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女子デザイナーの歩き方 第73回
木工キャンプ2ndステージ
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


雨予報なのに降らないけど、いつ降ってもおかしくない天気が続いております。

●旭川木工キャンプでワークショップ

3年ぶりに旭川木工キャンプに行ってきました。
http://www.mokkocamp.org/

今回はIFDA(国際家具デザインフェア)のタイミングに合わせたそうです。
http://www.ifda.jp/
http://www.ifda.jp/sanchiten/

以前、本コラムの「第26回:樹は木という材料になる」を書いた後、ご縁が続いて旭川には年1回くらい行ってます。当時は木や家具、デザイナーや職人にもおっかなびっくりで接してしまい、いろいろ教えていただいていることもぴんときてなかったかも知れない。

木工キャンプは10回シリーズの今回6回目。工芸センターのとりまとめによる、旭川の作り手と道内、東京他からデザイナーが来てキャンプ場を拠点に工場見学やワークショップをします。夜は120名ぐらいでジンギスカンなど食べます。森を歩いて樹や林業についても学びます。さらに今回はIFDA(世界的な家具コンペの入賞作展)、産地展(メーカー展示会、バイヤーや一般客も来場)、関連イベントもありました。

途中で現地の工房さんと打ち合わせしたり、興味のあるイベントに別行動したりも自己責任で可能というゆるいムードもあります。

木工学校の生徒や大学生、グラフィックデザイナー、バイヤーもいれば、以前は編集者の人が来たり、ほとんとジンギスカンを楽しみに来ている人もいたり。名古屋や広島から参加もあり、私も3年振りにいろんな人に会うのを目的にしていました。

1回目参加の人は工場見学メイン(今回は4カ所)、以前はベニヤ工場(木をカツラムキして積層している)や製材工場(皮付き毛むくじゃらの巨大な丸太がごろごろ)、小さい工房もあったのですが、今回はNCもありそうな大きめの工場ですね。

私も以前行きましたが、本当に”罰当たり、ネコに小判”状態だった気がする。工場の中は大きな音で話がしにくい、そもそも木工の工程で何をする機械が必要なのかぼんやりしている、大学の木工室にもあったなあ、単純に大きな鉄の塊の機械のかっこよさ、刃物のある職場の緊張感に圧倒された。

2回目以降はワークショップ、工芸センターでデザイナーと職人さんと相談したり、一緒に何か作ったりする。このテーマが毎年難しい、半日しかないのでなかなか本当に腹を割って話をしにくい。

ところが今年はムチャ振り級のテーマ「10~17時で、用意された松材を使って、デザイン~制作、完成まで行う」。正直事前に”これは完成しないだろう”と誰もが思っていたと思う。

1グループ6~8名、内デザイナー4名、加工できる人2名くらいのチームが3グループその場で結成。”完成しなければ面白くない、でも日曜大工みたいにすっからかんシンプルになっても面白くない”。全員に緊張感と共通の思いが共有されていく。若い女性デザイナーMさんが丸くふっくらした座面と脚を持つベンチのスケッチを描くのを、そのまま受けて職人さんが作業工程に分解していく。まっすぐな脚なら旋盤を使うけど、曲線の回転体として旋盤で加工する「ならい旋盤」が準備できてない、4面おおまかに切り出してカンナで丸めていくのか。丸棒を作ってからかんなでカタチを整えるという案もでた。Mさんが薄板に曲線を描いてサンダーでゲージを作り(サンダーで作るから谷Rがスケッチよりもかなり鈍になる、後で考えれば問題ないのだけれど、そういうのが重なって勝手にラインを変更された、とか感じてしまうのだろうな)、とりあえず旋盤で角材を円柱にすることになった。脚と座の連結は垂直で、ホゾにくさびを打って座に打ち込み、貫通させない”地獄ホゾ”にすることになった。

http://kotobank.jp/word/倣い旋盤
http://blog.itsuki.main.jp/?eid=348092

本当に“デザインと加工が同時に手探りしながら、今できることで最大のパフォーマンスを出そう”とする状況。

…と、ここまで1時間、私は別件があってこの場を離れました。そして夜。なんとキャンプ場のジンギスカン会場にちゃんと3種のスツールがあった! みんな座っている!! びっくりして参加していたYさんに聞くと、いろいろすごいコトがあったらしい。

私の見ていたチームは、あの木工旋盤の仕事人がやってきて下膨れのふっくらした脚を仕上げ、座面はメンバーみんなで手加工でゲージを当てながら、かんなをかけ、石鹸のようにつるりと丸くしてある。何より脚接合部がなめらかな谷Rでつるりとつながっているのは、”熱意に負けて”メンバーの職人さんが自宅に谷R加工用の取りに帰って、それで仕上げた、とのこと。他の2グループのも、でっかいサドルのような座に紡錘形の足が斜めに挿してあったり、2本の柱に大きな貫通孔が水平方向に開いていて、座面が通してあったり、0から7時間で仕上げた「旭川木工のど根性、意地、ネットワーク、機動力、ノリの良さ」をまざまざと見せつけられました。そしてムチャ振りってときどきすごく刺激的に、いい結果につながるもんだなあ。

来年もやるのかしら、恒例になるかしら。こんなことがしたい→こうすればできるのか、一体感、アドリブ、セッションのグルーブ感というか。職人さんの方はすごく大変だったと思う、ありがたいことです。

●静岡のワークショップ

もう1つワークショップ。104projectという静岡の建築/木工/デザイナーの野木村さん企画に参加した。
http://104project.com/

支給された細い曲げ棒のスチール脚を端材に孔を開けて挿し込み、スツールにする。厚みのある端材に深く挿すことで脚のぐらつきをなくし強度を出す、のがテーマなのですが、ちょっと「薄い板2枚でも構造作れないか」などと自分の能力オーバーなことを考えてしまい、まだ改良の余地ありです。またこれが樹種による柔らかさの差で最適の孔径が大きめ小さめがあるようだ。松は柔らかく軽い、ウォールナットは硬く重い、とか、まだまだ踏み込もうと思えば自分の知識を超えたことがたくさんある。

で、その展示会場で一般の人向けワークショップを行っていた。用意された角材を好きな長さに切って、電動ドリルで脚の孔を開けて、スチール脚を押さえ込みながら挿す。ペーパーかけて焼き印押して完成。正直見るまでは”楽しいのかなあ”と思っていたのだが、子供連れの白いサブリナパンツの似合う綺麗なお母さんが、鋸で柱ほどの角材を切る、電動ドリルで孔を開ける、紙ヤスリをかける、とても楽しそうだ。できあがったこしかけも誇らしげで嬉しそうだ。すごく原点の「作る楽しさ」を目の当たりにした。

モノを作る、というのは贅沢な学びの機会ですねえ。



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