●「所有する=豊か」を疑い始めた現代人
今、「シンプルライフ」という潮流が着実に世界にながれている。大量生産・大消費社会への反発として、できるだけ不必要なモノを持たず、必要最低限の生き方をする。地球資源が限界を向かえた21世紀には、環境にフィットしたライフスタイルが求められている。
例えば「食」であれば、ファストフードであふれ返っていた欧米で「シンプルで栄養バランスの良い日本食」が注目され、「衣」であれば、「断捨離」*1などの影響もあり、最低限の枚数しか持たなくなった人も少なくない。DIYの可能性も高まる中、「所有する豊かさ」は衰え、不必要なものは「捨てる」、もしくは必要なものを「創っていく」スタイルへと変化しつつある。
そんな中、住環境にもその変化が起きてきている。「タイニーハウス」というムーブメントは、リーマン・ショック後のアメリカで、大量生産・大量消費社会に対するカウンターカルチャーとして起きている住環境の変化だ。
*1 ヨガの行法「断行(だんぎょう)」、「捨行(しゃぎょう)」、「離行(りぎょう)」を応用した考え方。「断=入ってくる要らない物を断つ、捨=家にずっとある要らない物を捨てる、離=物への執着から離れる」
●6畳ほどの家に移動しながら住まうタイニーハウススタイルとは
みなさんなら、どこまで小さな家に住むことができるだろうか。「タイニーハウス」とは、住環境として最小の単位ともいえる約6畳の家に移動しながら住まうスタイルを指す。
2000年ごろから始まったこの動きの根本には、単に小さな家に住むというだけでなく、なるべくモノを所有せずにシンプルに暮らすという価値観がある。この動きは今では20代や30代という若い人たちに広がり、小さな家に特化した部品や書籍などのマーケットも生まれている。
●「所有する豊かさ」から「手放す豊かさ」へ
この「タイニーハウス・ムーブメント」の真髄についてタイニーハウスビルダーの竹内友一さんは次のように語っている。
「いままでは、より多く消費する人が消費の少ない人たちより豊かであると信じてきました。消費は幸福を得るための一手段であって、本当は少ない消費でより多くの幸福を得ることができれば」
http://wired.jp/2014/10/11/tinyhouse-movement/2/
大量に消費し続けることが不可能となった今、少ない消費のなかで感じる「新たな豊かさの定義」が必要だ。身の回りのものを見渡し、不必要なものを捨てていくことは、「本当に必要なもの」を見定めることへつながる。手放すことで、より”豊か”な生き方をデザインできるということだ。
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