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コラム

モバイルデザイン考 第95回
沸騰寸前のインドデザイン見聞録(前編)

インドのデリー/ニューデリーとムンバイ(旧ボンベイ)で、アカデミック系、ビジネス系のカンファレンスや、カルチャー系のツアーに参加。現在のインドのダイナミズムを目の当たりにすることができた。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

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▲インドのリーダーシップカンファレンスから。(クリックで拡大)

●変貌するインド

2月の上旬から半ばにかけて、インドのデリー/ニューデリーとムンバイ(旧ボンベイ)に出かけてきた。昨年の同時期に次いで2度目となるこの取材旅行では、日本とインドの架け橋となるべく尽力されている(株)ムーンライトウェイヴ(http://moonlightwave.com)にコーディネートしていただき、アカデミック系、ビジネス系のカンファレンスや、カルチャー系のツアーに参加して、現在のインドのダイナミズムを目の当たりにすることができた。

そうして感じたのは、インドがこれまでのステレオタイプ的な見方をされる国から大きく変貌しつつある事実と、それとは対照的な日本企業や日本人のインドへの関心の低さである。

たとえば、今も日本人のインド感は宗教やヨガ、カレーなどの文化的遺産面に偏りがちで、多くの人々の頭の中ではタージマハルやインド式計算法の国としてのイメージが強い。しかし、実際には、すでにマイクロソフト、グーグル、アドビ、ペプシなどの米国企業のトップがインド人で占められているように、また、アップルのティム・クックが、これからのiPhoneの主マーケットを経済的に不安定な中国からインドへとシフトすると宣言したように、もはや世界の将来はインドなくして語れなくなりつつある。

日本国内よりもインドの合弁事業(マルチ・スズキ)で利益を上げている自動車メーカーのスズキを含めて、すでに同国に進出済みの会社や、すでにインドの若い起業家たちに巨額の投資を行っているソフトバンクは、そのことを理解しているはずだが、他の規模の大小を問わず、他の企業もここ1、2年で何らかの対応をはじめないと、欧米に遅れをとることは確実だ。

デザイナーも、欧米だけでなく、インドにもっと注目すべきとの思いから、このコラムでも前後編の2回に分けて、写真を中心に現代インドのインドの見聞録をお届けしたいと思う。

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◀インド有数のメディア企業、ナスコムが、ムンバイのグランドハイアットホテルで開催した、リーダーシップカンファレンス2016のランチ風景。このランチは、日立のスポンサードによって供され、NTTデータもイベントスポンサーに名を連ねてはいたものの、会場での日本企業の存在感は薄かった。(クリックで拡大) photo ◀これは最終日の最後のセッションのため、やや空席も目立つが、主催者よりアメリカからの参加者が1,500名に上ったことが発表された。対する日本からの参加者は筆者を含めて数名に過ぎず、インドに関する関心度の差に驚きを隠せない。(クリックで拡大)

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◀ムンバイ市内で見かけたホンダの広告ビルボード。日本では、ハイブリッド機能や性能面をアピールする同社だが、インドではスマートフォンを介したコネクション機能(車両位置特定、走行ルートログ、車両診断、衝突検知&自動通報など)を前面に押し出したスマートカーであることがセールスポイントとなっている。(クリックで拡大) photo ◀2代目フィットをベースに開発されたホンダのアジア向け小型車、ブリオ。かつては、アジアカーといえば、簡素化された外装と価格の安さを特徴としていたが、ブリオは日本国内向けの車両よりも個性的なリアクォータービューでライバルとのデザイン的な差別化を図っている。(クリックで拡大)

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◀エティオス(写真は、スポーティなエティオス・クロス)は、トヨタがインド市場での出遅れを挽回すべく、”World First, India First"を合言葉に、まず同国でデビューさせた新興国戦略車。さすがのトヨタもインドでのシェアは5%に留まり、5割弱を押さえたマルチ・スズキとの提携による販路拡大を計画中だ。(クリックで拡大) photo ◀インドの財閥、タタグループが販売する国民車、ナノ(初代モデル)とインド製ピアッジオ(ベスパ)スクーター。ナノは、マルチ・スズキの最安製品であるマルチ800でも20万ルピー(約33万円)するところを約11万3000ルピーで発売したが、装備を充実させた2代目モデルは約20万ルピーからに値上げれた。デザインは、ロンドンのタタチームが行ったというが、シンプルかつまとまりのあるものに仕上がっている。(クリックで拡大)

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◀タタの最新モデルのジカ(ジッピーカー=キビキビ走るクルマ、を略した造語)は、デザイン面では日本車や欧州車と肩を並べ、専用のテーマミュージックをカーオーディオ内に仕込んだり、専用の香りを調香して付属させるなど、五感に訴える独自のマーケティングを行っている。ただし、不運なことにジカ熱の流行が重なったため、発売寸前で車名を変更する決定が下された。(クリックで拡大) photo ◀バス停に掲げられていたカシオのLED光源プロジェクターの広告。写真内で製品を載せているのは、LED電球をイメージした台で、その上面が開いてプロジェクターが生まれたというイメージだが、これは多くの人がLED電球を知っているからこそ成り立つビジュアルであろう。(クリックで拡大)

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◀インド国立近代美術館における建築系の企画展"State of Architecture"にて、学芸員の方からインドの近代建築のレクチャーを受けているところ。確かに、今もバラックやスラムがムンバイ市内でも多く残るインドだが、同時に、日本でもTOTOのスポンサードで展示会を開いたスタジオムンバイをはじめとする気鋭の建築家たちが伝統とモダンさを融合した意欲的な建物づくりを進めている。(クリックで拡大) photo ◀これまでにインド国内で出版された建築雑誌の表紙を並べたウォール展示の一部。海外事例の紹介もあるが、インドという既成概念を打ち破る新傾向の国内の建築物も数多く存在している。(クリックで拡大)

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◀同企画展では、単に写真や模型を使うだけでなく、見せ方そのものを工夫した展示が興味深かった。これは、折り紙的な構造を応用し、呼吸しているように膨らんだり閉じたりするインスタレーションである。(クリックで拡大)

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◀館内のあちらこちらに置かれたスツールやベンチもエキシビションの一部であり、近づいてみると、立方体や直方体を楕円柱が貫通したような構造をしている。これらは実は木製であり、詳しい製法は不明だが、内面を鮮やかな染料で染めた上で全体に樹脂を含浸させて磨き出したような仕上げになっていた。クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀インドでは、意外なところに先進的な施設がある。ホイスト(軽便な起重機)を備え、改装が進むこの古いビルには、町工場的な中小企業が多数入居しているが、その中に急成長中のデザインコンサルティング会社、フューチャーファクトリーもオフィスを構えているのだ。(クリックで拡大) photo ◀年代物のシャッターを閉めてしまえば、絶対にその存在がわからなくなる、フューチャーファクトリーの入り口。同社がデザインを手がけた製品は、レッドドットや日本のグッドデザイン賞を獲得しているものも少なくない。(クリックで拡大)

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◀内部は超クリーンかつ超モダンにリノベーションされている。この方は、アイデアをすぐに形にできるこの場所の利便性について語る、同社マネージング・パートナーのギーティカ・SK氏。インドでも、クリエイティブ系やスタートアップ系のオピニオンリーダー的な人たちには、Macintoshの愛用者が多い。(クリックで拡大) photo ◀フューチャーファクトリーの最新作の1つ、ゴドレジ社製の個人向け金庫、ゴルディロックス。タッチパネルを使った暗証番号入力による施錠・開錠方式を採用し、内部のセンサーにより、不用意に動かそうとすると警報が鳴る。また、盗難防止用に、ノートPCなどで使われるセキュリティワイヤーを背面に取り付けることができる。インドでは、いわゆるタンス預金をする人も多く、そうした層に向けた製品として開発された。(クリックで拡大)

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◀これもフューチャーファクトリーによるデザインで、ドイツのウォーターフィルター技術を使った学校向けの浄水システムである。左が、実際に同じ建物内の別室に置かれていた組み立て途中の試作品で、完成すると右のカタログ写真のように、子供の手の高さにシンクが来る設計だ。(クリックで拡大) photo ◀前編の最後は、ムンバイ空港の内部の写真。シカゴに本社を持ち、ムンバイにもオフィスを構える世界的な建築事務所、スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル(東京ミッドタウンも手がけた)の作品だが、まさに、近代インドの建築デザインを象徴するモダニズムとトラディションを調和させた建物に仕上がっている。ただし、過去の政権が空路の充実に重点を置き過ぎたため、現モディ政権は鉄道網の整備を進めていく見通しで、日本のビジネスチャンスも大いにある。
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