pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
レビュー

photo

▲エレキギターで初音ミクを。KORGの「MIKU STOMP」(c)Crypton Future Media, INC. www.piapro.net 。(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その41
電気仕掛けで音を出すということ
KORG「CLIPHIT」と「MIKU STOMP」


納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。

●手軽にドラムの練習が行える「CLIPHIT」

エレキギターという楽器が画期的なのは、ギターの音をマイクで拾って増幅するのではなく、ギター的な演奏をするインターフェイスの、弦の振動を磁石で拾って、その音を音源にして演奏するという、アコースティックとエレクトリックの混ぜ方の特異性にあると思う。だから、演奏する側のエモーションが、あたかもダイレクトに楽器に伝わっているかのような音を出す。ピッキングした弦の振動が、一度、電気信号に置き換えられているにも関わらず、その振動の伝わり方は、胴で一度反響させて増幅するアコースティックギターよりもダイレクトだ。それは、もしかしたら音よりも電気信号の方が伝わるスピードが速い、ということかも知れないけれど、実際に弾いている時の体感も、エレキギターの方が速く感じる。ガンと弾けばガンと返ってくる。

KORGの「CLIPHIT」(写真01)を使って、いろいろと音を出している時に考えたのは、そういう事だった。クリップで挟んだ物を叩くと、本体からドラムの音がするという、どこでもドラム的な製品で、同社のシンセドラム「WAVEDRUM Mini」で採用されていたセンサー内蔵クリップ部分を独立させたような形だ(写真02)。基本的には、どこでもドラム練習ができるツール、ということなのだろうし、実際、鳴らす音は本体スピーカーからしか出力できない(ヘッドフォン端子はあるから、ステレオ音声としての出力は可能だが)。つまり、楽器というよりもドラムス練習用機器だ。音色にしても、プリセットされた11種類のドラムキットから選択するのみ。もちろん、11種類あれば、充分幅広い音楽ジャンルに対応できるし、ハンドクラップや犬の鳴き声といった音色も内蔵していて、しっかりと遊べるようになっているあたり、設計のソツがない。

クリップが3つとペダルスイッチが1つ付属していて(写真03)、基本的なセットは、スネア、タム、ハイハット、バスドラとなる(写真04)。もう1つペダルスイッチを追加すると、ハイハットのオープン/クローズの操作が可能になって、ドラムスの基本セットが出来上がる。あと、本体を叩いても音がする(スネア系)ので、ペダル2つと組み合わせて、パーカッション的な楽器としても使えるようになっている。で、単三乾電池4本で最長6時間のプレイができるので、アンプ内蔵のギターやベースと組めば、どこででもセッションが可能というわけだ。AUX端子もあるので(写真05)、外部の音楽に合わせての演奏などもできるのは、練習マシンとして当然か。

photo

▲写真1:KORG「CLIPHIT」10,800円(税込)の本体。ここにクリップやフットスイッチをつないで使うが、この本体を叩いても演奏可能。(クリックで拡大)



photo

▲写真2:クリップは3個付属。基本的には、スネア、ハイハット、タムの音を出すのに使う。(クリックで拡大)



photo

▲写真3:フットスイッチは1個付属。通常、バスドラムを担当する端子につなぐ。もう1つフットスイッチを用意すれば、ハイハットのクローズ操作ができる。(クリックで拡大)



photo

▲写真4:クリップやフットスイッチは、本体のここに接続する。それぞれの端子ごとにボリュームつまみも用意されている。(クリックで拡大)



photo

▲写真5:反対側には全体のボリュームつまみとヘッドフォン端子、AUX端子、2台目のフットスイッチ用の端子がある。(クリックで拡大)








●実際に叩いてみる

実際に使ってみて思うのは、そのレスポンスの良さと、繊細なタッチについてくるセンサーの反応の良さ。叩く→叩いたモノ自体の音がする→本体から音がする、の間に、ほとんどストレスがないから、叩く腕が気持ちいい。パンと雑誌を叩くと、「タン」とスネアの音がする、そこがダイレクトにつながっている感があるのだ。その感じがあれば、「CLIPHIT」は電器楽器として演奏できる。練習用だけではない使い方ができるように作られているということだ。

ということで、エレキギターのボディにクリップを付けて、ボディを叩くとパーカッション的なプレイができるようにしてみた(写真06)。アコースティックギターでは、胴を叩くのも立派なプレイスタイルなのだから、エレキギターにもその機能を付与してみようという試みだ。ヘッドに付けるチューナーが、弦の振動を拾うのだから、ヘッドにクリップを付ければ、胴の振動を拾うはず。筆者が愛用しているスタインバーガーのヘッドレスタイプのギターの場合、座って弾く時に出す脚のような部品があるのだが、そこにクリップを挟むと演奏もしやすく、胴を叩く振動も上手く拾ってくれた。これが面白かった。ピッキングしたピックをそのままボディに叩きつけたり、両手でパーカッションのようにギターを叩いたりといったプレイは、ギターソロにも幅を出してくれる。

photo

▲写真6:愛用のスタインバーガーモデルのギターにCLIPHITのクリップを装着。このギターの場合、足置きのためのアタッチメントがあるので、そこに挟んだ。これで、胴を叩くとパーカッションになるエレキギターが出来上がる。(クリックで拡大)









●エレキギターでも初音ミクを「MIKU STOMP」

同じくKORGの製品で、しかもエレキギター用のエフェクターなのに、ダイレクト感を捨てていて、それでも、エレキギターの「弾いている」感覚を失わない、そのあたりの絶妙な感じが上手いと思ったのが、「MIKU STOMP」(写真07)。このエフェクターを通してギターを弾くと、弾いたメロディで初音ミクが歌うという、よく「ギターが歌う」という表現があるけれど、それを文字通りの形で実現してしまうエフェクターだ。

ただ、ピッキングしてから音が鳴るのに少しの間ができる。ピッキングがダイレクトに音につながるエレキギター最大の特徴が失われる。ただ、エフェクターの役割を考えると、それもまたエレキギターという楽器の1つの特徴であってすべてではないことはすぐに分かる。

例えばディレイというエフェクターでは、ピッキングから音が出るまでをあえて遅らせる。ボリュームペダルを使ってアタック音を消す演奏をするスタイルも古くから行われている。アンプを通すのにアコースティックギターよりもダイレクトに音が鳴るというのも、エレキギターの電気楽器としての機能ならば、ディレイなどの電気信号をダイレクトに出力しないのも、エレキギターの可能性の1つなのだ。

そのせいか、「MIKU STOMP」をつないで実際に弾いていても、それほどの違和感はない。このあたりが不思議なところなのだが、例えば、無線のヘッドフォンをエレキギターにつないで演奏すると、ピッキングと発音がほんの少しズレることが気になってしまう。0.0何秒という差でも、そこに体感と聴こえる音の時間差が気持ち悪いのだ。つまり、ピッキングから発音の間に何らかの処理が入っているからこそ、ギターの音が人の声になるという、その処理がギターのピッキングという行為とつながっている感じがあれば、タイムラグは気にならないのだろう。

photo

▲写真7:KORG「MIKU STOMP」実売価格12,960円(税込)。いわゆるストンプタイプのギター用エフェクターだ。(クリックで拡大)









●こぶしやビブラートをかけることもできる

「MIKU STOMP」を使っていて、すぐに気がつくのは、「Scat」「Looh」「Lahh」「Ahh」「Pahh」(写真08)といった、ハミング的な発声だと、人の声が出ているという感じが薄いというか、極端に温色が変わるエフェクターという感じで、上手くフレージングしないと初音ミク感が薄いのだ。逆に、言葉を歌わせると、それははっきりと「歌」で、タイムラグはあっても、ギターの弦を弾くと、その音が歌声になるというのは、何だかとても感動的なのだ。トーキングモジュレーターやボコーダーのような、声の波形や振動をモジュレーションに使うという「声のような音を出す」装置なら今までにもあったけれど、ギターを弾くと声が出るというのは、まだ体験として新しくて、それで何をするという以前に、弾く→歌うという行為が楽しくてたまらない。スライド奏法には対応しないけれど、チョーキングにも対応するので、こぶしやビブラートをかけることもできるのだから。

さらに面白いのが、「MIKU STOMP」にオリジナルの歌詞を読み込ませるインターフェイス。iPhone用のアプリ「Lyrics for MIKU STOMP」で歌詞を入力後(写真09)、「MIKU STOMP」がつながっているギターのピックアップに近づけて(写真10)、電気信号として「MIKU STOMP」に流し込むのだ。この、デジタル機器を使ったアナログな無線による歌詞の流し込みが、例えは悪いかも知れないが、未だに006P電池を使っているエフェクターの良い意味での「古くささ」を感じさせて、それだけでゾクゾクしてしまうのだ。そして、この方法だと、ライブの途中でもギターのプラグを抜くことなく歌詞を「MIKU STOMP」に入れることができるわけで、ライブ演奏を考えれば、理に適った方法。このあたりの、楽器という入力と出力には絶対アナログでなければならない機器の、デジタルからアナログへのアプローチは、他のジャンルの機器が見習うべきものがあると思うのだ。現状、人が五感のどれかで使う以上、アナログ出力は避けられないのだから。

しかし、「MIKU SYOMP」は単音専用のエフェクター。何より演奏時のミュートが重要で、複雑なフレーズをスムーズに歌わせたかったら、かなり正確で丁寧なミュートが必要になる。多少のミスタッチもカッコ良さにつながるような、パンクな演奏を基本とする筆者は、そこで苦戦してしまうのだけど、発声でミュートの出来不出来が分かるので、正確なトーンで弾く練習用のハードウェアにもなる。弾いていて、リアピックアップよりフロントのピックアップを使った方がキレイに発声してくれるような気がしたが、気のせいかも知れない。せっかくなので、これを機に、「MIKU STOMP」をキレイに歌わせたいという理由で、せっせと練習しようと思う(写真11)。その上で、キレイに歌う初音ミクの声にディストーションを掛けてしまうのは、歪み好きの筆者の性のようなものだから許してほしい。

photo

▲写真8:このツマミで、初音ミクにどう歌わせるかを設定する。Looh、Lahh、Ahh、Pahh、Nyan(ニャンと歌う)といったハミング系と、それらをランダムにつなぐScat、あと言葉を歌わせられるPhraseが3つ(それぞれにプリセットされた言葉が入っているが、ここにオリジナルの歌詞を保存することもできる)と、内蔵された単語をランダムにつないで歌うRandomが2個(使う単語が異なる)から選べる。(クリックで拡大)



photo

▲写真9:専用アプリに歌詞を入力したら、ピックアップにiPhoneの受話用のスピーカーを押し付けるようにすると(写真10)、ギターを通して「MIKU STOMP」に歌詞が入力される。(クリックで拡大)



photo

▲写真10:歌詞を入力。(クリックで拡大)





photo

▲写真11:「MIKU STOMP」のアウトプットにヘッドフォンアンプを差せば、デスクトップ初音ミクでギター環境が出来上がる。パソコンにつないで、ボーカル録音も簡単にできるのだ。(クリックで拡大)














Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved