pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム

モバイルデザイン考 第97回
満を持してワイヤレス化されたプロ仕様キーボード
PFU「HHKB Professional BT」

こだわり抜いたパーツと設計で、究極のキータッチと耐久性を実現したキーボードシリーズに、スマートデバイスにも気軽につなげるBluetoothバージョンがリリースされた。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲HHKB Professional BTのパッケージ。(クリックで拡大)

●PFUによる究極のキーボード

HHKBことHappy Hacking Keyboardといえば、ドキュメントスキャナのScanSnapのメーカーとしても知られるPFUが、こだわり抜いたパーツと設計で、究極のキータッチと耐久性を実現したキーボードシリーズだ。

ただし、これまでは主にコンピュータとケーブル接続して利用するモデルのみが販売され、スマートデバイスにも気軽につなげるBluetoothバージョンの登場が待たれていた。

このHHKB Professional BTは、ケーブル接続タイプであるHHKB Professional 2のワイヤレス版という位置付けで、基本となる筐体デザインやキー配列のバリエーションもHHKB Professional 2に準じている。

具体的には、製品カラーは墨(黒ではなく、明度を落とした灰色的なつや消しのカラー)のみで、キー配列は、英語、日本語、英語無刻印(完全にタッチタイピング専用のマニアックなモデル)の3種類が用意される。日本語配列モデル以外は矢印キーが割愛されているのも、HHKB Professional 2と同様の玄人好みの設計だ。

また、iOSデバイス接続時のみ、日本語配列モデルでも英語配列で扱われるが、これはiOS自体の制約によるものである。

販売は、PFUの直販(PFUダイレクト およびAmazonショップ)でのみ行われ、価格は27,500円(税別)となっている。

photo
◀これは日本語モデルなので筐体の右端手前に矢印キーが備わっている。キートップに刻印のあるモデルでも、あえて目立たせない文字色となっていて、虚飾を配したという言葉が似合う質実剛健系のデザインだ。(クリックで拡大)

キートップ面は人間工学的に優れた段差(ステップ)が弧を描くように配されたシリンドリカル・ステップスカルプチャ構造を採用。押し込みの初期に若干の抵抗を持たせ、やや浅めのキーストローク(とはいえ、トレンドのアイソレーテッドキーボードなどに比べると深め)で、キーの戻りが素早い味付けも継承され、既存のHHKBから乗り換えても違和感がないように考慮されている。

ただし、ワイヤレス化に伴うコストアップを最小に抑えるため、"Type-S"と呼ばれる静音仕様(追加コストが、HHKB Professional 2とHHKB Professional BTとの差額に等しい)にはなっていないので、その点を気にするユーザーがあるかもしれない。今後のユーザーからの要望次第では、"Type-S"バージョンやホワイトカラーバージョンの追加も検討される可能性はあるものの、当面は、この仕様のみとなる。



photo
◀キートップ面は、指の腹に合わせた円筒(シリンダー)状の窪みを持ち、横から見ると指の動き方に沿った段差(ステップ)が弧を描くように配されたシリンドリカル・ステップスカルプチャ構造である。(クリックで拡大)  

電池ボックス部分の拡張により、HHKB Professional 2よりも奥行きが10mm大きいが、それでも294×120×40mmの本体サイズは十分にコンパクトで、電池を除く重量増も0(英語配列および無刻印モデル。USBハブ機能を割愛して相殺)~20g(元々USBハブ機能のない日本語配列モデル)と最小限に留められた。


photo
◀背面には電源/Bluetoothペアリングスイッチ、電池ボックス、micro USB給電端子が並ぶ。基本的には、HHKB Professional 2の筐体をそのまま活かしつつ、半円筒形の電池ボックスを付加する最小限の拡張を行った形状といえる。(クリックで拡大) photo ◀ちなみに、この半円筒形部分は、キーボードを持ち歩く際などに、ちょうど良い指がかりとしても利用できる。(クリックで拡大)

FnFnキー+Qキーで始まるペアリングモードをはじめ、キーボードの接続や電池消費の状態は、"-/="キーの斜め後ろ右あたりに設けられたインジケーターランプで知ることができる。

ホストデバイスは4台までペアリングしておけるが、明示的な切り替えはできず、直近のペアリング機器から順次自動接続される仕組みになっている。この点は、複数のデバイスと組み合わせて使いたいというユーザーには少々不便で、接続不要なデバイスのBluetooth機能を一時的にオフするなどの対処が必要だ。


photo
◀電源/Bluetoothペアリングスイッチは、キーボード側からの手探りでも押しやすくデザインされ、上面にインジケーターランプが備わる。たとえば、接続状態では消灯、ペアリングモードでは青の点滅、接続待機時には青の点灯、電池残量が少なくなるとオレンジの点滅となる。(クリックで拡大)

普段は目につかないものの、電池ボックスのカバーは、デザイン的にやや凝っていて、ラッチ機能を最小限のディテール設計で実現しようとした跡が感じられる。個人的には、あえて主張しない筐体デザインの中で、唯一、控えめながらデザイナーの主張が込められている印象があり、面白いと思った。

photo
◀電池ボックスのカバーは樹脂の撓みを利用して、シンプルかつエレガントなラッチの構造が実現されている。(クリックで拡大)

バッテリー駆動時間は、アルカリ化電池使用時で約3ヶ月とされるが、万が一の電池切れに備えて、HHKB Professional BTにはmicro USB端子も備わっている。これはあくまでも給電用で、信号は常にBluetooth経由でやり取りされる仕様だ。しかし、どんなときでもキー入力ができない事態を避けようとする気遣いは、この製品の性格を物語っている。

photo
◀電池が切れ、しかも手近にストックがない場合に備えて、USB給電が行えるようにmicro USB端子も備わっている(信号線は通っていないので、あくまでも信号のやりとりはBluetooth経由)。他のワイヤレスキーボードでは、なかなか見られない配慮だ。クリックで拡大)    

底面には、Happy Hacking Keyboardではおなじみの、ユーザーの好みに合わせたハード設定のためのDIPスイッチとティルト角度調整のための折りたたみ脚が備わっている。

特に脚は、ユニークな設計によって、2段式のしっかりした高さ調整機能がコンパクトにまとめられたデザインだ。


photo
◀底面もシンプルな作りで、四隅に滑り止めのラバー系素材のシートが付く。貼られているラベルは、Happy Hacking Keyboardの伝統ともいえるハード設定のためのDIPスイッチの説明チャートだ。(クリックで拡大) photo ◀DIPスイッチは、小さなカバーの中に隠れており、WindowsモードとMacモードの切り替えのほか、CtrlキーとFnキーへの機能割り当て変更、BSキーの役割設定などが行える。設定頻度は少ないものの、カバーはmicro USB端子のように本体とつながった状態で開くようになっていても良かったのではと感じる。(クリックで拡大)

photo
◀HHKB Professional 2から継承された巧妙なティルト角度の調整機構。高さの異なる2種類の脚が、重なるように組み込まれている。(クリックで拡大) photo ◀ティルト角度は、このように3段階に調整できる。フラットな状態でもキートップ面には傾斜が付いているが、1つめの脚を起こすとわずかに持ち上がり、2つめの脚を起こすと少し多めに傾くようになっている。(クリックで拡大)

最近では、薄型ノートPCのアイソレーテッドキーボードや、タブレットデバイスなどのタッチ式ソフトキーボードなど、ストロークが浅い、あるいはまったくないキー入力に慣れたユーザーも多くなっているが、選択肢があるということも重要だ。入力頻度や文章量にもよるが、今のキータッチなどに不満があるなら、機会を見つけて最高のテキスト入力環境を目指したキーボードに触れてみるのも有効な解決法といえるだろう。



Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved