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コラム

モバイルデザイン考 第93回
日本発のデザインで挑むWindows 10フォン
トリニティ「NuAns NEO」

トリニティは、あえて薄さと軽さにこだわりすぎないことで、まったく異なるデザインのベクトルが生まれるのではないかと考え、TENTとのコラボレーションによって、ユニークなスマートフォンを開発した。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

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▲トリニティのWindows 10フォン「NuAns NEO」。(クリックで拡大)

●TENTとトリニティのコラボによるスマホ

スマートフォン市場は、特に日本ではiPhoneの1人勝ち状態が続いており、残りの市場も、ほとんどAndroidベースの安価な製品とハイエンド製品によって占められている。

だが、それらはときに薄さや軽さを追求するあまり、必ずしもホールドしやすいとは限らなかったり、バッテリー容量が十分確保できていなかったりする。もちろん、エンジニアリングでは最適の妥協点を見つけることも重要なので、そうした点に目をつぶってでも薄く軽いほうが携帯しやすいと思えば、それはそれで1つの解だといえる。

しかし、デザイン的には表現の幅が狭まるというマイナス面もあり(意図的に似せたものも含めて)、どのスマートフォンも外観が同じような傾向を示すようになってきている。

これまでスマートデバイスのアクセサリを手がけて定評を得てきたトリニティは、その点に疑問を抱き、あえて薄さと軽さにこだわりすぎないことで、まったく異なるデザインのベクトルが生まれるのではないかと考えた。そして、デザインユニットのTENTとのコラボレーションによって、ユニークなモジュラー構造を持つNuAns NEO(ニュアンス・ネオ。以下、NEO)を生み出したのだった。

内部設計も、他社のOEM基板などを使うことなくゼロから設計し、OSにはWindows 10を採用。いろいろな意味で、類型から脱するための強い意志が感じられ、パッケージひとつとっても、中身を取り出した後で貯金箱として利用できるなど、楽しい工夫がなされている。

この連載はデザインがテーマなので、細かな仕様には言及しないが、CPUはミドルレンジ向けのSnapdragon 617を採用。これは、本体にキーボード、マウス、ディスプレイをつなぐとインターフェースがデスクトップモードになるWindows 10のContinuum機能に対応させるためである。NEO発表時にはCPU自体が未出荷でマイクロソフトのContinuumに関する認証は取得できていなかったものの、そのようなハイブリッド的な利用法も念頭に置いた製品となっている。ちなみに、外部ディスプレイへの接続は有線ではなく、Wi-Fiを利用するMiracast準拠の無線接続となる。

さて、薄さや軽さを重視しないとはいっても、NEOのサイズと重量は約141×74.2×11.3mmで約150gとなっており、決して極端に厚く重いわけではない。しかし、この厚みのおかげで3300mAhの容量を持つバッテリーを搭載でき、連続通話時間は960分以上、連続待受時間は400時間以上とされている。

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◀同じNUANSシリーズのアクセサリ、MAGFIT(マグネット式ケーブルホルダー付き折りたたみ可能マット)の上に置かれたNEO。ディスプレイは5インチでHD画質。F値2.0の明るいレンズを搭載した1,300万画素のアウトカメラを内蔵する(インカメラは500万画素)。画面は(当たり前だが)Windows 10のスマートフォン表示そのものである。(クリックで拡大) photo ◀薄さや軽さをあえて追求しないことで、持ちやすい断面形状や無理のないスイッチ&ポート類の類のサイズ、位置、およびバッテリー容量を実現できたNEOの6面図。(クリックで拡大)

NEOのデザイン面での最大の特徴は、コアと呼ばれるハードウェア本体(カラーはブラックのみ)とカバー(上下の組み合わせでカラーや素材のコントラストを楽しめるTWOTONEと、ディスプレイ面も保護できる手帳スタイルのFLIPの2種を用意)によって、72通りのバリエーションを作り出せることにある。

価格的には、コアが税抜39,800円。TWOTONEのトップカバーがクラリーノとウルトラスエードは1,500円で、木製シートのテナージュが1,600円。同じくボトムカバーがクラリーノとウルトラスエードは1,400円、テナージュが1,500円。FLIPはクラリーノとウルトラスエードが2,750円、テナージュが3,680円となっている。組み合わせ次第でトータルな価格も変化するが、いずれにしてもミッドレンジ市場に投入されるスマートフォンとして、明確な個性を打ち出すことに成功している。

また、対応するカバーやケースなどのアクセサリの開発をサードパーティにも呼びかけており、自社のNuAnsシリーズのiPhone向けアクセサリも、コネクタをNEOそのほかのスマートフォンで採用されたUSB type-Cに変更したバージョンが発売される予定だ。

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◀コアと呼ばれるハードウェアユニットに、異なるカラーや素材の固定カバー(TWOTONE)、あるいはフリップ式のカバー(FLIP)を装着することで、自分だけの1台を作ることができるモジュラー構造になっている。(クリックで拡大) photo ◀TWOTONEカバーは、上下それぞれ8種類のカラーや素材の組み合わせで計64通りのコンビネーションが楽しめる。また、FLIPも、カラーや素材が異なる8種類が用意される。(クリックで拡大)

 

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◀Flipは、カバーの開閉と連動して本体のスリープのオン、オフを自動的に行えるほか、置き方でこのようなスタンドとしても利用可能だ。(クリックで拡大)

NFCには対応するが、おサイフケータイ的な機能は内蔵せず、コアのくぼみに交通系ICカードや電子マネーカードなどを1枚収納できる仕掛けがあり、このあたりもスマートフォンケースを手がけてきたメーカーならではの発想が感じられる。

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◀サイズ的な余裕を生かして、コアには2基の2microSIMカードスロット、および、交通系ICカードなどの収納スペースがあり、後者はスライドして取り出しやすいよう、2辺に傾斜が付いている。クリックで拡大)

実際にユーザーの手が触れ、また交換時にそれなりの力がかかるカバーパーツも、気を配って作られており、樹脂と表面素材の一体感もしっかりしているほか、スイッチ類のボタンパーツをカバー側に組み込むことで脱着時に引っかからない構造となっている。

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◀表面がクラリーノバージョンのTWOTONEカバーの断面を示す。後から貼り合わせるのではなく、モールド時に一体成型されるので、容易に剥がれるようなことはない。(クリックで拡大) photo ◀メインスイッチと音量調整用スイッチはコア側に埋め込まれており、それらがカバー側のボタンユニットで押されることによって機能する構造になっている。(クリックで拡大)

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◀9TWOTONEの利用時には、下側のカバーを外すことで、簡単に内部のカードを取り出せる。ちなみに、購入時に装着されているダミーカードは、背面がマイクロファイバー的な加工になっており、液晶画面クリーナーとして利用できる。(クリックで拡大)


そして、筆者が個人的にもっとも興味を持ったのは、カバーパーツを3Dプリンタなどで自作するための寸法データが公開されていることだ。これにより、さまざまなアイデアを盛り込んで外装をカスタマイズすることができるようになる。発表会場の一角には、TENT自身がデザインし、3Dプリントされた遊び心のあるカスタムカバーや、開発段階のスケッチ、モックアップが展示されており、NEOのデザインにかける意気込みを感じるとともに、そこから広がっていく世界をイメージすることができた。

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◀発表会場の一角には、スケッチや試作品、3Dプリントされたパーツなどを展示したコーナーが設えられていた。(クリックで拡大) photo ◀NEOは、カバーパーツを作るために必要な寸法データが公開され、3Dプリンタなどを利用して自作できるように配慮されている。これらは、実際にNEOの製品デザインを担当したTENTによって作られたサンプルで、スタンド機能を持つものや三脚に取り付けられるものなど、アイデアの広がりが楽しい。(クリックで拡大)


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◀12カバーやスピーカーホールのディテールの検討の過程が偲ばれる、貴重なアイデアスケッチ。(クリックで拡大) photo ◀特にストラップホールは、スマートに美しくストラップのループ部分を留めるために、従来にない方法が考え出された(実機では、ストラップを通す穴をスピーカーホールと同じ真円とし、より自然なディテールに仕上げられている)。(クリックで拡大)


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◀14TWOTONEやFLIPカバーのためにさまざまなアイデアを試したことがわかるモックアップの数々。。(クリックで拡大) photo ◀カメラのレンズが左右の中心軸上にくるデザインもあったが、製品版では内部スペースの関係で左上角に設けられた。(クリックで拡大)

 

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◀左のスケッチをよく見ると、側面が半円断面ではなく直角に切り立った形状も検討されていたことがわかる。(クリックで拡大)

なお、NEOは公式サイト(http://neo.nuans.jp)やいくつかの指定ショップを通じて販売されるが、実際の出荷開始は2016年の1月中になる予定だ。



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