pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム

坂井直樹のデザイン色眼鏡

第3回:新しさにこだわり続ける日本のデザイン
素晴らしいデザイナーはたくさんいるのに、
なぜ日本のデザインはパッとしないのか? の謎


坂井直樹さんの新コラム「デザイン色眼鏡」は、コンセプター坂井直樹さんに、モノをメインにデザインを取り巻く状況を語っていただきます。

イラスト
[プロフィール]
坂井直樹:コンセプター。株式会社ウォーターデザイン代表取締役。1947年京都生まれ。19歳で渡米し、サンフランシスコで「Tatoo T-shirts」が大ヒット。帰国しテキスタイルデザイナーとして活躍した後、80年年代後半に「Be-1」(日産自動車)や「O-product」(オリンパス)のコンセプトを手掛け脚光を浴びる。その後もau design projectで数々の先進的な携帯電話のデザインをプロデュースするなど、コンセプトからデザインまで革新的なビジネスをクリエイティブしている。


「あなたはどんなデザインが好きですか?」と問いかけると、どんなものが挙がるだろう。日本の若者であれば、その多くが、車であればBMWなどのEUのカーデザイン、スマートフォンならiPhone、掃除機ならダイソンなどを挙げるだろう。日本製のデザインを好む人ももちろんいるが、大抵は、海外のデザインを好んで購入していく。なぜ、日本のデザインはパッとしないのだろうか?。


●新しさにこだわり歴史を否定してしまう日本のデザイン

デザイナーの和田智さんは、ifs未来研究所の川島所長との対談のなかで、その理由を「日本企業が、デザインに対して『新しい』にこだわりすぎるから、ですよ」と指摘する。

近年の日本の大手メーカーなどのデザインを見ていると、確かに、新しいデザインにこだわっているように思える。実際、経営者や幹部の方にお会いすると「新しくて売れるデザイン」を求めてくることは少なくない。

また特に大企業の場合、デザイナーは「前のデザイナーのデザイン」を否定したがる。「より良いデザイン=新しいデザイン」という公式が脳内にあり、どうしても見たことのない新規性のあるデザインを考えようとする。


●経営者やデザイナーが新しさにこだわる理由

ではなぜ日本のデザインは新しさを求めるのか。その理由は何かといえば、団塊世代、もしくはその上の世代の方特有の価値観にあると和田さんは指摘する。

私を含め、右肩上がりの成長を経験してきた人としては、何もないところから市場ができてきたことを経験している。そのため「新しいもの=良いもの」という価値観を自然と持っているのかもしれない。

今の日本企業の場合、そのような価値観を持つ人で上層部が固められている。すると自ずと、部下にあたるデザイナーもその影響を受けざるを得ない。

若手デザイナーが合理的なデザインをしても「ふつうのデザインだな」と否定され、世の中には「ふつうでないデザイン」が生み出されていく。


●日本のデザインは、
「変化を求め消費を煽る」米国型のデザインに影響を受けている


このデザインの考え方というのは、年代だけでなく国によっても大きく異なっている。日本にある「新しさを求めるデザイン」は主に米国のマーケティング志向の影響を色濃く受けているといえる。

そもそもデザインとは、160年前におきた産業革命で大量生産が可能になったことにより生まれ、バウハウスというドイツに設立されたデザイン学校で確立された。しかしこれはナチスの弾圧により閉校され、そのメンバーの一部はアメリカに亡命し、米国独特のデザインの考え方の基礎をつくりだした。

それが「経営資源としてのデザイン」の考え方だ。これは「新しくって売れるデザイン」を良しとする風潮・文化であり、日本はこの米国流の「デザイン」から影響を受けている。

その後のヨーロッパでは、米国とはある意味対立する考え方が確立されることとなる。「ブランドの価値創造のためのデザイン」という考え方であり、和田さんの言葉を借りると「ヘリテージ(過去からの遺産)という恩恵があって、それを尊重して、次のデザインを考えている」というものだ。

過去からの歴史の上に今があり、それらに敬意を払いながら次のモノを生み出していく。よくも悪くも今の日本消費者は、そのようなヨーロッパのデザインに「かっこ良さ」を感じている。

そうは言えども日本にも、歴史を重んじる価値観は存在するはずだ。忘れられつつある日本的思想が、業界の歴史としてはまだ浅いデザインの世界で上手く反映され、世界からも愛されるモノが増えていくと良いと思っている。

 



イラスト
不動のブランドとして日本人にも人気のBMW。(クリックで拡大)


イラスト
1919年、ドイツ・ヴァイマルに設立されたバウハウスは、美術と建築に関する総合的な教育を行った。(クリックで拡大)

Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved