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モバイルデザイン考 第117回 (2018年3月7日更新)

アップルが考える理想のWi-Fiスピーカー
「HomePod」

アップルは2月9日より、海外で同社初のスマートスピーカーとなる「HomePod」の販売を開始した。日本での発売日は現在未定だが、今回は「HomePod」のインプレッションをお届けしよう。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。講談社現代ビジネスブックより「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める」、三省堂より「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著)、宣伝会議より「ビジュアルシフト」(監修)が好評発売中


▲「HomePod」のパッケージ。(クリックで拡大)


●Siri対応のHi-Fiスピーカー

日本ではまだ発売されていないが、アップルは、去る2月9日に、アメリカ、イギリス、オーストリアにおいて、同社初のスマートスピーカーとなるHomePodの販売を開始した。もっとも、同社はこの製品をスマートスピーカーとは呼んでいないので、正確には「Siri対応のHi-Fiスピーカー」というべきかもしれない。

実際に、アマゾンがAmazon Echoのテスト販売を始める前から企画がスタートしていたこの製品は、当初、あくまでもHi-Fiスピーカーとして開発が進められ、Echoが人気を博したことで、よりインテリジェントな方向に軌道修正されたようだ。

HomePodのSiriにできることを、EchoのAlexaやGoogle HomeのGoogle Assistantといった他のAIアシスタントと比較すると、確かに数の上では劣っているものの、現実のユーザーの利用法では、天候、ニュースのチェックや音楽再生が多いことを踏まえれば、大きな不満はないともいえる(ただし、現状ではHomePodのSIriの受け答えは英語だけで、音楽サービスもApple Musicのみとなる)。

また、AlexaとGoogle Assistantでは、スキルやアクションと呼ばれる対応ボイスアプリやサービスを名指しで接続して行う調べ物(たとえば、仮想通貨のレート)でも、Siriではそのまま訊くだけで答えてくれるものもあり、AIアシスタントに関する根本的な思想や哲学の差を感じる部分もある。

さて、それではアップルの公式イメージと筆者によるディテールの写真を組み合わせて、デザイン的な観点からHomePodを見てみよう。

全体形は、アップルらしいシンプルなもので、Mac Proにも似て円筒をベースとした繭のような形状をしているが、核となる機能がマイクとスピーカーであることを象徴するかのように、側面がすべてメッシュ素材で覆われている。

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▲繭を思わせる筐体は、上面と下面を除き、継ぎ目のないメッシュ素材で覆われている。重量は2.5kgあり、設置時や移動時にはサイズの割にどっしりと感じる。(クリックで拡大)



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▲内部には、トップカバーの内側に心臓部となる基板とA8プロセッサが収まり、その下にウーファー、6基のマイクロホンアレイ、再下段に7基のツイーターアレイが収まっている。(クリックで拡大)










透視図では、あたかも内部がスピーカーとマイクのみで自立しているかのように見えるが、実際には樹脂製の外壁があり、それに沿って伸縮性のあるメッシュカバーが被せられている。外壁は、ウーファーのある上面近くとツイーターのある下面近くが開口し、中央部はマイクの位置に合わせて6箇所に小さな穴が空いた構造だ。

HomePodには、ホワイトモデルとブラックモデルが用意されているが、どちらも、白または黒のトップカバーをうまく透過させてSiriのアニメーションが浮かび上がる演出を見せる。


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▲"Hey Siri"と呼びかけるか、上面にタッチすると、カラフルな光がうごめいて、聞き取り中であることを示す。(クリックで拡大)


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▲音楽再生中は、それが音量のアップ・ダウンを示す+と-に変わり、また、中央のタッチ操作によって再生とポーズのトグルや、次の曲(ダブルタップ)/前の曲(トリプルタップ)を呼び出すことも可能となる。(クリックで拡大)









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▲アップルがファブリックと呼ぶメッシュは、それなりの厚みを持つ立体構造で、内側から、細かな網の目、微細なコイル、荒い格子状の網の層が重なっている。弾力があり、強く押せば凹むが、かなり硬めの触感を持つ。(クリックで拡大)



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▲底部はラバー系素材で中央部が凹んでおり、その部分にアップルロゴが配されている。(クリックで拡大)





海外のレビュー記事などではHomePodの音質と電源ケーブル関して誤解しているものも見られる。

前者は、インテリジェントな自動調整機能が働く前に音質を判断して、価格(349ドル)に見合う音がしないというもの。HomePodのシステムが置かれた空間の家具配置などを認識して音質調整を完了するまでに少しかかるため、設置直後の音はやや安定を欠いて聴こえるが、一度落ち着けば、部屋のどこにいても良い音が楽しめるようになる。

一方で、電源ケーブルについての誤解は、固定されていて抜いたり交換することができないというものだ。実際には、非常にしっかりした作りでかみ合っているため、やや力が必要だが、ケーブルを付け根を握って引っ張ると、ポンという音とともに取り外すことができる。


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▲アップルらしく、いかにも作り付けで取り外せないように見える電源ケーブルだが…。(クリックで拡大)



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▲このように脱着が可能である。専用のコネクタを作ってまで、シンプルな外観にこだわったのだろう。(クリックで拡大)






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▲しかも、プラグを側面から見ると、この位置のカーブに合わせた形状で成型されていることが分かる。(クリックで拡大)



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▲プラグは差し込み場合にも力がいるが、この分厚いメッシュカバーを押さえ込み、反発力で外れないようにするために、あえて噛み込みをきつめに作ってあるようだ。(クリックで拡大)









アップルは常に素材と構造、加工法において新しい挑戦を続けているが、HumePodも見かけの単純さの陰で、これまでにないディテールのまとめられ方がなされていることが分かった。将来的に、もし廉価版などが作られるようであれば、どのようにコストダウンや簡略化を図るのか、改めて興味をそそられるところである。




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