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コラム

澄川伸一の「デザイン道場」

その47:こわい話

澄川伸一さんの連載コラム「デザイン道場」では、
プロダクトデザイナー澄川さんが日々思うこと、感じたこと、見たことを語っていただきます。

イラスト
[プロフィール]
澄川伸一(SHINICHI SUMIKAWA):プロダクトデザイナー。大阪芸術大学教授。ソニーデザインセンター、ソニーアメリカデザインセンター勤務後に独立。1992年より澄川伸一デザイン事務所代表、現在に至る。3D CADと3Dプリンタをフル活用した有機的機能的曲面設計を得意とする。2016年はリオオリンピック公式卓球台をデザインし、世界中で話題となる。医療機器から子供の遊具、伝統工芸品まで幅広い経験値がある。グッドデザイン賞審査員を13年間歴任。2018年ドイツIF賞など受賞歴多数。現在のメインの趣味は長距離走(ハーフマラソン91分、フルマラソン3時間20分、富士登山競争4時間27分)。



クレオパトラが住んでいた街

以前エジプトをふらふらっとさまよっていた時。

アレクサンドリアという、クレオパトラが住んでいた街があって、しばし滞在していた。近くの地中海の海底には大量の遺跡が沈んでいて、現在もいろいろな巨像や神殿の一部が引き上げられて話題になっている。

太古の昔に有名なアレクサンドリア図書館焼き事件があって、それまでの貴重な大量の文献が政治的な理由で焼却されたのである。古代エジプト文明の貴重な文字情報がもし残っていたらと思うと残念だ。ピラミッドの製作方法なども残されていたと思うと、ある意味、現在の技術を超えた何かが存在していたことは間違いないので、本当に残念過ぎる事件である。

現代のエジプトはというと、とにかく、車のクラクションがうるさい国だ。呼吸をするかの頻度で鳴らすのが普通なのである。街中のカフェでは働かない男がたくさんたむろして、ひたすらシーシャ(水パイプ)なのである。その反面、働いている女性が多い。街中はとても埃っぽいし、公園の噴水では、噴水の支柱によじ登って大量のペットボトルに水を補充している輩がいて、あれを売るのか? と想像すると危険だなあと感じたり。

ただ、このような土地に現在も超巨大なピラミッドが存在し、たくさんの遺跡群に囲まれて現代の生活が成立している街ってやっぱり魅力的だと痛感する。しばらく滞在していると、予定もなくなってきたので、路地に貼られた1枚のサーカスのポスターが気になっていたので、そのサーカスを見に行くことにした。デザイン的にポスターって大事だなあと思ったりもした。調べてみると市内の自分の宿からサーカステントまで、一本道だが10キロくらいあった。2時間ちょっとのウォーキングである。

この一本道、10キロにわたってずっと両サイドに、狛犬のように石を削って作ったスフィンクスが延々と並んでいるのである。これには驚いた。どんなガイドブックにも載っていないが、地元の人にはこれが当たり前の生活であり、4000年以上も前からこの道がこうなっていたと考えると驚きである。国家的に重要な参道の一種だったのだろう。

●野犬の群れ

砂塵の舞う黄色い道をしばらく進むと、民家もなくなり人気も少なくなったあたりで、とてもヤバそうな野犬に遭遇した。ずっとこちらを見ているが、前だけ見て早歩きで通過することができた。そして、シマシマ模様の絵本ながらのサーカステントに到着し、ライオンの火の輪くぐりだとか空中ブランコとか、世界共通の定番の演目を普通に鑑賞して、帰路に着いた。

そこで、やはり恐れていた事態になるのである。往路にいた、ヤバそうなあの犬が今度はじりじりと近づいてきたのである。眼は完全に逝っていて、よだれを垂れ流し、まず99%狂犬病である。日本ではほとんど消滅しているのであるが、海外ではまだ狂犬病はたくさん存在する。噛まれた場合は潜伏期間が200日前後で人間も狂って死んでしまうと聞いていた。

カイロまで行けば、処置はできるそうだが、注射針の二次感染でまた別な危険があると当時の「地球の歩き方」には体験談が載っていた。そんなことを思い出しながらも、目の前のその狂犬が突然、上を向いて遠吠えしたのである。そして、その数十秒後、自分の360度全方位から、狂犬軍団がどこからともなく表れて、完全包囲されてしまった。12匹以上はいた。全員、眼が逝ってしまっていて、よだれだらだらである。ゾンビ映画の発想の根源ヒントって間違いなくこの状況の体験ではないだろうかと思った次第である。

包囲されている輪はじりじりと小さくなりつつ、非常に危険な瞬間に近づいている。今できることは、部分的な輪の突破ではなく、自分の唯一の所有物である赤いバックパックを振り回すことで、輪の半径を保つことしかできなかった。振り回しながら、微妙に移動して攻撃用の石を探したのであるが、砂地であり投げるものは見つからなかった。

「これはもう駄目だろう、噛まれる」と思った瞬間に、自転車にのったエジプト人が近づいてきた。よく分からないのだが、笛のようなもので大きい音を出した瞬間に、周囲の犬が瞬間的に散った。その人が目で合図してくれた瞬間に、猛ダッシュでその場を離れた。その人は命の恩人であり、まさに感謝である。狂犬はとにかく怖い。さらに仲間を呼ばれるとすごく怖い。そして、話しても通じないという怖さがある。これはゾンビと同じだろう。

●一番怖いのは

自分の本棚の中に「もうダメだと思ったときに読む本」という本がなんと3冊もあった。無意識に買ってしまっているのだろう(笑)。そんなに、もうダメなのか!(笑)

自分的に幽霊やお化けの類はまず怖くない。お墓で火の玉とかも何度か見ている。その他にもいろいろある。しかし、見えるか見えないかというのは怖くない。一方で人間関係は最大のストレスではあるけども、話ができるという関係性がある限りは怖くはない。

以前、三軒茶屋に住んでいた時に、掘り出し物の駐車場があり、契約に行った先が、思いっきり映画で見たのと同じような「組」の事務所でびっくりしたことがある。しかし、まあ、普通にしゃべって普通に契約して帰ってきたし、危険な目にも合っていない。相手が、人間である限りは「交渉が可能」という条件がある限りは何とかなるものである。

やっぱり、一番怖いのは動物だと思うのである。山をランニングしていても、でかい熊が出てきたらどうしようとか心配になるし、ダイビングをやっていたときも、紅海で巨大なホオジロに接近されたときもヤバいと感じた。もちろん、自然も怖い。自然が牙をむいた時が一番人間は無力かもしれない。海でもサーフィンで何度も沖に流されたり、洞窟ダイビングでエアゼロになったりもしている。窮地に陥った時に「交渉が可能かどうか」はとても救いになる。「交渉不可能」な状況では、運命にゆだねるしかないのである。

生き方的には「ハイリスク ハイリターン」でいきたいね。

以上、怖い話でした。
暑い毎日ですが、どうぞご自愛ください。



2022年7月1日更新





▲ギザのピラミッド群と筆者 気温は50度超えていました。ソニー時代に無理やり長い休暇をとってふらふらしていました。今思えば、やったモノ勝ちですね。(クリックで拡大)



▲両サイド、無限スフィンクスの参道 アレクサンドリアのサーカスまで延々とこの感じが続く。ちなみに、ここは観光地ではない。(クリックで拡大)



▲アレクサンドリア郊外のサーカステント。この帰路で大変な目に合うのである。今思えば、サーカスは基本世界共通であって、木下大サーカスと内容もほとんど同じだった。(クリックで拡大)



▲エジプトカイロ市内の様子。つげ義春風の屋台が立ち並ぶが、これはアイス屋さん。この近くの公園で、ペットボトルに噴水の水を充填していた輩がいた。(クリックで拡大)



















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