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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第102回 西田庸平/建築家

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。


●建築の再考

本コラムの「若手デザイナーの眼差し」というテーマから、今や過去についてではなく、今後のことについて話したいと思った。そこで、これまで建築家として、またYNY主宰として独立してから4年が経ち、今までしてきたことを踏まえて、今後の「眼差し」について改めて考えた。

振り返ってみると私は歴史からの踏襲とそれを一歩進めるにはどうすればいいかということを考えながらプロジェクトに取り組んできた。各プロジェクトでデザインや建築そのものについて考えることはもちろんだが、それだけでなく、「プロジェクトへの関わり方、役割」など大きな枠組みについて疑問を持つこともあった。つまり空間に大きく影響するディテールなど具体的なことから、プロジェクトフローやチームといった抽象的な事柄まで様々な事象について再考しているということである。

以下に2つの私が取り組んでいるもしくは関わった実際の事例を元に話したい。

●プロジェクトの再考

最近、自らプロジェクトを立ち上げ、チームを作り、最終的には建築設計まで一貫して行うような活動を始めた。一般的な建築設計とは使い方についてはクライアントからの要望として、プロジェクトに関わる際に決まっていることほとんどである。その様々な要件、要望を整理しながら形にしていくのが建築設計者の役割となっている。

ただ、その使い方が変わると、自ずと建築は変わるのではないかと思っている。使い方の提案するためには、設計業務委託するもっと前の段階からプロジェクトに関わる必要がある。そこで、自らプロジェクトを立ち上げてみることにした。まだまだプロジェクトは序盤だが、建築設計以外にも様々な役割がプロジェクトには必要である。そのプロジェクトチーム作りから、リサーチ・企画から考え、設計に落とし込む。そうすることで仕様策定から関わることができる。次の時代の仕様を考えそれを装備させると、自ずと建築は変わり、次の時代の建築を生み出すことができるのではないかという希望を抱きながらプロジェクトは走り出している。

●構成の再考

柱、壁、床、天井、窓。それらは建築にとっては当たり前の要素である。大和郡山の増築では、その組み合わせを考え直すことで新しいものが考えられるのではないかと考えた。

広い庭を付きの機能的な既存ハウスメーカーの住宅に、既存玄関を増築によってより広くしたいという要望であった。そこで、増築という付加的要素を与えることで、広く豊かな庭と家が分断されているという状態を少しでも家と庭を近づけるようなことができないかと考えた。



▲大和郡山の増築ダイアグラム。(クリックで拡大)




▲大和郡山の増築インテリアイメージ。(クリックで拡大)




提案したのは屋根と床と建具しかない増築である。テラスのように外に解放することができる玄関は住宅内部に外からの風を届け、ガーデニング中でも気軽に利用できる休憩所のような役割を果たす。

この建築は屋根を支えるための柱は扉の支柱としての役割も果たしているため、柱や壁がない。通常の構成を少し組み替えることで、今までの建築の在り方とは異なる構成、空間となる。このように無意識的に前提となっている事柄を一度見直してみる。長い建築の歴史の中で作り上げられてきた現代の建築の前提条件を再考することで、それまでには到達できなかった空間が現れてくるのではないか

●最後に

現代社会にあるもののほとんどの事柄は今までの歴史の上に成り立っていることである。私は何もその蓄積を否定しているわけではなく、現代と歴史の蓄積の間に生まれる歪みを発見するようなことだと思っている。その発見と更新を様々な角度から繰り返すことで、次の一歩を提示していく、それが私の今の眼差しである。





西田庸平/Yohei Nishida
1988年生まれ。YNY共同主催。長谷川豪建築設計事務所での経験を経て2016年に独立。2017年東京都市大学非常勤講師。受賞歴:第41回日新工業建築設計競技(最優秀賞、佳作同時受賞)、トウキョウ建築コレクション全国修士設計展(ファイナリスト)など
http://ynyarchitects.com/





2020年10月15日更新。次回は大島淳一郎さんの予定です。



※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


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