女子デザイナーの歩き方 第81回
雑貨ザッカ
moviti/片山 典子
[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com
このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。
本コラムの第77回「モノ作りの現場体験」がきっかけで、コラム欄でお隣の大谷さんとお仕事することになりました。楽しみです。
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去る1月15日、文化屋雑貨店が閉店しました。原宿だけ閉店するのかと思ったら、ネットも地方店舗も(いくつか残ってる?)閉店のようです。去年秋出版された「キッチュなモノからすてがたきモノまで-文化屋雑貨店」を読んでみたら、自分の人生と雑貨の歴史がかなりシンクロしているような。
浪人してた頃、神戸三宮高架下のお店によく行き、おそらく私のデザイン観を形成した大きな部分なので、雑貨を振り返ります。
http://bunkayazakkaten.jp/
そもそも「雑貨」という文字への違和感が未だにある。毎日使うものなのに、プロダクトデザインの結構な領域だと思うのだが、「雑」という親しみ以上に見下したような(粗雑ではなく雑多なんだけど)漢字がなんだか残念だ。なんとWikipediaにも「(生活)雑貨」の項目はなく「日用品」が該当するようだ。このページに掲載されてる「香港の生活雑貨店」の写真は確かに典型的雑貨屋の店先だな。
http://ja.wikipedia.org/wiki/日用品
自分のおこずかいで自分のものを買い始めた小学生高学年の頃、ちょうどサンリオがhello KittyやPatty&Jimmyなどのキャラクター付きの文具を売り始めている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/サンリオ
カラー6本入キャップや小さい芯が重なったロケットペンシル、匂いがついた派手な色の全然消えない消しゴムは街の文具屋にあって、かわいくて子供心に性能には期待してなかったけど、欲しかった。サンリオはもうちょっとガーリィでお洒落っぽい、缶ペンケースやシャーペンとか。それでも姉がいて感覚がややませていた私はあまり買わなかったですけどね。使うものという大義があるし、玩具とも違う直接的な物欲をそそるのが新鮮だった。それまで目に触れていた台所やお風呂場のプラスチックと異なる、キラキラカラフルで繊細なプラスチック。駄菓子屋に行くのは親は禁止していたが近所のサンリオショップに女子2、3人で行ってちっさいクリップやペンを買うのが楽しいなあと思った。あの頃が「キャラクター」や「ブランド」のハシリだったのか。
中高生になって、子供っぽいサンリオから離れ(当時の子供は脱子供したがっていたのだ)スヌーピーや"again"という黒地にワンポイントで樹のイラストが付いてる(今はネットで探しても出てこないが当時そこそこ広まった)で文房具を揃えていたように覚えている。
おそらくその頃80年代前半に神戸高架下に文化屋雑貨店が開店したのだろう、それまでは高架下は怪しげで東側の服地屋区画以外は女子高生がうろうろしにくいところだった。当時一気にサブカルな店が増えた気がする。
ananの誌面を見ると、ほぼ毎号小物のどれかに「文化屋雑貨店」と書いてある、スタイリストが何かぴりっと効かせたいときに使っている。チープシック(安カワとは言わない)なシャネルもどきのツイードスーツに合わせたパールのロングネックレス、和柄ヤシ柄じゃないレトロテイストのアロハは文化屋。神戸の文化屋は洋服(親がけったいと言いそうな派手柄がコラージュされたTシャツなど)も靴(厚ゴム底もあれば中国の黒い上履きもあった)もアクセサリーも食器も文具もウズタカくごっちゃりと棚を埋めていた。どっかから買ってきたキッチュな変な物体とか。行くだけで平凡じゃない人になった気がした。とはいえ当時でも商品全体の味が濃いなーと感じていた。全身文化屋にならないように、看板商品やきいちのぬりえネタは買わなかったし、キャラクター色の少ないセルロイドの筆箱とか使ったり、「大中」の薄味中国グッズと混ぜたり。それでもおそらく当時の私を知っている人は両親を含め「文化屋好きの女」と思っているだろう。
そういえばあの頃は「ビックリハウス」「宝島」も全盛期だったな。中島らもの「かまぼこ新聞」、投稿でできた誌面や内輪受けなライターの記事やてきとーに描かれたイラストとかに触れたのはこれが最初でなかろうか。テレビのバラエティよりもFMラジオに傾倒していくし、サブカルのハシリですね。
結局大学の途中、プロダクトデザイン専攻の授業が始まる頃には私は文化屋卒業を果たしていたと思う。テイストが濃い分、停滞していると感じてきたのだ。結局それは店主の長谷川さんの好みだったし、目利きと見せ方が他にないオリジナリティだったので今まで続いていた。すごいねホネのあるキッチュ。それでいておそらくその後の雑貨デザイン、仕入れ、商品開発、販売のベースになることを思うがままやっていたのだ。
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その頃には代官山あたりに温故知新やハリウッドランチマーケット、シャビージェンティール、FOBCOOPなど「こなれた海外テイスト」なショップができはじめ、神戸でもJUNKSHOPの店長と友達になって古着古道具が好きになり、one wayやshubbydobbyに海外文具を買いに行き、ACTUSで買い物上手気分になり、オトナなんだからね、というところでそっちに興味がシフトしていった。afternoon teaや輸入食器のショップも増えた、私もジノリのデミタスとか買った。イタリア旅行してaressiを買ったり地元の業務用食器買ったり。ハンズで売ってるヨット用の金具の転用やデパートの陶器セールも覗いたり。好きだったんですね。
http://www.skipskipskip.co.jp/
http://www.hrm.co.jp/
http://www.fobcoop.jp/
http://monobito.com/212
http://www.feel-kobe.jp/shopping/spot/?sid=419
http://www.shooby-dooby.jp/shoobydooby.html
http://www.afternoon-tea.net/
http://www.alessi.jp/
久しぶりにWebで見るとなくなったお店もあり、いろいろ変化があったのね。
IKEAの日本再進出が2005年、FRYING TIGERが2013年。久しぶりに元気いいプラスチック製品を見るような。なんだー女子ってやっぱりこういうの好きなのね。それにしても引出しのノブの思いっきりカワイイのを売るとは鋭い、一人暮らし女子なら是非やってみたい。
hayはこれから進出するのかしら、安カワでないインテリア全般の発色の良いパステルトーンときちんとしたフォルムがワンランク上。
http://www.ikea.com/jp/ja/
http://www.flyingtiger.jp/
http://hay.dk/
それにしてもたかが日用品なら無印良品で十分なところ、こだわり、思い入れ、なんとなく好きとか、下手したら自分の生き方を投影しかねない。
デザインの可能性とも言えるんだが、人の欲ってなんなんでしょうね。雑貨/日用品/daily necessariesの語感では収まり切らない諸々。
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