●永遠のシステムを目指して
「空海、利休、ジョブズ---成功の共通点」。GFリサーチの泉田良輔氏の三者の見立てが「システムとしての永続性」と分析しており、2015年のスタートを切るには大胆かつクリエイティブで非常に興味深い。
空海は真言密教というシステム、茶の湯のルールを確立した利休、ジョブズは「システムとしての永続性」を確立したという泉田良輔氏の見立て。時代や地域や業界を超えた発想がとてもクリエイティブで興味深い。以下に泉田良輔氏の文章を引用、そして再編集した。詳しくは原文を読んでもらいたい。
http://bizgate.nikkei.co.jp/article/76195415.html
●システムデザイナーとしてのジョブズ
ジョブズが成し遂げたことの中には「システムとしての永続性」を備えた要素が多分に含まれている。ジョブズは、アップルを永遠たらしめようとする極めて重要なものを残していったのだ。日本の歴史を振り返ると、アップルと似たようなシステムを構築し、数百年から1000年以上にわたって運用されてきた事例がある。
それは「真言密教」や「茶の湯」である。真言密教を大成した空海と茶の湯のルールを体系化した千利休の関係が、アップルの体系化に似ている。真言密教も茶の湯もアップルのビジネスモデルも「1つのシステム」であり、空海や利休、ジョブズはそのシステムデザイナーだったといえる。
システムデザイナーとしての最も卓越した才能は「編集能力」だ。あるいはプラットホームを作り上げる才能だろう。これに成功したシステムは、運用をしっかりと継続することで長い寿命を獲得できる。
真言密教や茶の湯が数百年も継承されていることを考えれば、ジョブズのシステムデザインをアップルの後継者がうまく運用することで、そこから長期にわたって利益を上げ続けられる可能性がある。
アップルはユーザーインターフェイスにこだわり、ハードウェアをネットワークにつなぎ、コンテンツやアプリケーションプラットフォームを活用することでシステム全体の使い勝手の向上に成功した。
●空海、利休に学ぶ
日本人である空海が中国・長安の青竜寺で密教僧の恵果から「胎蔵界・金剛界の両部の奥義」を学び、経典から仏像、仏画、法具に至るまで必要なハードウェアをすべてそろえて持ち帰ったことである。
また、空海の真骨頂はその持ち帰った両部の編集作業を通じ、ロジックを背景にシステムを構築し直し真言密教というシステムが完成した。
利休も先代から受け継いだ茶の湯に自分の世界観や好みの道具であるハードウェアを組み合わせ、茶の湯のルールを確立した超一流の編集者である。利休以降、茶の湯の道具の第一は墨跡(掛け軸の書画)だとされている。
文字や文章、またそれらを掛軸にしたメディアを起点とし、茶席を亭主と客人のコミュニケーションの場へとリデザインしたのだ。掛軸のかかっている床をGUIとたとえるなら、ハードウェアにおけるインターフェイスを工夫することで新しいユーザーエクスペリエンスを実現したアップルのMacやiPod、iPhoneに通じる。
[ジョブズ]
システム:アップル
GUI:アイコン
ハードウェア:Mac、iPhone
[空海]
システム:真言密教
GUI:曼荼羅
ハードウェア:法具
[千利休]
システム:茶の湯
GUI:掛け軸
ハードウェア:茶道具
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