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女子デザイナーの歩き方 第84回
蔦屋家電
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


東急田園都市線の二子玉川駅前が、長い工事期間を経て未来都市のようになった。なかでも蔦屋家電が面白いそうで、さっそく見に行ってきた。TカードのTSUTAYAではない白地の蔦屋は代官山、湘南とも「新しい都会生活」の提示か。店名の「家電」はリニューアルするぜ! 心意気の表明か。
http://real.tsite.jp/futakotamagawa/

本屋と家電多めの雑貨屋にカフェ、観葉植物、玩具、自転車、アップルやB&O、アルフレックスなどがくっついている。代官山みたいなショップごとのコテージスタイルでなく、地続きフラットで回遊する2フロア。

全体に白壁とエイジングウッドの床。大きな窓からの自然光が入る暗めの室内、という照明。真ん中にエスカレータの吹き抜け、リング状のフロアの内側、エスカレータサイドは天井いっぱいの植物と本や雑貨が置かれた棚の間に、さまざまなソファーがランダムな向きに置いてある。平日の昼というのにたくさんの人がフロア内のスタバで買ったコーヒーをテーブルに置き、まったり本を読んでいる。BGMなし、館内放送もなし? 雑踏のノイズのみ。

ビンテージミニカーのガレージを模したミニチュア、多肉植物、大きな陶器のボウル、凝った自転車、「Vintage Life」なんてこの情景にぴったりタイトルな雑誌があるのね。40万円の希少な革や漆のiPhoneカバーの隣にiPhoneでコントロールできるおもちゃやドローン。エルメス仕様のライカやVERTU(スマホ以前のNOKIA懐かしい!)など高額商品や非売品は小さいガラスケースに入って、威圧感を与える。「高級の横に買いやすくお洒落な低価格商品の混ぜこぜ」。ぺたぺた触っても店員(コンシェルジュだそうだ)が寄ってこない。デモしてもらいたいときはこちらから声をかける。

写真集など、置いてある様が美しい本、文庫や新書より雑誌、洋書など大判のビジュアルブックが多い。家電や商品に応じて近くに置いてある本のジャンルが変わる。健康器具(マッサージ機、トレーニングマシン、酸素カプセル)の横の本棚には認知症予防の本。脱毛機にドヌーブの映画や脚線美が印象的な映画のDVDが添えてあり、クラシックなコスメのボトルが置いてある。映画でモチベーション上げて自分磨きか、分かりやすい。

エアコンや照明器具、掃除機、洗濯機、キッチン家電、デジカメプリンタ、AV機器、意外と商品陳列の間隔を詰め、輸入モノの珍しい製品を混ぜつつ「一通り見渡せる」展示。実は国内家電メーカー製品がメイン、カタログコーナーでスペックを見比べやすい。世はKINFOLK流行り、良いもの厳選といいつつ、客それぞれの厳選に応えるため、一見盛りたくさんのバブリーな景色に見える。
http://www.kinfolk.com/

美容家電のコーナー、壁に標本のようにたくさんのドライヤーが一覧、フォルム比べが単純に面白い。

シェーバーの脇にアナログなひげ剃り、シェービング用カップ、凝ったグルーミングキットがガラスケースに入って置いてある。見栄えの良いイタリアのエスプレッソマシンやジューサー、キッチン家電の棚には小さいBluetoothスピーカーや水耕栽培キットもある。掃除機の隣はアイロン、ミシン、空気清浄機経由ペットの給餌器で血圧計、活動量計、体温計、歯ブラシから美容家電に至る。「共感しやすいマニアック目線」。

生活シーン/テーマ別の売り場にはなんでもあるようで、厳密にセレクトして、「モノの詰まり具合をコントロール」している。キッチン売り場ならアイテムが増えがちな食器や調理道具、布もの、こまごました雑貨はきっぱり省略(同じモールに他のショップもあるし)。スマホやタブレットはWindows surfaceとアップル製品だけ。万年筆やでかいインク瓶はたくさんゆったり、側の壁には4Kテレビ。

「"Aが好きな人はBも関心あり"に合わせて売り場の格を揃えてアソート」がセレクションの基準か。一方普段使いの文具やパソコン周りのこまごま商品は整然とぎっちり詰まり具合がきちんと見える売り場。

これまで家電量販店で4Kテレビは高精細とは見てましたが、ゆったりとソファに座って観る曲面有機ELって階調が綺麗だなあとしみじみ。
http://www.lg.com/jp/oled_tv/index.html

商品名、価格、簡単な説明はとても小さく印字された分厚いアクリルの札に書いてあるが、デパートより全然読みにくい、それが大事。POPやばらばらに主張する什器もない。デパートよりも棚下の照明が抑えてあるのかな。もちろん家電量販店の蛍光灯キンキン照明、大音量BGMをものともせずに、大きな赤文字の割引価格やスペックを見比べながら買い物するのが醍醐味、という人も少なからずいるのだろうが、こういう売り場は個人的に負荷が少なくて助かる。

私も昔は海外家電や新製品、名作の香りを感じるためにリビナヤマギワとか時々行ったりしてたんですが、いつしかそういう期待感がさぼりがちで、初見なプロダクツもちらほら。
http://www2.meethue.com/ja-JP
http://www.brionvega.jp/products.html
http://www.imp.ne.jp/top.html

30年前に東急ハンズが「それまで売ってなかったもの"なんでも"売ってる、専門ごとプロのアドバイスも聞ける」で衝撃を与えたが、買い物の主体性は客サイド、悩んで迷って買い物していた。

蔦屋家電は「プロの”目利きでセレクト”の中から快適に選べる」、博物館テイストなライフスタイルテーマパークのような場所だった。見易い、悩まない。デートや家族のお出かけで廻れそう。飽きればソファで本読んだり、ボーネルンドで子供遊ばせたり。二子玉川ライフだ。

 


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