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モバイルデザイン考 第83回
タンジブルな教育ゲームプラットフォーム
iPad対応の「OSMO」


手に触れられる(タンジブルな)遊びと、iPadの画面内の動きを融合させた、新しい教育ゲームのプラットフォームが「OSMO」だ。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲「OSMO」の3本のアプリケーションのパッケージ。(クリックで拡大)


●iPadのエデュテイメントアプリの新しい提案

iPadを利用したエデュテイメント系の教育アプリはいろいろとあるが、故スティーブ・ジョブズでさえ、自らの子供たち画面内の世界に夢中になりすぎることを恐れてデバイスの利用を禁じていたように、リアルな遊びと適度にバランスさせることが重要だと筆者も考えている。

そのカテゴリーにピタリと当てはまるOSMO(80ドル)は、タンジブル(手に触れられる)な遊びとiPadの画面内の動きを融合させた、新しい教育ゲームの在り方を提唱するプラットフォームだ。

と言っても、その仕組みは極めて単純で、まさにコロンブスの卵のような印象がある。すなわち、iPadのインカメラの撮影範囲を小さなミラーによって変更し、手前の机上のスペースが写るようにしたのである。しかし、それはそのエリアを実写するためではない。そこに置かれたり描かれたりしたものをパターン認識して、画面内の要素とのインタラクションを行うのだ。

したがって、アプリ側ではかなり複雑で高度な処理が行われており、遊んでみるとソフトウェアの勝利という印象を強くする。OSMOと組み合わせて利用できるカメラ付きのiPadは、iPad 2以降、いくつかのフォームファクターが存在する。そこで、そのすべてに対応すべく、OSMOのスタンド部分には工夫が凝らされている。

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◀OSMOのハードウェアは、シンプルな樹脂製のiPad用スタンドである。(クリックで拡大)
photo ◀横から見ると、波のような断面形状をしており、前端(写真では左)近くにiPadを差し込む溝がある。(クリックで拡大)

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◀iPadは、iPad 2以降のフルサイズモデルと、iPad miniシリーズの全モデルが利用可能だが、サイズの差を吸収するために、溝の部分の内部パーツをスライドして外せるようになっている。(クリックで拡大)
photo ◀このように、脱着可能なパーツの前後に異なるサイズの凹みがある。また、内側にミラーを備えた赤い部分は磁石で固定されており、簡単に取り外すことができる。(クリックで拡大)

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◀iPadのサイズ調整用パーツを取り出したところ、凹みは片側がiPad 2?4向け、もう片側がiPad AirとiPad mini向けの凹みを持っており、前後を入れ替えて差し込み直すことで各モデルにフィットさせられる。(クリックで拡大)


OSMO自体には電子部品も振動に弱いパーツも使われていないので、iPadとともに、気軽に持ち歩くことができる。そこで、とある公園に連れ出して使ってみることにした。

対応アプリは、今のところ、重力や反射などの物理特性をシミュレートした「Newton」、タングラムの図形パズルゲームを楽しめる「Tangram」、そして、2チームに分かれて単語の綴りを推理し、手持ちの札から該当するものを「場」に出して、穴埋めを完成させる「Words」の3種類があり、どれもiOSデバイス向けのApp Storeから無料でダウンロードできる。このうち、TangramとWords用のゲームピースは、OSMO本体にバンドルされている。

それそれのゲームは、対応機種の中で最も古いiPad 2でも驚くほどスムーズに動き、十分な最適化が行われていることを感じさせる。

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◀とある公園のテーブルにて、iPadをセットしたOSMO。ここでは、便宜的に白い紙を下に敷いているが、一般的な無地の机などで使う場合には不要である(ただし、後述するNewtonアプリでは実際の紙に線を引く必要がある)。
(クリックで拡大)
photo ◀OSMO対応のアプリ(無料)は、今のところ、Newton、Tangram、Wordsの3種類が用意されている。(クリックで拡大)

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◀Tangramの設問選択画面。アプリのインターフェイスデザインも、シンプルで美しくまとめられている。(クリックで拡大)
photo ◀iPadの上部にセットされた赤いパーツのミラーが、手前のイメージをインカメラで撮影できるように反射させてパターン認識を行う仕組みだが、たとえばこのようにタングラムが雑多に置かれた状態では、認識されないようになっている。(クリックで拡大)


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◀あるいは、1つだけ置いた状態でも正しいとは判断されない。(クリックで拡大)
photo ◀最低2つのピースのつながりが正しく置かれた時に、初めて画面内からもフィードバックが得られる仕組みだ。(クリックで拡大)


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◀完成まで、あと1ピースまで迫ったところ。形だけでなくカラーも認識されていることが分かる。(クリックで拡大)
photo ◀そして、完成すると設問のシルエットにチェックマークがつく。(クリックで拡大)


実際の紙に線を描いて画面内に反映し、そこに落ちてくる玉を反射させてターゲットに当てるNewtonの場合、たとえば木製のテーブルトップをそのままカメラでとらえると、木目の1本1本が線と認識され、それぞれで玉が飛び跳ねるほどで、この処理能力の高さを考えると、今後のアプリ展開も楽しみである。


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◀特別なピースを必要としないNewtonゲームは、画面上方から落ちてくる玉を、線を描いて反射させ、オレンジ色のターゲットにうまく当てるゲーム。(クリックで拡大)
photo ◀もちろん線は手前の紙のほうに描くのだが、アプリの図形認識能力が非常に高いため、このようにマーカーを置くだけでも輪郭が抽出され、これを使って玉の反射角度を変えることができる。クリックで拡大)


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◀クリアしていくと、ターゲットの数が増えたり、障害物が現れるなど、徐々に難易度が上がっていく。(クリックで拡大)

一昔前ならば研究室レベルのテクノロジーデモなどでしか体験できなかったような技術を、気軽に手元で楽しめるようにしたOSMOは、シンプルさを極めながら大きな可能性を秘めた、これからの教育ゲームの方向性を示す好例と言えるだろう。



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