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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第99回 前芝優也/建築家

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●建築家への眼差し

建築家になりたいと思い始めて、もう少しで10年が経とうとします。 私は1993年に大阪で生まれました。高校時代、建築に興味を抱き近畿大学に進学した後に東京都市大学大学院に進学しました。卒業後は建築設計事務所に勤務しながら個人でも活動を行っています。

大学、大学院と建築を専攻し学んできた中で、建築家とは何をもっていうのか、私の目指す建築家とは何かについて考え続け今に至ります。今回は学生の頃から行ってきたさまざまな取り組みを振り返りながら、今、考えていることをこの場を借りてお伝えしていきたいと思います。


●社会との接点を持つ

大学では建築の意匠と公共性に関する研究を行う中で、実践を通じて社会と接点を持てる機会を探っていました。そこで始めたのが空き家を町の拠点にするリノベーションのプロジェクト「あきばこ家」でした。

場所は近畿大学のある東大阪市で、町屋の原風景が今もなお残っているエリアを対象に、学生と地域住民が交流できる場を作りました。学生で構成されたチームが中心となり事業計画・改修計画などを行い、市からの助成金を得てプロジェクトを始めてから2年間取り組んでいきました。建物が完成してプロジェクトを終えるのではなく、町に展開する仕掛けも含めて継続的にプロジェクトを遂行できる仕組みもデザインしました。



▲戦前に建てられた改修前の長屋空き家。(クリックで拡大)




▲2年の月日を経て改修された町の拠点施設。(クリックで拡大)



▲「あきばこ家」と町の鳥瞰図。(クリックで拡大)



●異職業との協働

大学院に進むと、個人で活動するきっかけにもなったダンサーの舞台空間、ファッションデザイナーの展示パフォーマンス空間のデザインを手掛けました。この2つのプロジェクトは空間をデザインする私とダンサー、そしてファッションデザイナーとのコンセプトメイキングが重要でした。

空間をデザインするまでのプロセスを共有しながら、形に結び付けていきました。ダンサーの踊りからは激しい動き、静寂な動きの中に存在する見えない力を読み取り、天井面から起伏を作るように布を吊り下げ、ダンサーの踊りと呼応するような空間をデザインしました。

ダンスパフォーマンスのムービー
https://vimeo.com/269552242



▲ダンサーの踊りのコマ撮り。(クリックで拡大)




▲ダンサーのための舞台空間。(クリックで拡大)






後者とのプロジェクトは、ユニークなコンセプトを持った特性を最大限に活かそうと試みました。メインとなる空間は人間の肌と常に触れ合う機会を与えてくれる服の生地をメインのマテリアルとし、訪れた人々を生地によって覆い、デザイナーによる服と向き合うための空間をデザインしました。

2つの異なる服をドッキングさせた服のイメージから展示会場としてデザインした空間がパフォーマンス空間へと姿を変える時、二面性を持った服の特性を活かし、同じドッキング方法を用い空間を生まれ変えました。




▲布同士でドッキングされた空間。(クリックで拡大)




▲自分と向き合うミラー。(クリックで拡大)



▲服と向き合う小さな開口。(クリックで拡大)




●小さな風景への関心

こうしてデザインに関わっていると、デザインすることから少し違った方へ興味を抱いていくようになりました。その1つが街中の小さな風景です。普段歩く路上や訪れた町でたびたび出逢う小さな風景たちは、いつの間にか私の興味をそそるものとなっていきました。これらは誰かが意図してデザインしたものなのだろうかと関心を高めていきました。小さな風景というのは町の中にいくつも存在しています。月日が経つと生活者にとっては当たり前の風景となり生活の一部にもなっていきます。しかし、町に訪れた者からすると大きな景色ほどの驚きまではいかないですが小さな発見をさせてくれます。

日常の風景化は生活する人々がアノニマスなアーキテクトとなり、路上や家の周りをデザインしていきます。誰かが物理的にコントロールしているのではなく、町に関わる多くの物事が指針を作っているようにも感じ取れます。



▲空いた隙間にレンガ。(クリックで拡大)




▲基壇に植物化した靴植木。(クリックで拡大)



▲異なる素材で構成された階段。(クリックで拡大)



●まちづくりを通して日常の風景をデザインする

こういった日常の風景に興味を持っていたところ、まちづくりに関わる機会を得ました。 場所は福島県国見町貝田地区、旧奥州街道沿いの小さな集落です。貝田地区の住民と未来を考える活動を約1年前から関わっているのですが、まちづくりを行う中で地域の公共性に関する調査も行っています。

空き家や空き地にとどまらず個人が所有している土地の中で部分的に公的利用されている私有地であったり、所有している土地の中で扱いに困っている庭や畑、旧奥州街道沿いに面した敷地内のちょっとした余白など、有効活用できる場所がないか目視・所有者へのヒアリングを行い住民が集まれそうな場所を模索しています。

中には誰でも入れるように整備されている場所があったり、ご近所さん同士で共有している場所があったりと世帯数の少ない地域だからこそ地域住民同士の関係が強く、貝田地区ならではの空間の使い方が生まれていると感じ取れます。蓄積されていく中で日常の風景を作り出し、昔からあったような感覚を日常へと溶け込ませ、未来のためにも居場所を作るために活動を行っています。



▲公的利用されている私有地の公園。(クリックで拡大)




▲町の新しい居場所となった空き家。(クリックで拡大)



▲住民によって路上に彩られた植栽。(クリックで拡大)



●私と私以外

冒頭でも述べたように私の目指す建築家を未だに模索している段階ですが、これまで行ってきたプロジェクトを振り返ってみると、私1人では何も実現できなかったことばかりです。常に私以外の誰かとともに行動することで新しい発見を得ることができたり、デザインのクオリティをさらに高めることができたりします。

こうして建築家でありながらも形を生み出すことだけにとどまらず、異職業との関わりもデザインしていくことを今後も大切にしていきたいと考えています。



前芝優也/Yuya Maeshiba
1993年大阪生まれ。近畿大学を卒業後、東京都市大学大学院へ進学し卒業後、建築設計事務所で勤務する傍らMAESHIBAYUYA STUDIOにて個人でフリーランス活動を行う。建築設計とまちづくりの異なる尺度を扱い”建築する”という行為の手法を探りながら、建築家の職能を広げ活動をしている。




2020年7
月27日更新。次回は吹野晃平さんの予定です。



※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


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