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モバイルデザイン考 第90回
超小型でも実力派のクワッドコプター
Parrot「Rolling Spider」

コンシューマー向けクワッドコプターの草分け的存在である「AR. Drone」の開発元、仏Parrotが2014年に発売した超小型ドローン「Rolling Spider」がiPadアプリでコントロール可能になった。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲仏Parrotの超小型ドローン「Rolling Spider」(クリックで拡大)

●iPadでコントロールできる超小型ドローン

先日、東京の護国寺を訪れたところ、さほど新しくはない看板に「この境内は、ドローン禁止」とあった。「夜間の進入・通行禁止」という古くからの項目と並べて書かれていても違和感を感じなかったので、もしや時代を先取りして数年前からの規制かとも思ったものの、よく見ると、ちゃんと経年変化した感じに雰囲気を合わせて仕上げた職人仕事の賜物だった。

ともあれ、一連の事件の影響で、少なくとも都市部の屋外では、個人が安心して飛ばせる場所を見つけにくくなっている。もちろん、プライバシーの侵害や文化財などを傷つける危険性のある場所での飛行は論外だが、単に「落下すると危険」というような規制の仕方では凧も揚げられなくなってしまいかねない。たとえば、糸が切れた凧とドローンの、どちらがより危険かは、一概には言えないように思える。

いずれにせよ、メーカーもこうした動きには敏感で、特にクワッドコプターと呼ばれる4枚プロペラのモデルは、プロが飛行許可を得て利用するようなハイエンドの製品と、室内向けの小型のものに2分化してきた。

そこで今回は、コンシューマー向けクワッドコプターの草分け的存在であるAR. Droneの開発元でもある仏Parrotが、2014年8月に発売した超小型ドローン、Rolling Spider(実売10,000~14,000円前後)を採り上げることにした(ちなみに、Rolling Spiderはミニドローンシリーズの1つだが、Parrotでは「ドローン=小型ロボット」的な意味合いで使っており、飛行体以外のミニドローンも開発している)。

Rolling Spiderは、発売から1年近く経っているが、最近になって改めて注目したのにはわけがある。それは、最後に少し触れるが、これをビジュアルプログラミング環境でコントロールできるiPadアプリが、少し前にサードパーティから無料で提供されるようになったためだ。今後、ドローンはラジコン的に操縦するのではなく、自律的に飛行体としての性格を強めていくと考えられる。その意味で、プログラムによるコントロールが可能になったことが、Rolling Spiderの魅力を高めたといえる。

Parrotは、コンシューマー向けクワッドコプターのパイオニアだけあり、Rolling Spiderも、外装から機構まで、とてもよくできている。まず、外装はトラス構造のフレームと、ロボット的な面構えのカバーにより、他のトイヘリコプターとは一線を画するデザインだ。

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◀一般の安価な超小型ヘリコプターやクアッドコプターのオモチャとは、一線を画するデザインと仕上がりのRolling Spider。(クリックで拡大) photo ◀フロントグリルの目のような部分は、充電状況やBluetoothの接続状況などを示すインジケーターランプの役割も果たす。(クリックで拡大)

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◀同社のAR. Droneなどと比べても、設計と構造に格段の進化が感じられる。フレームは剛性が高く、白いカバー部分は軽量化のために押すと凹むほど薄い。(クリックで拡大)

機構的には、AR.Droneで培ったセンサー技術が活かされており、底面の高度センサーと位置補正用カメラ、そして内蔵された加速度センサーの組み合わせによって、姿勢制御やホバリング、自律的な離着陸を行う仕組みだ。
ただし、底面のカメラで低解像度の静止画撮影は可能だが、動画撮影用のカメラは搭載されていない。また、Wi-Fi接続だったAR.Droneに対し、コントローラーとなるスマートデバイスとの接続はBluetoth 4.0経由で行われ、操作可能距離は約20mである。


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◀底面には、高度センサー(金属メッシュでカバーされた部分)と、ホバリング時の位置補正や直下の写真撮影に使われるカメラ(その後方の小さな穴)が内蔵されている。(クリックで拡大)

重量は、ボディの後端に合体するバッテリー込みで公称55g。さらに10g程度の荷重をかけても飛行可能だ。当然ながら軽量化設計に注力されており、電源スイッチの操作部なども個別のパーツではなく、ボディカバーの一部を巧みに利用している。

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◀電源スイッチの操作部も、ボディカバーの一部にスリットを入れることでバネ代わりにするなど、わずかでも重量を抑える巧みな工夫がある。(クリックで拡大) photo ◀ボディ容積のかなりの部分がバッテリーで占められるが、ここでもカバーなしの脱着機構で一体化させるなど、巧妙な設計が光る。(クリックで拡大)

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◀バッテリーベイを覗いたところ。奥に接点が見えている。手前下の端子は、充電および内部フラッシュメモリアクセス用のマイクロUSB。(クリックで拡大)

そして、視覚的に目障りな認証マークなどをアップル製品並みに目立たなくする(Apple Watchでは、時計バンドを取り付けると隠れる場所にある)工夫もあり、徹底して美しさにこだわった仕上がりだ。

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◀各種の認証情報やマークは、バッテリーベイの中に印刷され、利用時に外観デザインを阻害しないように配慮されている。(クリックで拡大)

また、Rolling Spider(転がる蜘蛛)のネーミングの通り、専用のホイールを装着して走行することや、そのまま飛び立つこともできるようになっており、遊びの幅を広げている。このホイールは、プロペラガードも兼用するサイズになっており、壁や天井に接触しても墜落せずに済むほか、そのままそれらの面に沿って走行することもできる。

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◀Rolling Spiderには、プロペラガード兼用のホイールも標準で付属している。(クリックで拡大)

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◀車輪の装着方法もよく考えられており、軸受けの突起をボディ上面の凹みに滑り込ませ、そのままレバーを倒し、ラッチにパチンとはめ込むだけでよい。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

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◀(クリックで拡大)

純正のコントロールアプリは、上位機種のAR.DroneやBebop Droneも操縦できるFreeFlight 3のみで、これは離着陸と機体の安定機能以外はマニュアルで操縦するためのものだ。しかし、サードパーティ製のTickleと呼ばれる無料iPadアプリがリリースされたおかげで、プログラムによる飛行も可能となった。

子供でもプログラムが楽しめるScratch(「引っ掻く」の意)というビジュアルプログラミング環境があるが、それと似たインターフェースを持つTickleには「くすぐる」という意味があり、Scratchよりも優しいということなのだろう。Tickleでは、球形ロボティクストイのSpheroや、その姉妹モデルのOllieもコントロールできるが、Rolling Spiderがサポートされていることの意義は大きい。

かつて、画面上のタートルと呼ばれるシンボルを動かせる教育向けのプログミング言語として注目されたLOGO(1967年)の時代から40年近くを経て、子供たちはついに実物の飛行体をプログラムで動かせる能力を手に入れたのである。

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◀ホイール装着時には、壁や天井にプロペラが直に接触することがなくなるほか、地上と天井走行なども可能となる。(クリックで拡大)

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◀iPad向けのTickleというサードパーティ製無料アプリを使うと、Scratchに似たビジュアルプログラミング環境を使ってRolling Spiderの動きをコントロールすることができる。(クリックで拡大)



 


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