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						画面のかたち 
						moviti/片山 典子 
						 
						[プロフィール] 
							1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。 
							http://moviti.com 
						 
						このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。 
					 
					Macを買い換えました。そもそもプリンタの紙送りがカラ滑りの老朽化だったので、買い換えようとしたらOSが古すぎた。 
						 
						これまで使っていたのは黒背面のiMac、OSアップデートを3度見送り9年使っていたことになる。お疲れ様でした。 
						 
						で、何に買い換えようとコンピュータ感度の高い夫に考えてもらって、今回は「21:9の画面と暮らす」というテーマになった。Mac mini(これも初代からすんごく小さくなっていたんですね。初代はACアダプタが本体の半分近いサイズで騙された感があったけど、それもなくなってる!)と組み合わせたのはLGの曲面29インチ。 
						http://www.lg.com/jp/monitor/lg-29UC97-S 
						 
						実は蔦屋家電でじんわりハマッタのが、LGの曲面有機ELディスプレイ。 
						http://www.lg.com/jp/oled_tv/index.html 
						 
						まあソファーも革張りですてき、大自然の風景がうつりゆくのを見るラグジュアリーなラウンジのような売り場、しばらくネットリ座ってました。曲面なだけですよ。曲面プロジェクタースクリーンとか見たことない訳じゃない。臨場感、包み込まれる没入感というほどのものでもないと思うんだが。極薄エッジと高精細のせいなのか。 
						 
						パソコンになると「幅広を顔と近い距離で見渡す」のが曲面の違和感より、”人当たりの良さ”のほうが強い印象。買い換え前より画面タテ寸法は少し小さくなったが、A4タテを横に3枚並べた画面サイズ。メール、ネット、作業と複数同時立ち上げで重ねて使っていたのが、横に広げられるようになった。イラレをOSが変わってCCにしたら、びろーーんと横長で展開するのがまだ慣れてないんですが。 
						 
						そして売り場を改めて見渡すと、従来の4:3画面が「家庭に仕事を持ち込んだようなビジネス感」「ひと世代前のデジタル機械」に見えて、むしろ旧来のオタ感を感じたのだが。あとね、設計者とデザイナーの攻防ポイントだと思うけど、縁の幅が細いのはやっぱお洒落ね。 
						 
						一昨年、去年はデザイナーの悲願、脱四角画面プロダクツがいろいろ発表されましたな。カットしたり力技でガラスを曲げてるのか。 
						https://www.g-mark.org/award/describe/43286?token=59xfgLPrTb 
						http://www.sharp.co.jp/corporate/news/151006-a.html 
						http://www.samsung.com/us/explore/gear-s-features-and-specs/ 
						http://www.samsung.com/jp/product/gears2/features/ 
						 
						昔っから”画面が四角くなければ新しいデザインできる、操作デバイスと組み合わせられる”というのは数多のデザイナーが提案しただろうが、やっと実現できたのは感慨深いですねえ。聞き分けよくしているだけではあかんのね。製造は確かに大変そうだが。 
						 
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						昔「写真画面/デジカメ液晶」のかたちが従来の長方形じゃなかったら、というのを考えたことがある。 
						 
						正方形にするとポラロイドSX-70やRICOH GRとかやっていて、なんでか分からんけどお洒落なアート系。 
						http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/gr/ 
						 
						レコジャケとかアイコンみたいな構図が決まるからですかね。instagramもですが、失敗写真の救済率が上がる。あらこれはカメラは正方形でinstagramアイコンみたいなのに、画面はワイドなのね。 
						http://polaroid.com/socialmatic 
						 
						丸にすると顕微鏡写真、上下も構図がなく全面模様のような質感の被写体が合う。”風景を切り取る”というより”標本を集める”感じ。問題なのは円形にUIメニューを嵌めるとなると、カーブさせたくなって、それってUIのパーツの使い回しが全然良くないよね、と当時思った。プリントも丸いとメンコみたいだし、黒い四角の真ん中に丸画面というのもなんだかなーと思った。 
						 
						だから腕時計の機能に特化したSamsung Gear S2を見たときは、あ! と思いました。iWatchがリューズの回転と同じ上下方向でスクロールさせているのに対し、丸アイコンのレイアウトとアナログ時計はベゼルに沿った円盤状にスクロール、他は上下に回転させるUIなのかな。タッチパネルのスイープと合わせてメニューの回転軸がいろいろありそうですね。 
						 
						写真を撮るときもタテ構図が多め、塔や空を撮るならタテ四角が当然、と考えた私は、昔「タテ画面動画」ってなんでないの? と設計者に聞いたことがあり、当時は「いや動画ってヨコ画面ですよ」と噛み合わなかった。あれから10年近く経ちタテ画面動画が市民権を得つつあるのね。 
						http://www.movie-times.tv/feature/7338/ 
						 
						単純だけど、画面のカタチが変わるだけで操作の気分やモノの位置づけが変わる。うちに来た友達も曲面ディスプレイを見るなり「おお~曲がってる!」やがて「見やすいね」「家ならこの長い画面いいね」。 
						 
						こうして”未来予想図”が一歩現実になじんでいくのかー。 
						
						
						
						
						
						
						  
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