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女子デザイナーの歩き方 第90回
ふだんのプレミアムなデザイン
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


青山にTomDixonのショールームができてるの、先日見に行きました。
http://www.tomdixon.jp/

ガイ・リッチーの映画に出てきそうな光沢カッパーと黒の組み合わせが60年代コケティッシュ。それにしても昔はガレージっぽい工業製品のリメイク、合板やら学生っぽい若いデザインだったはずだが、気がついたらブランデーの似合う昭和スパイ親父スタイルになっていたのか。

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と、完成しているデザインを語るのはすらすら言葉が出てくるのだが、当然ながら今作っているデザインのことを語るのは半凝固状態のものをいろんな角度からつかまえようとしているので的を得た言葉にするのは難しい。いくら現状分析や思いをまとめてコンセプトに組み上げて、ブランド名やコピーのような短い言葉に研ぎすませることに時間をかけても、そこにぴたっと嵌った形が出てるかどうか、どうずれているのか共有化するのは、もやもやする。

今一緒にやってるクライアントさんは"作る"人ではなく"企画・販売"会社の会長さんと実務担当の息子さんの社長さん。これがなかなか難しい。

長く仏壇業界をフィールドにしてらっしゃるのだが、会長さんはいろんなブランディングの本を読んで研究して、すごくイメージや思いが膨れ上がっている。MUJIや中川政七商店みたいなことを別業界(仏壇)で実現したいのだ。

さらにとりあえず安価に作ったモノでは愛着が持てない、日本の手工芸をモダンアレンジして「いいな」と思えるモノを相応の価格で提供する。このあたりは雑貨など広いジャンルに共通する思いですね。そして各地に出向いてここぞというさまざまな素材/技法の作り手さんに依頼しているエネルギッシュぶりは感服する。

加えて、最近のマンションライフには仏間仏壇がない、家という住むところに家族の芯がない、ことに対する危機感。昨今の殺伐とした日本の事件、問題に対して「現代のライフスタイルに合った仏壇を身近に置いて暮らしの中に静かに祈ったり憶ったりする機会習慣を持ち込む」ことで思いやり、謙虚、感謝の心を取り戻し、より良い世の中にする、という壮大な想いがさらに背景にある。

すごいですね、言われてみたらなるほど。私も実家には大きい金仏壇があって、いまだに帰省したらまず手土産をお供えして手を合わせる、普段はやってないけど、やってるな、ちょっとは人間形成に影響しているのか。

壮大だ、モノを売るだけでなくライフスタイルを変えて世の中を変える意気込み盛り沢山。

この「"手を合わせる習慣"を現代にフィットするように生活の中になじませる」というプロセス、どうも私と会長さんとで意識がずれているフシがあるのだ。あるいはMUJIや中川政七商店にはない"プレミアム感"が、目指す商品像に含まれているのに、会長さんそこを自分で見落としているのか。仏壇は一生モノ、購入できる機会は1回で高額、普段使いの雑貨とは違う、と思う私がずれているのか。

Panasonicが最近掲げる「ふだんプレミアム」というコピーをとっかかりにしてみよう。すでにある価値観だが分かりやすくまとめようとしてる。
http://panasonic.jp/fudan/

プレミアムとは:〈商品が〉品質がよくて高価な,高級な.〈値段など〉割り増し付きの.(weblio) 

見回せば安くて便利高機能一辺倒だったのが、センスのよい長く使えるモノがこなれた価格で揃ってきた。そういうモノを選ぶ価値観が広く認められるようになってきた。ストイックなテイストだけでなく、自分なりに選んで「丁寧に暮らす」ことができる分かりやすいアイテムが日本全国ネット通販できるようになった。

この四半世紀、たくさんのデザイナー、作り手、売る人が努力して、デザイナーでなくてもお洒落に暮らしやすい世の中になったもんだ。デザインの普及が進んだ、レベル上がってるよね、と思う。わざわざ海外で地元の安物食器を衝動買いして喜んでる私より、よっぽど整ったお宅は沢山あるもん。

その延長に「仏さん周りのコト」を据えてみる。おお言われてみれば木工、陶器、漆などなど手工芸品にお金を使う大義があるじゃあないですか。日用雑貨よりも大事に扱うし、仏壇買うのに心が躍る、不謹慎いや健康的かも。そうでなくっちゃ楽しい仏壇ライフ。いわゆる生活必需品じゃない"暮らしの芯"を買う。人によってはホームシアターや自分用のソファーを買う、ティーカップをコレクションする、とかに近いウキウキがあるのではなかろうか。んーでも「素敵! 欲しい!」先行で買うものじゃないのかな、どうだろう。

親族が亡くなって、あるいは引っ越しや実家の整理がきっかけで購入を考えるそうだ。平時には意識の外なのに、いざとなると必要に迫られて買う。どうせ買うならいいものを、というメッセージを業界内に発信していけばいいのか、でも必要に迫られるまでは関心の対象外だ、「こういうステキな購買対象があるよ」と外にも投げかけてじんわり浸透が得策か。

「自分に合ったちょっとイイ仏壇と過ごす」を「ふだんプレミアム」に当てはめると、
「"ふだん"全体をレベルアップ」なのか
「"ふだん"の暮らしの中に散りばめられてる特別な時間」なのか?

そういうとき欲しくなる「身近なオーセンティック」って伝統とモダンの混ぜ具合はどのへん?…と悩んだところでアウトプットはそんなに変わらないのだが。

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これとは別に息子の社長さん、きさくだがお父様の思いを尊重してコメントは少ない。だが日々の販売の手応えからか「売れ筋」価格やサイズのイメージが明確にあるようだ。

そしてあれこれ手を広げて欲張りな会長とブレーキ役の社長で納得ポイントが合致してないようで、私や携わっている工場さんもつい「そこは社長がびしっと仕切って欲しいな」な反応しているんだが、会社の役割と親子の関係のしがらみ、なのかな。

そろそろサイトの構成にも着手なんだが言葉が多くて散らかっている状況。まとめて他の言葉に置き換えようと提示しても、瞬発では反応良いのだが、結局自分発の言葉でないと身に付いてないみたいだし。

と、もやもやな年末。来年にはガッツポーズできる瞬間に出会えることを祈って、皆様よいお年を。
 


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