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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第124回 星山充子/デザイナー

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●川上さんとのお仕事

リレーコラムをつないでくれた川上 謙さんは、大学の後輩でした。

以前、山形のレストランで食事をした時のこと。テーブルに置かれた、青い釉薬がツヤっと綺麗なカトラリーレストが素敵だなと思い手に取ってみると、裏面に品番が。外壁タイルのサンプルか! と、驚きました。

大きな窓から素敵な光が漏れるそのレストランは、通りの向こう側から見ても「オシャレ!」とつい声が出てしまいます。見回してみると、ところどころに「アイデアと工夫」が溢れていました。建築だけでなく、そこに置かれるモノやサインの細部にも行き渡ったデザイナーの思いやりに、とても感激したのを覚えています。そして何より、とびきりの笑顔で接客してくださった店主様にとても似合うお店だなと感じました。

そのレストランを設計した川上 謙さんと、いつかお仕事してみたいなぁと思っていた頃のこと。新潟の商業施設に、新潟をはじめとした日本海側の産品や工芸品を扱う産直セレクトショップの新規オープンが決まりました。私の役割は、ロゴデザイン、各種ツールのデザインをはじめとした、全体のデザインディレクション。店舗のデザインは、ぜひ川上さんにお願いしたいとクライアントを紹介し、プロジェクトがスタートしました


▲産直セレクトショップ「KITAMAE」ロゴデザイン。(クリックで拡大)



▲店舗入り口の壁画。(クリックで拡大)







かつて「北前船」は、瀬戸内から北海道まで裏日本各地の港を巡りながら行商し、人やモノ・文化をつなぎ、大きな経済効果を生み出していました。「KITAMAE」は「北前船」のように、日本海側(裏日本)の土地と土地の文化をつなぎ、インターネットとリアル店舗という2つの船で、新たな体験や価値を生み出すお店です。

大きな波は「日本海」の象徴です。波が混ざり合うリズミカルなモチーフは、それぞれの土地の文化が混ざり合い、新たな楽しさを奏でる様子を表現しています。太陽のモチーフには、「KITAMAE」がこれからの裏日本を照らす太陽のような存在になれるようにという願いを込めています。

▲「KITAMAE」内装デザイン。(クリックで拡大)



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川上さんがデザインしてくれた店舗デザインのコンセプトは「食のビオトープ」。潟に豊かな水が溜まることで、さまざまな生態系が生まれ、それらが新潟の食文化の豊かさを育んできました。「KITAMAE」が食や文化の「溜まり場」のような場所になっていくようにという想いを込めて内装を設計してくださいました。店舗の中にロゴデザインを溶け込ませたいと考え、外壁には大きな波のモチーフを手描きでペイントしてもらいました。

●いろいろな分野のプロとチームで取り組む

川上さんとのお仕事のように、近年はいろいろな分野のデザイナーやカメラマン、スタイリストと一緒に1つの世界観を作り上げる、チームでの仕事に楽しさを感じています。

家具メーカーのカタログデザインでは、スタイリストとカメラマンと3人でアイデアを出し合いながら、家具の魅力が伝わる写真撮影に力を注ぎました。プロジェクト全体を見渡しながらデザインのゴールまでの道筋を描く「ディレクション」は、私の中でデザインの一部となっています。


▲「朝倉家具」カタログデザイン。(クリックで拡大)



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●デザインよりも、最適なプランニングを

クライアントの多くは、中小企業や個人事業主、農家や生産者の方々です。デザインに着手する前に徹底的にヒアリングをし、デザインの「目的」を見つけ出すことを一番大切にしています。例えば、「ロゴデザインを作りたい」という要望でお話を聞いていくと、抱えている問題の解決にはロゴデザインではなく、パッケージなのでは? というようなことが多々あります。

解決したい物事を言語化し、道筋を描いておくことで、デザインにも一貫性が生まれます。デザイン着手前の「プランニング」が、もっとも大切な仕事だなと感じています。

▲プランニング例。(クリックで拡大)



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▲(クリックで拡大)




納品するデザインには、プランニングの段階で言語化したコンセプトを、必ず文章でつけるようにしています。商品や会社の本質的な価値を「言葉」にしておくことで、デザインは伝わりやすくなると思います。

人から人へ「伝わってしまう」デザインを目指して。これからも、デザインを楽しんでいきたいなと思います。



星山充子(Atsuko Hoshiyama):1986年生まれ。東北芸術工科大学プロダクトデザイン学科卒業。地元仙台でデザイン会社・インテリアショップ勤務の後、新潟へ移住し 2016年に独立。ロゴデザインをはじめとしたグラフィックデザイン、パッケージデザイン、商品企画等を行っています。


2022年8月23日更新。次回は髙坂裕子さんの予定です。


※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag
 


 


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