「less is more」はミースの名言であり、身体にも適応する。
身軽さは行動範囲を広げてくれる。
旅を重ねていくと、荷物が次第にコンパクトになっていく。不要なものが分かるからだ。山も同じだ。必要なものだけを最小限、最軽量にまとめることで行動範囲が広がり移動の負担が軽減されることが分かってくる。そしてこれは自分自身の身体の重量とか品質もまったく同じなのである。
●人間の構造も基本は一本のパイプである
ミミズのように入り口と出口がある一本の管なのである。最近は、小腸も思考する機能があることも分かっているし、一本の菅の中を通過していく過程で生きるためのさまざまな処理と今後の判断がされている。「生きる」とは「通過」なのかもしれない。
クリエイターにとっては、観たもの経験したものがその表現の原料となるが、自身の身体形状も、身体を口から「通過」してきたものでできている。その「通過」してきたものと、毎日の生活の行動パターンの結果が現在の自分自身の身体である。言い訳無用である。現状満足であればそれを維持すればいいだけ。ただ、絞ることで何か人生目標に影響があるのであれば、絞る意味はある。やせることだけが目標であれば途中で見失って絶対に失敗するだろう。その先にある「何か」がないと。そしてそれは数値目標であるほど成功率は上がる。
僕自身は単にマラソンレースのタイムを更新したいというそれだけで絞るように調整している。実はフルマラソンの3時間20分というタイムを何度やっても更新できないから。せめてあと一分は更新したい。ただそれだけ。ある意味、職業としてのデザインよりも難しい課題である。年齢による運動能力の降下に抗う行為でもあるし。なかなか難しいのが現実。
●情報の断捨離
では、F1マシンになるため、何をどのくらい食するか? ということになる。
世界のいろんなところを旅してきて、単一の食物しかとらないのに、均整の取れた体型で健康な人ばかりの村とかが結構ある。ニューギニアのヤシの繊維を漉して、デンプンお団子みたいなものしか食べない人たち。アマゾン流域で、バナナとピラニアしか食べない人たち。オールドデリーのサイクルリキシャのやせた少年もスープカレーとパンのみでも、ぐいぐい漕いで客を乗せて坂を上がっていくし。
いろいろとすごい。住環境によっては、味に対して、飽きるという概念自体がなくて、おなかを空かせて食べるというのが基本の行動になっている。今日は何を食べようか? といった選択肢が存在しない。しかし、皆おいしそうに食べるし、スリムで健康でよく働いている。遺伝的消化酵素の要素もあるとは思うのだが。
いろんなものを食べたいだけ食べて、ダイエットにまた投資している我々日本人は食べることにお金をかけ、やせることにまたお金をつぎ込んでいる。とにかくお金を使うようなシステムにはまっているのである。「火」と「水」を交互に購入している中和のエンドレスループなのである。これはマーケット戦略に支配されているということにまずは気が付かなければならない。テレビ放送やSNSなどのメディア情報から受け取る自分の影響を意識することが大事だ。
情報として何を受け取るか? 要は自分の情報の選択肢次第なのである。ダイエット成功のヒントは情報の遮断にあるのは間違いない。以前の食生活のガイドラインは、12品目をバランスよく摂りなさいとよく言われていたが、個人的にはそうでもないような気もする。すべてに共通して、物事は足し算ではなくて、引き算で考えるべきだと思っている。トリッキーなのはその味付けだと思う。
絶対に身体によくないのは、人工的な油や着色料、甘味料だろう。いくらサラダを食べても、質のよくないドレッシングドバドバだと危険な部分もある。エスキモーは生涯野菜を一口も食べないけれどアザラシを食することで健康だし。とにかくまずは、引き算だと思う。和食は健康的なイメージであるが、いわゆる「おふくろの味」とかは注意しないといけない。肉じゃがとかすきやきとか、作った人なら分かるが大量の砂糖とみりんを使うのだ。要はその味付けの内容だろう。
●徹底的に塩にこだわる
ボディビルダーは、体脂肪を徹底的に落とすことで、筋肉を強調するので、体脂肪の減る食事メニューになっている。もちろん、プロテインドリンクは除いた食事であるが。調べるとかなり参考になる。応用できるのがまず、食物繊維としてのサラダでできるだけ純度の高いオリーブオイルと塩での味付け。これは、よく考えると、イタリアのレストランでサラダにオイルとバルサミコと塩をかけるのが定番なのとよく似ている。
モチベーションを上げる手段として、禁欲的なモードに突入する記念として、フルールドセルとか、フランスの最高級塩を大人買いして使い分けるというのも1つの手だと思う。いい塩をたくさん知っているだけでも、なんだか楽しいし。この際「塩道」を極めてみるのもいい(笑)。保存もきくし、長い期間楽しめる。最高級の塩とかオリーブオイルが食事のテーブルに並んでいるだけでも楽しい。オリーブオイルも実にいろんな種類が存在する。奥が深い。
そして、たんぱく質の補給源の筆頭は、鳥の胸肉だろう。F1カーと同じで、車体が軽くてエンジンの馬力があるほど速い。空を羽ばたいていく鳥の胸肉自体は脂肪も少なく、筋肉の比率も高い。そういう意味でトビウオもいいのかも(笑)。
それから、卵の白身も定番のようだ。ゆで卵に前述の高級塩などふりかければそれだけでもかなりの満足感がある。これらに加えて 味噌とかヨーグルトとか納豆の発酵食品も入れておけばもう十分すぎるような気がする。基本食をサラダにして、トッピングは鶏肉や卵以外ではイカ、エビやキノコなどいろいろアレンジすればそれなりに楽しめると思う。僕の場合、それ以外の炭水化物とかは、マラソンレースの前後2日間と基本的には決めている。もちろん、出張や仕事の会食での例外は起きてしまうのだが(笑)。
●脳を満足させる工夫
「食」は「胃」を満足させるものと「脳」を満足させるものの2種類がある。
空腹の度合いが強いほど両方を満足させている。一方で、おなかがいっぱいなのに食べたくなるのは、何らかのストレス回避であったり、「脳」をごまかすための食であることが多い。
そのあたりをはっきりと自覚することが大事だろう。普段は粗食でよいのだ。そのかわり、月に2回でも、盛り付けの綺麗なレストランなどで食事することで「脳」は満足するし、その体験自体が「デザイン」の勉強にもなるだろう。
昔の宇宙食みたいにいつも「チューブ」の食事だったら、いくら大量摂取しても精神的に滅入ってしまうのは当然だろう。日常のサラダの器を有田焼の豪華で大きなものにするだけで「脳」はかなり満足する。器も大事な要素である。高価でも、自分のサラダ専用のお気に入りの焼き物を買うのもとても良いことだと思う。カトラリーや箸もそうだ。普段使いほど良いものを使うのがいい。よそ行きは逆にほどほどでいいかと(笑)。個人的にはそのほうが生き方としては素直だしかっこいいかと感じる。
食に関しては、まだまだとても書ききれない。全然デザインの話ではなくなってるが、まあいいか。
次回、「一日一食」の話にします。
2019年9月1日更新
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