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コラム

モバイルデザイン考 第96回
沸騰寸前のインドデザイン見聞録(後編)

インドのデリー/ニューデリーとムンバイ(旧ボンベイ)で、アカデミック系、ビジネス系のカンファレンスや、カルチャー系のツアーに参加。現在のインドのダイナミズムを目の当たりにすることができた。今回は、前編に引き続き、インドデザイン見聞録の後編をお届けしたい。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲インドのリーダーシップカンファレンスから。(クリックで拡大)

●まだまだ遠い日本とインド

前編で、インドに対する日本企業の関心が薄いと書いたが、実際には外務省の資料(http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000020898.pdf)を見ると、2015年10月の時点で1,229社が進出し、拠点も4,417箇所に及んでいる。

しかし、インドにとっての主要貿易国の中で日本は2.1%(貿易額)で15位を占めるのみで、逆に日本の主要貿易国の中でインドはわずか1.0%(同)で23位に過ぎない(ちなみに、後者の1位は20.3%の中国で、2位は13.1%のアメリカである)。

日本からの直接投資額も、対中は約1兆628億円であるのに対し、対インドは約2,193億円と大幅に少ない。その結果、外務省としても、日印間の経済関係は拡大傾向だがそれぞれの経済規模から考えると未だ限定的であると結論づけているのが現状だ。

そんな中で、ソフトバンクのインドに対する投資推進はとても目を引く動きといえる。同社はすでにインド国内におけるUber対抗のタクシー配車サービスOLAや、ホテルのモバイル予約サービスOYO Roomsに巨額の投資を行っており、向こう10年間で100億ドル規模の投資を行うことを公表している。

孫CEOは、今年1月にニューデリーで開かれたスタートアップ・カンファレンスでも、インドへの投資を真剣に加速させていく旨の発言をしており、その動向が注目される。

また、自動車メーカーのスズキも、インドの合弁企業マルチ・スズキで製造した新型バレーノを日本国内で販売するなど、水準以上の品質と製造コストの安さを利用した世界戦略を進めている。

…といったようなことも踏まえつつ、後編を読み進めていただきたい。

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◀ムンバイ中心部にそびえ立つ特異なフォルムの高層建築(中央のガラス窓の多いビル。左手のベランダの多い建物は別物件)は、インドの一大コングロマリット、リライアンス・ADA・グループのオーナー、アニル・アンバニ氏の「自宅」。リライアンスは、金融・通信・電力・インフラ・メディア・不動産・ヘルスケアなど様々な分野をカバーするマンモス企業であり、インドで2番目の大富豪とされるアンバニ氏のこの「家」は、総工費840億円の27階建て(一般的な天井高のビルでは60階建てに相当)。(クリックで拡大) photo ◀インドでは、いわゆるパーソナルコンピュータの普及が本格化する前にスマートフォンの時代が到来したため、デジタル情報インフラのモバイル化が進んでいる。オンラインバンキングも然りだが、その割にEコマースが発展途上であるため、アマゾンもWebブラウザを介したサービスよりもモバイルアプリを中心としたアピールを展開しており、こうしたビルボードをあちこちで見かけた。(クリックで拡大)

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◀もちろん、iPhoneの注力マーケットを中国からインドにシフトすることを打ち出したアップルも、「iPhone 6sで撮影」キャンペーンを繰り広げている。ムンバイの街中ではビルボード1基分、中心分からやや外れた街道筋では、このような3連スペースでの広告を展開中だ(実際の広告費用は、インド国内のキャリアであるエアテルやボーダフォンと共に負担しているものと思われる)。(クリックで拡大) photo ◀インドの現代美術を専門に扱う「シムローザ・アートギャラリー」の女性オーナーと談笑しているのは、イリノイ工科大学インスティチュート・オブ・デザイン学部長のパトリック・ウィットニー氏(左)。氏は、混沌が常態化し、それに対処する方法を身につけているインド人こそが、さまざまな価値観や文化的背景を持つ相手にビジネスを行う必要のあるインターネットや世界規模のマーケットをリードしうる存在と考えている。(クリックで拡大)

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◀インドの財閥で、家電製品から冷凍食品まで幅広く手がけるゴドレジのイノベーションセンターには、食堂を兼ねたミーティングスペースが用意され、討議の内容やグループの人数などによって、テーマや雰囲気が異なる区画を利用できるようになっている。また、靴を脱いでリラックスしてディスカッションが行えるエリアもある。同社の製品はインド国内で高い信頼感を得ており、たとえば冷蔵庫の場合には、外国製品より15%程度高い価格設定でも選ばれるケースが多いという。(クリックで拡大) photo ◀現政府のモディ政権が推進する「メイク・イン・インディア」イニシアチブは、インドを世界の企業の製造拠点にしていこうとする一大プロジェクト。ムンバイの新開発エリアに「メイク・イン・インディア・センター」を設立したり、ムンバイ空港のデジタルサイネージでも利用客にプロジェクト名をアピールしていた。(クリックで拡大)

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◀ご存知のように、これまでそのポジションを担ってきた中国は賃金の上昇などでメリットが薄くなりつつあるわけだが、iPhoneの製造委託やシャープの救済に名乗りを上げたことで知られる台湾のホンハイ/フォックスコンも、インド国内に工場を建設するなど、今後を睨んだ動きに出ている。(クリックで拡大) photo ◀そんな国内製造業やメイカーズ系の会社による展示会+カンファレンスである「メイク・イン・インディア・ウィーク」の会場に向かう若者たちが背負うバックパックには、facebookや、インド版LineともいえるwhatsAPPなど、IT系のロゴがプリントされていた。(クリックで拡大)

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◀「メイク・イン・インディア・ウィーク」会場内の重機コーナーでは、民族音楽調の生演奏に合わせて、JCBのバックホー・ローダーなどがダイナミックなパフォーマンスを繰り広げていた。JCBはイギリスの企業だが、インド国内に5箇所の製造拠点を持っている。(クリックで拡大) photo ◀「メイク・イン・インディア・センター」の展示会場のグッドザイン製品コーナーで見かけた、米エバレディブランドのバッテリーライト。インド人デザイナーが手がけたこの製品は、手に持ってLED懐中電灯として使う他に、立てた状態でデスクライト的にも利用することができる。(クリックで拡大)

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◀インド工科大学のブースに展示されていた盲人用のインテリジェントな杖「スマートケーン」(杖自体ではなく、グリップ部分に取り付けられているものが実際のデバイス)。障害物の有無の判定に物理的な接触を利用する通常の杖の有効範囲は、膝から下の高さで、足元から50センチ程度先に留まるが、この製品は、上から吊り下げられていたり横から突き出した障害物も、超音波を利用して感知してユーザーに音で知らせてくれる。ちなみに、これは試作品ではなく、実際に市販されているものだ。クリックで拡大) photo ◀全人口(2011年の国勢調査時点で12億1,000万人)の半分を占める若者たちが就労年齢層を急速に拡大し、国や自治体が技能訓練にも力を入れているとアピールし、製造を請け負うための人的リソースが整っていることを謳ったパネル。現在のインドには、能力があっても、それに見合う仕事が見つからないという問題が見られるが、さまざまな製品の製造委託や工場建設が増えることで、それが解消に向かうという期待がある。(クリックで拡大)

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◀ムンバイ市内のとある公園の一角に設けられていた(たぶん篤志家による)学習スペース。屋根だけで窓も冷暖房もないような場所だが、朝の6時過ぎから夜中近くまで、熱心な学生たちがノートPCや参考書、ノートなどを持ち込んで勉強していた。自宅で自習するよりも、同じ志の者同士で情報交換もできるので、ここに集まるのだろう。おそらく時間帯による入れ替わりはあると思うものの、熱心な学生たちは学びに対する意欲が人一倍あるという印象を受けた。(クリックで拡大) photo ◀比較的貧しい地域の小学校でも、コンピュータが導入され、プレゼンテーション作成などの実習が行われている(左側のテーブル)。また、コンピュータ操作は初めてという子どもたちは、お絵描きやゲームライクな練習ソフトを使ってマウス操作の練習を行っていた(同じく右側のテーブル)。(クリックで拡大)

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◀メイカーズ・アサイラムは、ニューデリーとムンバイで展開されているインド流のファブカフェ。一般的なインドのビルは老朽化が目立ち、ここも例外ではないが、そんな中で最新のビジネスやデザイン作業が行われていたりするので、外観では判断できない。通りを挟んだ向かいの建物には、世界有数の3Dプリントサービスでニューヨークに本社のあるシェイプウェイズのアウトソーシング先で、金属ベースの3Dプリンティング業務を受注し、世界各地にシッピングしている別の会社が入っているとのことだった。(クリックで拡大) photo ◀おまけ的に、この画像は夜中近くにムンバイ市内を歩いていて出会った風景。日本やアメリカならばトイザらスで売られているような電動の自動車のオモチャを改造して電飾をつけ、親子で公道レース? をして楽しんでいた。上の右奥には、こんな時間でも営業中の馬車タクシーが写っている(これも、まばゆいばかりの電飾)。数年内には規制がかかりそうなこうした遊びからも、あるもので楽しもうとするインドの人たちの前向きな姿勢が感じられた。(クリックで拡大)



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