女子デザイナーの歩き方 第106回(2017年4月4日掲載)
プロボノは一歩踏み込め
moviti/片山 典子
[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com
このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。
久しぶりに「すみのわ」のデザイナー、關真由美さんに会ったので、活動を聞いてきた。GoodJobアワードおめでとうございます。可愛い金魚や花火のアクセサリーがどうやって作られているのか聞いてみた。
すみのわ
http://sumida-cc.com/portfolio/suminowa/
Good Job!
http://goodjobproject.com/
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私の学生時代(バブル期)はボランティア活動もワークショップもBOPやプロボノ(専門家によるボランティア活動)という言葉もなく(おそらく阪神大震災以前/以後で変わった?)、デザイン=仕事、自己実現手段だった。今となってはそれって偏ってるかも、金儲けの手段/それ以外のデザインの社会貢献、をやってみようと思って参加したのがフタコラボとインハウスアウト。
フタコラボ
http://www.futacolab.jp/about/mission.html
インハウスアウト(活動休止中)
http://www.monkeymagic.or.jp/monkey-people/detail/title/people2
大義は”福祉就労施設で働く人の月給を上げる”なのだが、個人的な思いは繊細で気張らない手作業で作られているのにイマイチパッとしないので、ちょっとデザインしたらグッと魅力的な商品ができるんじゃないか。モノ作りのモチベーションが上がると嬉しいなあ。社会とのつながりや広がりのきっかけになればいいよね、くらいの動機。
各作業所の既存の商品を見ながら、その技術応用でできそうなモノを提案するのだが、実は材料購入やスタッフのフォローが多すぎて逆に手間がかかったり、可愛いのが作れても販路がないので売り上げが伸びない。販路開拓しなくてもいいと思う一方、自分達の商品やブランドにプライドもあるような。利用者さん(通ってくる障がい者)と直接会えない(ご家族の心境もあるそうで)。誰でも作れるのが良いのかと思う一方、個性を生かした個々の仕事の方がクオリティが上がるのではないか。好評になりすぎるとまとまった数をコンスタントに作るのが難しいなど、いろいろと配慮しなくてはならないことが多く、押し付けになっても心苦しいしなあ。
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そもそも「すみのわ」は、すみだクリエイターズクラブに墨田区役所障害者福祉課が”作業所の商品のデザインレベルアップ”を依頼してきたのが発端だそう。墨田区って伝統工芸の工房や町工場がたくさんあるイメージがあって、デザイン意識高そう、デザインで活性化することが身近なのかな。2年目から關さんは参加。
すみだクリエイターズクラブ
http://sumida-cc.com/
できるだけ利用者さんが自分で判断して作るように仕向ける。所内ワークショップを実施して”この仕事やってみたい”人を募った上で商品のレベルアップを図る。
金魚の場合、尻尾の形を切る人、胴体を作る人、胴体と尻尾を組み合わせる人、の3つ分業。金魚の胴体と尻尾の色合わせがちぐはぐにならないように、カラーリングや尻尾の形を利用者さん各自で考えて作るように指導したそうだ。一方でコスト計算など商品としての諸々を決めていく。墨田区の工場から使わなくなった布サンプル帳や残糸からさまざまな布見本を使って1点もののアクセサリーを作っている。捨てるはずの廃材を使うっていいなあ。
そのために”直接利用者さんと話ができる作業所さんとしか組まない”と最初に言い切ったそうだ。おお! なんか公共の施設にそういう強い意思を通すのやっぱり大事だったのか。
作業所にいるスタッフさんは利用者さんのお世話をする人であって、商品開発やビジネスをする人ではない。賃金アップを課せられても対応できない。任せていても続かない。ということで關さんは月1~2回作業所に行って工程チェックをしているそうだ。だから商品のクオリティがキープできているし、信頼関係も厚くなっていく。販路も従来のルートだけでなく、ロフトの浴衣のイベントでポップアップショップを実現したり。
http://kurumiru.metro.tokyo.jp/
https://www.facebook.com/suminowa
さらに所外に出て、小物作りのワークショップで障がい者の人がヘルプするとのこと。月1回のMUJI有楽町でのイベントを見学させてもらった。
MUJIワークショップ
https://www.muji.com/jp/events/5915/
親子でチュールを使った髪飾りを、1時間で好きな色を選び、切って巻いて縛って整えて作る。利用者さんも参加者が作業がしやすいように手を貸したり手順を教えたり。女の子とお母さん、夢中で作って早速髪に飾って大満足。「ありがとー」とみんなで手を振ってにこやかに解散。外出して普段会わない人と話をして一緒に作業をすること自体がとてもいい刺激になるそうだ。何度か参加している人もいて、廃材を使っていることも共感しているとか。
関西弁でチャキチャキと。従来のやり方に従いすぎず、自分の知り合いのネットワークを活かして上手に分業して活動している、きっぱりした關さんであった。理想としてはやりたい作業に応じてさまざまな特徴ある作業所を選べるとか、利用者さんの特性を生かして専門性の高い技術を生かしたオリジナル製品を作るとか、そういうのがゴールなんだろうなあ。
http://la-mano.seesaa.net/category/6160564-1.html
http://cocowine.com/
どんな将来をイメージして仕事を作りビジネスとして成り立ち、社会に組み込むか。他にもこういう大きな活動もあります。仕事やビジネスの捉え方が異なっていろいろ見て取れる。
サービスグラント
http://servicegrant.or.jp/
イクォルト
http://h-concept.jp/design/equalto/index.html
CCP(フェリシモ)
http://www.felissimo.co.jp/ccp/
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