女子デザイナーの歩き方 第125回(2018年11月3日掲載)
2in1パソコンがやってきた!
moviti/片山 典子
[プロフィール] 1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。2010年独立、3D CADでプラスチック製品から布製品、ソファやモダン仏壇の木製品、クラフト系などネーミングやロゴ込みでいろいろ手がけている。趣味はフリークライミングとバスケットボール、旅行。
http://moviti.com/moviti_nori
このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。
気候に翻弄された夏が終わり秋ですね。
前号でGoogleHomeを手に入れたのはパソコンを9年ぶりに買い替えたおまけでした。
前機種はなんとなく買った重たいDELL。思いがけず使い切った。起動しなくなったのではなく、いちいち考え込むようになり、あーさすがにかわいそうかなあ。この数年買い替えたいけど何がいいかなー、とタイミングをうかがっていた。
私は文章を考えるときはキーボード派、絵も紙に描いてスキャンして着色とかライブトレースしていたのでタブレットはあまり興味を持てなかった。ふと、ある仕事でペンタブで描いたら絵が変わるかなと思い立ち、それなら2in1どうよ、と友人に勧められた。なるほど今ならどんな使い心地か気になるね。
価格と画面サイズで調べていたらThinkPadにたどり着き、ThinkPad Yoga X1に決めた。米沢生産モデルなんて牛肉みたいな。
https://www.lenovo.com/jp/ja/jpad/notebooks/thinkpad/x-series/ThinkPad-X1-Yoga-3rd-Gen/p/22TP2TXX13Y
で、新宿Yドバシに夫婦総出で実物を見にいった。夫は滅多に買えないアイテムなのでウキウキしている。NECのおじさん出て来て、今ならいろいろカスタマイズできるというので、CPUとグラフィックボード、SSD上乗せしてHDRにして、LTEつけて20万円切りましたよ。組み立ては米沢ではなく海外なので2週間ほどかかった。画面サイズもキータッチも確認できたし、実店舗に行ってよかった。
やっぱりThinkPadは赤と黒、ピン角フラットがかっこいい。Lenovoがデザインアイデンティティを変えずに進化させてるのも偉い、買ったブランドの価値が分かってるね。リチャード・サッパーのデザイン。
https://www.lenovojp.com/business/special/004/
薄くて軽すぎて、宅配便が来たとき何が届いたのか一瞬分からなかった。薄く見せるデザインしなくても厚さはディスプレイ側6mmキーボード側10mm、でもUSB2個、ナノsimとカードスロットが付いてる、往年の極薄デジカメよりもギチギチの設計? キャビ合わせや端子穴の隙間も細くてピンとしてる。スーパーマグネシウム合金だそうな。
ディスプレイのヒンジがぎゅーっと逆折れするとキーボードがフラットになりタブレットになる。タブレットペンが本体に差し込まれて充電されてる。電源入れたらCortanaの音声ガイドでWi-Fiつないだらなんとなく使える状態になった。
ThinkPadの赤いトラックポイント、タッチパッド、指タッチ、ペンタッチが使えるんだが流石に多いのでとりあえずタッチパッドをOFF。マウスなしで慣れよう。ブラウザスクロールは思わず指で画面を直接タッチ、ズームも指2本、キー押し操作もATM機のようだ。
今回のイラストはPhotoshop&ペンタブモードで描いてみた。切り替えるとショートカット使えなくて戸惑うが、だんだんゆったり気分で慣れてくる。 Illustratorはキーボードとペン併用、さらに無意識のマウスさばきを改めてペンに置き換えないとならない、shiftやCtrl、マウス右キーを使うコマンド、複数選択しながらズームとか今はぎこちなくて情けない。ダイレクト選択がペン先で掴みにくい。イラレと使用感が混乱するRhinocerocはさらに練習が必要、がんばるわ。
机の上のパソコンに向かう姿勢で使わずに、胡坐で膝の上に置くと、安定するし高解像度なモニタも見やすい距離になり親近感が増して嬉しくなってきた。ソファーが似合うやつなのか。マウスなしだから机に縛られずに肩こりしない姿勢かも。ヒンジを膝に当ててV字に置くとキーボードもペンも使える。
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初めてパソコンを本格的に触ったのは就職後(大学には研究室に数台しかなくて生徒は触れなかった、ワープロ使ってた)、コピペで文章を入れ替えてブラッシュアップしたり、undoは消しゴム跡もないし、E-MailはFaxより手軽に複数の宛先に送れるし、なんとまあ素晴らしいなと思った。
マウスで頭の中のモヤモヤした考えをキビキビといじってまとめていく新しい感覚。右クリックでできることが増えたり、サイズを自在に変えて作りこむ。30年前のことだ。一見パソコンの外見はあの頃とそんなに変わらない、ヒンジで開け閉めするモニターとキーボード。でも触り心地は軽く薄くスムースになった。
今やスマートスピーカー然り、キーがない、タッチや音声操作がスマホ以外に生活に溶けこんできた。今どきの子供は絵本のページを撫でてスクロールさせようとするそうだ。自分もタッチパネル以来、誤操作/誤動作に寛容になり我慢強くなった気がするし、デジタル機器との関係がカチカチからふわふわになってきてるような(とはいえキーボードのきちきち仕事が進む感じは好きなので、キーボードは残ってほしい)。
仕事の道具っぽくないパソコンで考える仕事は、ちょっとゆとりとか遊びとか柔らかさが匂うといいなあと思う。
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