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女子デザイナーの歩き方 第71回
プロボノデザイン2nd stage
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。



4月から高校の同窓会東京支部の書記頼まれてやってるんですが、先日会場への地図を描き起こしたら、随分喜ばれました。こういうちょっとしたことで世の中の役に立てるシーンてもっとありそうだな。

別件でメール経由で未知の人からイラスト頼まれて描いたら「知らずにプロのデザイナーさんに頼んでしまいました」と恐縮されました。いや気軽で全然いいんですよ。

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●プロボノ活動

プロボノ活動は、wikipediaによると「各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動全般」とありますね。私が所属しているのはIHO(In-House-Out:インハウスデザイナーがデザインで社会貢献)だったのですが、現在活動停止中。クリエイティブ系で有名なのはサービスグラントですね。
http://servicegrant.or.jp/

デザイナーがデザインする動機に「絵で表現して伝える、共感する」「美しいとか好きとか測れない基準で働きかける」「自分が働きかけることで世の中が魅力的になるのが嬉しい」みたいなところがあると思うのだ。もうちょっとこれ見た目どうにかしたら売れるんじゃないの? と思うところをやってみる、ということ。

一方デザイナーに相談してデザインをどうにかすることが遠いことのように思っている、小さい(非営利)団体の作り手、送り手も多い。どう喋ったらいいのか分からないとか、翻弄されたり好き勝手されたりどうなるか分からんと思われてるんかね。

プロボノ、ボランティアというと無償の愛っぽいが、他の人はどうか知らんが、私はそこまで禁欲的ではない。会社でできないことをやってみる、仕事では出会わない人や少人数なシチュエーションでデザインしてみる、自分の仕事のやり方は社外でも有効なのか試したい、仕事のやり方の他の方法があるんじゃないか…などの実験やガス抜き的な欲もあるわけです。愛だからこそやりたいことへの執着もある、というところもある。
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●世田谷発のモノ作りブランド

futacolabという世田谷発のモノ作りのブランドに関わって2年余り。今は福祉作業所との恊働で焼き菓子やティータイムの布小物の商品開発に関わるデザインをしています。
http://www.futacolab.jp/#id1

福祉作業所の作業には、リハビリの要素もあるが、工賃アップという目標もある。

ブランドのネーミングとロゴは予め主催の磯村さんが作っていたのだけれど、「世田谷」のイメージ:アクティブでお洒落で生活を楽しむマダム×小規模で手作りの福祉作業所の仕事、を掛け合わせたイメージ=「シックなモノトーン×ざくざくした手触り」と、割とすんなりデザイナー間ではイメージ共有ができました。冷たくなりすぎず、手芸ぽい暖かさが強くなりすぎないように。

コンセプト→イメージ→デザインテイストへのつながり、会社でこういう細かいデザインの合わせ込みをやろうとすると「事業部、営業、設計に分かりやすい言葉に置き換えたり、ストーリー構築や資料を作る手間」というのが掛かるのだ。しかし同じ目的な集まってる少人数なら"なんとなく"分かれば作業が進められるし、その分自分の気持ちの執着も硬くなりすぎないので、他メンバーのアイデアをすんなりリミックスや軌道修正できたりしやすい。かなりあけすけな打ち合わせになるのだが。

当初はモノトーンで抑えがちなブランドイメージだったが、以前世田谷マダムにヒヤリングしたときにイラストカードをつけたら「あらこれかわいい!!」とモノトーンよりもキャッチーだった。そこで福祉作業所の利用者さんのイラスト(これがまた自分では描けない天真爛漫)をアレンジしたカードをつけた新製品で、カラフルめに軌道修正、通年販売を目指す。

商品開発も既存の作業所商品の工程を起点にパティシエのレシピを持ち込んだり、色や素材感をコントロールしてタグをつけたり(間を取り持つ作業所のスタッフさんの仕事量は相当なもの)、利用者さんのなかには「手漉き和紙の平面を出すマエストロ」「スウェーデン刺繍の達人」「イラレが使える印刷が得意な人」とか得意技、個性、やりがいみたいなものも垣間見える。


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●コンセプトを伝えるTシャツデザイン

IHOで知り合ったNPO法人モンキーマジックとのお付き合いも3年を超えた。
http://www.monkeymagic.or.jp/

当初は視覚障害者メインのクライミング振興を目的としていたが、今は月1回や地方でのジムクライミングセッションでも聴覚障害や下肢障害のクライマーも参加して、広義の「ハンディキャッパー」にもフリークライミングを通して、"人々の可能性を大きく広げる"ことを目的、と変化している。

クライミングがファッションやライフスタイルと結びつきやすいスポーツだったので、活動資金を集めて、NPOの存在を知ってもらうためのアイテムにオリジナルTシャツを早い時期から活用している。
https://www.monkeymagic.or.jp/order/support-goods/input

大きなメーカーとダブルブランドしているが、モンキーマジック自体は余裕のない小さい団体なので、「毎年Tシャツが確実に評判いい、売れることが重要」であるし、ダブルブランド相手からも商品としてのデザインクオリティが要求される。幸い初期段階でスローガンやブランドロゴ、モンキーシルエットなど、いい素材パーツを創っていた。主宰の小林さんも視覚障害者になるまではアウトドアブランドで働いていたせいか、ビジネスやデザインの言葉の語彙やイメージが豊富だし、客観的に経営を捉えて戦略をいろいろ自分で提案してくる。クライマー同士イメージ共有もしやすい。

単純に流行を毎年追うのでなく、Tシャツをきっかけに団体のコンセプトやストーリーを知ってもらわなければならんし(タグに説明あり)、まず手に取ってもらうには目を惹くオリジナリティやシンボル、楽しさが要求される。飽きないように、毎年楽しみにしてもらえるのが理想、そのために幅の狭いイメージに捕われないように少しずつイメージを広げるのも大事。

2014年度のTシャツデザインに続き、来年は設立10年目、アイデア出しを先日悶々とやってました。「シンプル」「大人」「オーセンティック」「コンセプトを体現する」という人によってイメージが異なりそうなキーワードに対して、自分の他メンバーのアイデアをどんどん視覚化。大変だけど、これやるのはデザイナーの仕事ですから。

自分たちが着たいの作りたいよね、とハードルは上がっていく。

社会貢献てもっとじっくりしたものがと思っていたが、誰かに思いを届ける=売れるモノを作る、結構ガツガツしたデザイン作業になりますな。

 


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