラでも面倒な接写を簡単に実現。それが落下にも強く、防水、防塵に優れているのだから、スマホの他に、もう1台持っている価値が十分にあった。

そうして、スマホと一緒に持ち歩いたり、仕事の際にミラーレス一眼と一緒に持っていくと、かなりの頻度でTG-3を使うシチュエーションがあった。最近は撮影タイムを設けることが多いコンサートや芝居などの舞台の撮影において、明るいレンズと4倍ズームに加え、スポット測光や露出補正が使えるTG-3は、ミュージシャンのバストアップをしっかりと表情が分かるコンディションで撮影できた。新製品のポイントとなる細部を、十分な露出で撮影することもできた。

TG-3の後継機TG-4は、TG-3にRAWでの撮影機能を加え、解像度を上げた程度のマイナーチェンジだったが、それも、TG-3の完成度の高さ故だったのだと思う。実際にTG-3を使っていて、「ここがこうならいいのに」的な部分は、まったくないとは言わないが、とても少なく、後継機は、TG-4までとはまったく違うコンセプトが必要ではないかと思っていた。

そして登場した「Topugh TG-5」(写真01、02)は、外見やカタログスペックでは、あまり大きな変化が感じられないものだった。むしろ、解像度は下がっている(その分、感度が高感度側に広くなっていて、高感度撮影時のノイズが減っている)。その他の機能にしても、動画撮影の機能がFull HD 60P、4K 30Pに対応したこと、すべてのセンサーのログの記録に対応したこと、RAW+JPEGの撮影が可能になったこと、あたりが大きな変化で、確かに、かなりの機能アップだが、地味であることには変わらない。スペックを見て、個人的に「凄い」と思ったのは、耐結露のために、レンズの保護ガラスが二重になったことと、温度センサーが付いたこと。

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▲写真2:本体背面。撮影時に多用する機能は、基本機に1回の操作で呼び出せるようになっている。メニューボタン長押しでWi-Fiモードに入るのも嬉しい。(クリックで拡大)










●スピード感こそTG-5の魅力

しかし、実際に使ってみると、これがもうTG-4とは別物だということが分かった。まず、外観というかハードウェア的に、持ちやすくなっていること、マクロ撮影用の「LEDライトガイド」などを取り付ける部分にロックが掛かるようになっていたこと(写真03)、シャッター横に露出補正などを直接変えられるダイヤルが付いていること(写真04)、など、細かい変更だけれど、使っていて、いちいち、「おーっ」と感心してしまうようなパワーアップが施されていたのだ。特に、LEDライトガイドなどのロック機能はありがたい。基本、ライトガイドを付けっぱなしで使う筆者にとって、それがカバンの中などで外れやすいのが、TG-3使用時の数少ない不満の1つだったから。

また、コンパクトデジタルカメラを使っていて、最もチョコチョコと設定を弄るのが露出補正なので、それを操作系として独立させたのは良いアイデア。レンズが明るいTG-5の場合、標準露出で撮るとオーバー気味になるので、露出補正は重要なのだ。そして、その際のレスポンスが、一眼レフ並に速い。ダイヤルで露出を変えた時の、モニター画面への反映に、まったく遅れがないのだ。だから、安心して、露出を行ったり来たりさせられる。プログラムオートに設定していて、あとはこの露出補正ダイヤルを細かく動かすだけで、かなり簡単に適性露出が得られるのだ。

このスピード感が、実はTG-5の最も大きな変化であり、魅力だと思う。露出補正だけでなく、画質モードの変更、マニュアルフォーカス時の画面とレンズの連動、オートフォーカスの速度、さらに、今回からの新機能の1つである、シャッター半押し状態から撮影が開始され、シャッターを押してから撮影までのタイムラグなしで撮影できるプロキャプチャーモードなど、処理速度の速さが実現する機能は、すでに一眼レフやミラーレス一眼の高級機には搭載されているが、それをコンパクトデジタルカメラに搭載してきたのが、オリンパスのTG-5に込めたアイデアなのだ。

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▲写真3:一眼レフ機のレンズ交換のように、レンズ脇のボタンを押して、LEDガイドライトやコンバージョンレンズを着脱する。(クリックで拡大)



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▲写真4:艦橋部。ロガー機能のオンオフボタンや露出補正などに使えるダイヤルが追加された。グリップの位置などが見直され、より握りやすくなっている。(クリックで拡大)





●上位機種に合わせた操作性

今回、メニュー構成や操作体系もオリンパスの上位機種に合わせている(写真05)。普段、仕事用にオリンパス「E-P3」を使っている私にとって、とても馴染んだ操作で、それだけでも、ぐっと使いやすくなったのだが、これが何故可能になったのかというと、動作速度やレスポンスが一眼レフ並のエンジンを搭載しているからなのだ。実際、搭載されている画像処理エンジン「TruePic VIII」は、オリンパスのフラッグシップ機である「OM-D E-M1 Mark II」に搭載されているものと同じなのだ。また、イメージセンサー部も新たに開発した「Hi-speed 裏面照射型CMOSイメージセンサー」により、高速性能を向上させている。

これが何を意味するかというと、この「TG-5」は、写真を手軽に撮りたい人のためのコンパクトカメラの位置付けではなく、一眼レフカメラのサブ機として作られているということ。だから、メモ代わりであるスマホのカメラと機能的にも使い勝手的にも競合しないのだ。その上、TG-3から受け継いだ、高性能のマクロ撮影(写真06)、接写機能や耐久性、耐水性などがある。高感度撮影でのノイズが少なくなったことや、撮影時の気圧や標高、温度まで記録してくれるセンサーの数々、さらにそれらを、地図データと連携させる機能まで持っている。

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▲写真5:表示はさまざまに変更できるが、なるべく多くの情報を表示させた時の撮影時の画面表示。露出の表示、モードなどの設定の表示など、上位機種のものと同じ仕様になった。(クリックで拡大)



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▲写真6:別売のLEDライトガイドを使った、被写体に覆い被せてのマクロ撮影は健在。ピント合わせが速くなり、さらに快適。(クリックで拡大)









このカメラだからできることがあり、上位機種並みの操作性を持ち、スマホのように手軽。と、言ってしまうと、何となく中途半端に聴こえるかも知れないが、TG-5の場合、操作感に関して、完全なマニュアル撮影ができないこと(マニュアルフォーカスは可能だが、露出はプログラムオートか絞り優先のみ)、レンズ交換ができないこと、イメージセンサーが小さいこと以外は、ミラーレス一眼と比べて遜色がない。それどころか、マニュアルフォーカス時の拡大機能や、多彩な撮影モードでの調整可能な範囲の増加など、TG-4では実現しなかった、しかし使っているとどうしても不満が出てしまう細部も、きちんと改善されて、一眼レフ機ではかえって面倒であまり使わない、撮影モード機能も積極的に使おうという気になるのは、小型機ならでは。

例えば、TG-5から搭載されたパートカラーモード(写真07)。選択した色以外は白黒になる撮影モードなのだが、「どの色を有効にするか」の選択操作が、とてもスムーズなのだ。カラーサークルから十字キーの左右で色を選ぶのだが、操作に合わせて無段階にディスプレイ上でもリアルタイムに色が変化するから、今、どの色を強調すると面白い写真になるのかを確認しながら設定できるのだ(写真08)。同様に、用意された撮影モードの詳細設定が簡単に行えるため、絵作りを考えた写真の実験がやりやすい。実は私は、この手の撮影モードの意味がよく分かっていなかったというか、ほとんど使っていなかったのだけど、コンパクトデジタルカメラで、これだけレスポンスが速くて、操作も簡単だと、意外に使ってしまうということに気がついたことが、このカメラを使っていて一番の発見だったかも知れない(写真09)。

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▲写真7:パートカラーモードの撮影画面。画面上で効果を確認しながら、どの色を発色させるかを設定できる。(クリックで拡大)



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▲写真8:パートカラーモード作例。夕陽の風景を撮るのに赤を強調するために使用。(クリックで拡大)



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▲写真9:ざらっとした質感の白黒写真が撮れるラフモノクロームモードの作例。(クリックで拡大)

●スマホ時代のコンデジのあり方

細かく機能を述べていてもキリがないし、スペックを紹介したいわけでもないので、製品の詳細はメーカーのサイトを確認してほしい。マクロ撮影の素晴らしさについては、TG-3のレビューで、この連載コラムにも書いた。とにかく、「LEDライトガイド」を付けて、対象にピッタリとくっつけて撮る顕微鏡モードと、深度合成機能によるマクロ撮影の楽さとクオリティの高さは、何度強調してもしたりないほど素晴らしいとは言っておく。深度合成モードも速度が上がり精度が上がっていて、マクロ撮影機能も実質的にはとても向上していることも付け加えておく。

とにかく、すでに持っている最高級の技術は、その下位機種にも惜しみなく注ぐという、その製作姿勢が素晴らしいのだ。差別化するために、性能に差をつけるなんて必要は、今のデジタル機器にはない。コンデジだから性能もそれ相応になんて考える必要はない。実際に、TG-5を使っていて、そのレスポンスの良さ、考えられた操作性に、「凄い」とは思ってもオーバースペックと思うことはまったくない。むしろ、そのコンパクトデジタルカメラとは思えない操作性の良さや、思った絵作りに対してのレスポンスの良さのおかげで、とても写真が撮りたくなるのだ(写真10)。写真なんて、面倒くさいと思ったら本当に撮らなくなる。スマホのカメラを皆が使うのは、「わざわざカメラを取り出して、露出を合わせてピントを合わせて」といった作業が要らないからだ。

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▲写真10:何となく、風景やマクロに強いカメラの印象があるが、人物撮影モードも多彩に用意されている。便利だと思ったのは夜景&人物モード。シャッター速度の選択が上手いので、人物はボケず、背景は流れる。(クリックで拡大)










しかし、TG-5の場合、取り出すのは楽だし起動も速い上に、「さてどう撮ろう」という楽しみもあるから、自然に写真を撮ってしまうのだ。そして、撮った写真は簡単にiPhoneに送ることができる(写真11、12)。だから、カメラが生活の中に溶け込める。そういう細かい配慮の積み重ねで、日常生活の中でカメラを使う面白さが蘇る。撮っていて気持ちよくて、撮った写真を見て楽しめる。その気持ちよさを実現するための、最上の機能とスペックを用意する。これは、正しくカメラの未来を見据えた製作姿勢だと思うのだ。

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▲写真11:スマートフォン用アプリ「Olympus Image Share Ver.3.1」もパワーアップ。リモート撮影時にもスマートフォンからさまざまな設定にアクセスが可能になった。(クリックで拡大)



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▲写真12:同じくスマホアプリの操作画面。(クリックで拡大)














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