pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
レビュー

photo

▲写真1:PFU「ScanSnap SV600」
59,800円(税込、PFUダイレクト価格)
サイズ:210×156×383mm(作業スペース:525×484×383mm)(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その32
非接触型ドキュメントスキャナの実際と可能性
PFU「ScanSnap SV600」をめぐって

納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。

●大判本の取り込みに威力を発揮

PFUの非接触型ドキュメントスキャナ「ScanSnap SV600」(写真01)は、使えば使うほど、ドキュメントスキャナというジャンルの中では、相当特殊な装置だと思える。書籍や雑誌をデジタル化するという用途ならば、圧倒的に「ScanSnap ix500」の方が優れているし、断裁機などの、本を切る環境さえ整っていれば、手間もかからないし、作業にかかる時間も短くて済む。少し使えば分かることだが、単行本を1冊、丸ごとスキャンするのに「SV600」を使うと、丁寧に作業すると10時間くらいかかった。断裁機と「ix500」の組み合わせなら、10分かからないのだから、その差は大きい。

とは言え、例えば見開きでの表現が多い、大判の絵本の場合、まず、「ix500」には物理的に紙が入らないのでスキャンそのものが不可能。また、絵本の場合、多くがハードカバーで、しかも見返しにも絵が印刷されている事が多いため、サイズ的に問題ない場合でも、カバー下の本当の表紙部分と見返し部分に関しては、スキャンすることができない。その点、「SV600」だと、絵本の多くは64ページ以下、ほとんどは32ページ程度で、表紙や見返しを含めても、70ページを超えることはまずない。しかも、見開きのままスキャンできるから、64ページと言っても32枚のスキャンで済む。ほとんどの絵本は20回のスキャンで1冊丸ごとスキャンできてしまうのだ(写真02)。

しかも、絵本のようなページ数が少ない本の方が、厚みがない上に、ページが進行しても、左右の紙の量があまり変わらない。これが、「SV600」のような、斜め上からスキャンしていくスタイルにとても合っているのだ。実際、厚手の本のスキャンをしようとすると、まず、ピントが甘くなることがあるし、左右のページの傾きが変わるため、後での補正が面倒になり、さらに、文字そのものが傾いた状態でスキャンされることも多くなる。これも、いろいろ試していて気がついたのだが、厚手の本(400ページ超)は、「SV600」でのスキャンには向いていないようなのだ。逆に、大判で薄い本に対しては、前述の絵本の例のように、とても良い仕事をしてくれる。



▲写真2:見開きの絵が多い薄手でハードカバーの絵本のスキャンは、「SV600」が最も威力を発揮するケースの1つ。(クリックで拡大)




 

●用途に応じて使いこなす

例えば私の仕事だと、手帳やノートなどの使用例を見せたい場合のデータ作りは、実際にページをめくりながら、見せたいページに来たら即スキャンできるため、フラットベットスキャナよりも作業がスムーズに進んだ。また、書籍のデジタル化の際、実際の本文は「ix500」を使うのだけど、帯が付いた状態の表紙とか、ハードケース、ハードカバーの表紙に直接印刷された図柄といった箇所は、「SV600」があると楽にスキャンできる。これは、1台のパソコンに「ix500」と「SV600」を同時につないでいても、特に操作を必要としないで、「SV600」のスキャンボタンを押せば「SV600」の設定で「SV600」が動き、「ix500」のスキャンボタンでは、「ix500」が動くようになっているからでもある。同じドライバなのに、ハードウェアごとに動作環境が設定できるのは、使い分けが楽になるのでありがたいのだ(写真03)。

一方で、カメラ代わりに使うのは、あまり良い結果にならないことが多かった。「SV600」の使い方コンテスト優勝の「将棋や囲碁の棋譜代わりに使う」というアイデアは、素晴らしいし、実用的だけれど、それは、スキャン結果に画質や精密さを求めない用途だからこその実用性。筆記具などをカメラ代わりにスキャンすることはできるのだけど、やはりカメラで撮影した写真に比べると、どうしても光が平坦で、色もちょっとベッタリする。内部資料的なものなら使えるけれど、雑誌やWeb媒体で文章と並べる写真としては物足りないと言うか、カメラと比べた時の差が大きい。メモ代わりに使う場合も、スマホのカメラに比べると機動性に欠ける。やはり、これは「スキャナ」なのだと思う。画質的にも印刷物をデジタル化するのに向いているようだ。

photo

▲写真3:私の場合、机の上に「ix500」を、その真下に当たる机の下に「SV600」をセットして、両方をスムーズに併用できるようにしている。(クリックで拡大)




 

●ソフトとオプション

ソフトウェア的にはかなり良くできていると思う。特に、本や書類のスキャンの場合、矩形に補正してくれる機能の精度は高い。スキャンの状態さえ良ければ、フラットベットスキャナでスキャンした程度には簡単に補正可能(写真04)。ただ、書籍のスキャンを前提に作られているソフトなので、補正しないと書籍の端より、少し内側でスキャンされているので注意が必要。開いた本の場合、端は前後のページの小口部分なので、それを自動的にカットしてくれるのだけど、ページによっては端が切れてしまう場合もある。その場合は、補正することになる。使っていて、補正の手間が多いと感じたら、その使い方は「SV600」に向いていないと思ってよさそうだ。

あと、紙を押さえた指を消す機能は、毎ページ2ヶ所を消す必要があって、かなり面倒。オプションで販売されている「ブックプレッサー」(写真05)は、書籍のスキャンをするなら必須のアイテムだろう。同様に、いくつか「SV600」には、必須のオプションがある。それは、「SV600」がとても斬新な、今までになかったスキャナだけに、使ってみないと気がつかない種類の使い勝手上の欠点を補完してくれるアイテム。こういうアイテムが素早く出揃って、しかもそれを使うことで、明らかに使い勝手が向上するのだから、やはり、「SV600」というスキャナは、とても可能性を秘めたアイテムなのだと思う。現状の完成度で判断するともったいないことになりそうだ。

その必須アイテムの1つが、先ほど出てきた「ブックプレッサー」。スキャンする本を押さえておくための透明のボードだ。両端にハンドルが付いていて押さえやすい。これ、単に透明なアクリル板というわけではなくて、反射防止用のコーティングが施されている。そうでないと、光を反射してスキャンできないのだ。また、スキャンできる範囲よりも横幅が広くないと使えないから、サイズはかなり大きい。しかし、これを使うことで、薄手の絵本などの場合、ほぼ補正なしでも使えるくらいの精度でスキャンが可能になる。見開きのページも、中央のラインが気にならない程度にキレイに開くので、スキャンの仕上がりも良い。実は、この「ブックプレッサー」を使うと、「非接触型スキャナ」という「SV600」の特徴が1つなくなってしまうのだけど、ページ物でない場合は「ブックプレッサー」は不要なのだし、フラットベットスキャナの場合は、本を開いた後のセッティングが結構面倒なので、「SV600」を使うメリットは大きいのだ。

次の必須アイテムは「リモートコントローラ」(写真06)。要するにフットスイッチだ。ブックプレッサーで本を押さえると、両手が塞がる。そこで、フットスイッチが欲しくなる。その需要に応えた製品がすでに用意されているのが素晴らしい。しかも、ソフトスイッチタイプとハードスイッチタイプの2種類。つまり、靴やスリッパを履いていない状態で使える「ソフトタイプ」と、ギターのエフェクターのスイッチを使って、靴を履いた状態で踏めるようにした「ハードタイプ」。この両方が揃っているというのは、「SV600」を仕事の現場で実用的に使いたいという発想があってこそ。「SV600」のスキャンスイッチは、本などをセットした場合、その奥に位置することになるので、元々、手で本を押さえた状態では押しにくいのだ。

photo ▲写真4-1:画像の補正は、スキャンの状態さえ良ければ、自動補正でもほぼ問題ない(クリックで拡大)

photo ▲写真4-2:補正が必要な場合も、本のノドと端を指定してやるだけ。(クリックで拡大)

photo ▲写真4-3:ほぼキレイな長方形に補正できる(04c)。(クリックで拡大)



photo ▲写真5:PFU「ScanSnap SV600専用ブックプレッサー」15,750円(税込)を使って、本を押さえた状態。指が入らないだけでなく、本をなるべく平たい状態でスキャンできるので、後の補正が楽。(クリックで拡大) photo ▲写真6:PFU「リモートコントローラ」各15,750円(税込)。左が「ソフトタイプ RC-10S」、右が「ハードタイプ RC-10H」。USB接続で「SV600」をコントロール。(クリックで拡大)


●非破壊スキャナーへの期待

さらに、使っていて思ったのは、「SV600」使用時に使うマットが柔らかいシート状で(写真07)、書類や薄い本のスキャン時に、シートの皺や凹凸がスキャンの邪魔になること。「SV600」は、斜め上からスキャンする構造なので、奥行き方向の凹凸を実際以上に大きく捉えてしまうのだ(夕方には影が長くなるのと同じ理屈)。そのシートをしっかりと平たくセットするのも結構難しい。ということは、これをシートではなく板にしてしまえば使いやすいのではないかと思っていたら、すでに試作しているところがあって(というか、その試作も、ブックプレッサーもリモートコントローラもすべて、バード電子製だ)、試作品を使わせてもらったところ、やはり、板状の方がセットも楽だし、上に本などを乗せるのも簡単。保管場所は必要になるが、薄いのでそれほど邪魔にならない(写真08)。このあたりも、試行錯誤中のスキャナという感じがするが、「SV600」でしかできないことがある以上、このように外部の工夫は重要になる。しかも、それで明らかに使い勝手が良くなる、というのは、それはそれで、とてもすごいことだと思うのだ。

コンシューマ向きのドキュメントスキャナとして「ix500」は、相当完成度が高い製品だと思うが、ScanSnapがここまで来るのにも長い時間がかかっている。去年発売された「SV600」の完成度が低いのは当たり前だ。それでも初代ScanSnapに比べたら、圧倒的に使いやすいのだ。特に、絵本、パンフレット、A3の2つ折りでページ物になっているチラシ、細長いもの、古い全集などの箱(分解してスキャン)、四角くないもの、紙袋、使いかけのノート類などのスキャンには本当に使える。いわゆる書籍、特に小型の本の非破壊スキャンについては、今のところフラットベットスキャナよりも確実に楽、とは言い切れない。本の形状やページ数にもよる。実際、厚手の本は苦手なのだ「SV600」は。

まだ、現状では「非破壊型スキャナ」と呼ぶよりも「非接触型スキャナ」と、とらえる方が、使い方が広がるように思う。スキャンしたいものを「ポン」と置いてボタンを押すだけ、というスタイルは、他に代えがたいメリットなのだから。

photo

▲写真7:付属のスキャン用マットは、布製で巻き取って片づけられるが、セットするのが面倒で、皺もできやすい。(クリックで拡大)
photo

▲写真8:こんな風に板状のマットだと、設置も速いし凹凸もできないので作業が楽になる。(クリックで拡大)


 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved