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コラム

モバイルデザイン考 第76回
フリーハンドで動かすペン型の
3Dプリンタ超入門機「3Doodler」

今回は、流行りの3Dプリンタの中でも、超入門クラスといえる、
ペン型「3Doodler」を紹介しよう。

photo[プロフィール]

大谷和利(OtaniFaceS)
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲「3Doodler」のパッケージ。日本ではナカバヤシから4月に16,000円(税抜き)で発売開始予定。(クリックで拡大)

●ペン型の3Dプリンタ登場!

3Dプリンタは、一般のニュースなどにも採り上げられ、その存在を知っている人は多いものの、実際に触ったことがあるという人はまだ少ない。

その理由としては、気軽に使ってみるには依然として価格が高めであることや、実際に手に入れたとしても、頭に浮かんだイメージをどのようにデータ化すればよいのかが分かりにくいということが挙げられるだろう。

また、自分でも経験があるが、たとえば樹脂溶解積層型プリンタの場合、造形がある程度までうまくいっていても、樹脂フィラメントの送り込み機構が滑るなどしただけで、それまでの苦労(といっても、ただマシンを数十分~数時間稼動させておくだけだが)が水の泡になったりする。ほぼフールプルーフなフォトプリンタの域には達していないのが実情であり、そのことが、簡単ならば使ってみたいと思うライトユーザーを遠ざけている。

3Doodler(http://the3doodler.jp)の開発者も、3Dプリンタのトラブルに業を煮やし、サーマルヘッド部分を取り外して不足分の樹脂を自分で埋めた経験があり、そこからペン型の3Dプリンタのアイデアを得たという。ちなみに、"doodle"とは「イタズラ書き」のことであり、3Doodlerは「3Dでイタズラ書きをする者」という意味の造語だ。

筆者の3Doodlerは、Kickstaterのバッカーとなったことで一般に市販されるよりも少し早く手元に届いたが、日本では、紙製品や事務機器、育児用品の専門メーカーであるナカバヤシ(株)が開発元の米ウォブルワークスと独占契約を結び、4月から16,000円(税抜き)で発売開始予定となっている。

ヘッドの動きからフィラメントの送り出しまで、完全にマニュアル操作であるため、当然ながら精度は期待できないものの、データ不要ですぐに樹脂による造形できる点は、非常に面白い。

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◀3Doodlerはペン型をしているが、断面の最大直径は37ミリで長さが187ミリ、重量130グラムと、サイズ的にはそこそこ大きい。内部構造を考えると致し方ない部分もあるが、子供の手ではやや持て余すかもしれない。(クリックで拡大)

仕組みとしては、溶解した樹脂フィラメント(ABSかPLA(ポリ乳酸))がヘッドから押し出されるやいなや、強制的に風を吹き付けて冷却を促し、2、3秒で固化させるようになっている。

フィラメントの射出スピードは、本体を握ったときに人差し指の位置にある上下2個のボタンで2段階に調節できる。また、フィラメントの色替えなどのために未使用部分を排出する場合には、両方のボタンを同時押しすることでモーターが逆転する。

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◀電源スイッチをオンすると、インジケーターランプが赤く点灯し、余熱状態にあることを示す。操作スイッチは、下側(写真では左側)が高速での射出、上側が低速での射出で、両方を同時に押すとモーターが逆転してフィラメントが排出される。(クリックで拡大)

フィラメントの動線を軸にして、必要な要素を並べたデザインはとても素直なものだが、サイズ感やディテールには今後の改善の余地がある。しかし、さまざまな制約の中で生まれた初代モデルとしては、妥当なまとめ方がなされていると言ってよいだろう。

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◀フィラメントは最後端の中央の穴から挿入し、胴体の中を一直線に進んでサーマルヘッドに到達する。充電池などは内蔵せず、専用のACアダプタから供給される電力で動作する。(クリックで拡大)
photo ◀サーマルヘッドは青いシリコン系のパーツで保持されており、外装との隙間から冷却風を吹き付けて溶解したフィラメントの固化を促す。ヘッドは交換可能で、今後、異なる太さで射出できるパーツもリリースされる予定だ。(クリックで拡大)

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◀冷却気は、本体後部のファンによって吸い込まれ、内部機構を過熱から守る役割もしているようだ。ただし、この太陽のような通気口のデザインは、全体形とマッチしてないように感じる。(クリックで拡大)
photo ◀うっかりサーマルヘッドに触れないように、先端に被せるシリコン製のキャップも付属している。この状態でも造形可能だが、装着感が緩めなので、個人的には外して使っている。(クリックで拡大)

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◀電源スイッチは、溶解温度の異なる樹脂の種類(ABSかPLA)に合わせてスライドしてオンする仕組みだが、刻印の向きが上下逆のように思える。(クリックで拡大)
photo ◀というのは、反対側の番号やFCC、CEマークは、この向きで印刷されているからである。使用上は困らない細かな部分だが、なぜ統一されていないのかが気になるところだ。(クリックで拡大)

ビジネスモデルとしてユニークなのは、本体価格を抑えて購入しやすくし、カラープリンタのインクにあたるフィラメントを継続的に買ってもらうことで利益を上げる方法を採っている点である。

すでに、さまざまなカラーアソートのフィラメントパックが用意されており、意図に応じて色を組み合わせた作品作りも容易に行うことが可能だ。

また、最初から複数の言語圏での販売が意識されており、同梱されるユーザーガイドも5カ国語で記述されている。こうした配慮は、日本の中小企業のコンシューマー製品にも、もっと見られてもしかるべきであろう。

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◀フィラメントは、このような直線状の専用品を使う。1パックに15本入って1500円で販売される予定だ。(クリックで拡大)
photo ◀同梱されているユーザーガイドははじめから5カ国語で記述され、その中に日本語も含まれている。(クリックで拡大)

●ウィンタースポーツの作例

ちょうど、ソチオリンピックの直前に製品が届いたので、いくつかウィンターオリンピックに題材を得た作例を作ってみた。

造形方法としては、ベースを作ってから、高さ方向にも直接ペンを動かして立体的な構造体を作るやり方もあれば、ちょうど展開図を作るように各面を独立して出力し、それを組み合わせて樹脂を接着剤的に用いて最終形にまとめるやり方などがあり、積層にこだわる必要はない。

多少の慣れは必要だが、作っているうちに新たな工夫を思いついたりして、興味は尽きない。

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◀ウィンターオリンピックをテーマにした作例を何点か作ってみた。これは、フィギュアスケートをイメージしたもの。(クリックで拡大)
photo ◀こちらは、モーグルのジャンプをイメージしたもの。(クリックで拡大)


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◀スノーボードのハーフパイプも作ってみた。他のものも含めて主な部分は平面で作って合体しているが、螺旋状の軌跡の造形などは、そのまま空中に描いて固化させたものだ。(クリックで拡大)
photo ◀さらにスキーのジャンプにも挑戦したが、後から、飛び出し直後でもスキーをハの字に開くべきだったことに気づいた。(クリックで拡大)


さらに、3Doodler本体の脚部など、機能部品の造形も行ってみた。精度的には、本格的な3Dプリンタに及ぶべくもないが、結構、しっかりしたものを出力することができる。

あらかじめ本体にハード面の拡張を意識したネジ穴や、同じく回路面で拡張するための端子などが設けられており、メーカーとしては近い将来に3Doodlerを3Dプリンタ化するためのキットも出してくるものと思われる。

今後は、本体のスリム化やバッテリー駆動化なども含めて、今以上に、誰もがどこでも使えるような製品へと発展を遂げていくことを願っている。

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◀オブジェ的なものだけでなく、機能部品の造形も試みて、3Doodlerを安定して置くための脚部を作ってみた。手作業なので精度は低いものの、積層すればそれなりに強度のあるものを作れる。本体の裏に、将来の拡張用のネジ穴があり、それを利用して固定している。(クリックで拡大)
photo ◀同じく将来の拡張用として、本体後部に制御用と思われる接点も設けられている。先のネジ穴と併せ、それなりのオプションを用意すれば、コンピュータ制御の3Dプリンタへと発展させられる可能性がある。(クリックで拡大)

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◀本来はAC電源で動かすべき製品だが、大谷は、どこでも造形やデモができるように、15,000mAhの大容量モバイルバッテリーと組み合わせて利用している。(クリックで拡大)





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