pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム

モバイルデザイン考 第102回
「iPhone 7 ジェットブラック」の傷と指紋の真実

今回は、9月に発表されて筆者も購入し、しばらく使い込んでみたiPhone 7 ジェットブラックモデルについて書くことにする。

photo[プロフィール]

大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中

イラスト
▲iPhone 7 ジェットブラックモデル。(クリックで拡大)

●モノリス感が強まったiPhone 7

iPhone 7の新色、ジェットブラックは、発表会で上映されたジョナサン・アイブによるデザイン解説のビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=sbios0u2Px8)内で製造工程とともに取り上げられたこともあって、予約時から人気となった。しかし、同時に展示機や出荷後の実機で、傷や指紋が目立つとの指摘もあり、実際のところどうなのかという疑問を持つ人が少なからずいることも確かである。

筆者は、原稿執筆の時点まで20日あまりに渡ってiPhone 7をケースなしで持ち歩き、その外装の特性がどのようなものかを確かめてみた。実際のところケースなしにしたのはテストのためだけでなく、ジェットブラックの手触りが気に入って、これをケースに入れてしまうのはもったいないと感じたからだ。

同様に、最近では手帳型のケースなども人気だが、たとえば、せっかく選んだローズゴールドのiPhoneをそのようなケースに入れてボディカラーが見えない状態にしてしまうのは、本末転倒のような気がする。

いずれにしても、アップルがiPhoneを1枚の板のような存在に近づけていこうとしていることは間違いなく、ジェットブラックモデルは、アンテナのためのパーティションラインでさえもほぼ見分けがつかない位置と仕上げにすることでモノリス感が強められている。

photo
◀本体とガラス面の間のわずかな段差をiPhone 6 / 6sよりもさらに減らして平滑度を増したボディは、既存のどのモデルよりもモノリス的な印象を受ける。ただし、自前の写真では公式フォトのようなジェットブラックの滑らかさを表現することは難しい。(クリックで拡大) photo ◀背面も、光の加減によってはこのようにアップルマークが浮かび上がるものの、通常はレンズやフラッシュ部分を除いて一枚の漆黒のガラス板のように見える。その、せっかくのスムーズな触感のために、ケースを付けずに使うことを決めた。(クリックで拡大)

肝心の傷と指紋については、ごく普通にシャツの胸ポケットに入れたり、ジーンズの後ろポケットにねじ込んで自転車で移動するなどし、1日に何度も出し入れをしながら使っているが、個人的にはほとんど気にならないレベルに留まっている。

ジェットブラックボディの表面は、確かにガラス並みの平滑度で、スクリーンと同程度に指紋もつくが、逆に言えばスクリーンで気にならないならば、ボディでも同じようなものといえる。もちろん、皮脂の量などの個人差はあるので、一概には決められないが、自分ではさほど神経質になる必要はないと感じている(ちなみに、スクリーンの保護フィルムも、かなり以前から使わない主義だ)。

photo
◀電源ボタンやSIMカードトレイカバーなども、この角度からは目を凝らさないと、その存在が分からないほど本体に溶け込んでいる。確かに使っていればガラス面と同じようにボディ表面にも指紋がつくものの、個人的にはほとんど気にならないレベルと感じる。(クリックで拡大)

ディテールに目を向けると、2つのボリュームスイッチの間にあった凹面がiPhone 7ではなくなっている。このことによる操作感への影響はないようだが、うがった見方をすれば、ジェットブラックの研磨処理が均一的に行えるように、あるいは、この部分に余計なハイライトが入らないように、凹面を排除した可能性がある。

photo
◀マナーモードスイッチやボリュームスイッチも同様に視覚的にはほとんど目立たない。また、iPhone 6/6s系の筐体では2つのボリュームスイッチの間の部分が凹面処理されていたが、iPhone 7系ではボディの凸面がそのまま連続する処理となった。(クリックで拡大)

また、iPhone 7ではついにステレオサウンド再生をサポートしたが、これは横向きにしたときのみ、Lightning端子脇のスピーカーと通話用のスピーカーを利用して実現されている。このため、通話用スピーカーの音量を従来よりも大きくする必要があり、そのスピーカーグリルのスリットが、iPhone 6/6sのときよりも、わずかに長くなっている。

photo
◀すでにご存知のようにイヤフォン端子を廃し、左右対称のデザインとなった底面。ただし、向かって左側はスピーカーではなくマイクが内蔵されている。実際には(iPhone 6/6s系の筐体ではそうだったように)マイクの穴は1つでも足りるはずだが、視覚的なバランスを重視して左右の穴の数を揃えたようだ。(クリックで拡大)

iPhone 7のボディデザインでは、新たにアウトカメラのレンズ周りをボディと一体化し、外装パーツの点数がさらに減る結果となった。ここまでシンプル化していくと、もはや全体のフォルムやディテールで他製品と明確な差別化を図ることが難しく、ジェットブラックの仕上げなども、その中でいかに独自性を打ち出せるかということに腐心した結果のようにも思えてくる。

photo
◀新たに、レンズ表面の高さまでボディ面を滑らかにつなげるフォルムとなったカメラ部の造形。この種のディテールは過去の他社製スマートフォンにも見られた気がするが、シンプルさを追求する限り、フォルムや細部の造作で差別化することは難しくなり、仕上げや総合的なデザインバランスで抜きん出る方向性を選ばざるをえないともいえよう。(クリックで拡大)

ところで、世の中には、何かが壊れたり不具合が生じたことによって知ることのできる事実というものが存在する。

筆者の場合、最近、愛用していたリモアのサルサのハンドル付近のパネルが破断し、そこを補強しようとして内張のジッパーを開けた際に、サービス/メンテ用のトルクスレンチが隠されていたことが分かった。

あるいは、未だにAmazonビデオのアプリがリリースされないApple TVだが、仕方がないのでiOSデバイスのAmazonビデオアプリからApple TV経由で映画をAirPlay再生しているときに気づいたことがある。それは、その状態でもApple TVのリモートを使って再生のコントロールが行える点で、使用感としては、(コンテンツの検索や選択をiPad側で行う必要はあるが)Apple TVを直接制御するのとほとんど変わらないのだ。

photo
◀たとえば、樹脂ボディのリモアのサルサは、ジッパーに近いハンドルを持つ頻度が高いと、赤で囲んだ段差の部分に繰り返し張力が加わって経年劣化を起こしやすく、最終的に破断してしまう。(クリックで拡大) photo ◀そこで自分で修理をしようとして内装のジッパーを開けたところ、サービス/メンテ用のトルクスレンチを発見した。実際には取扱説明書にも記述があるのだが、たぶん、実際にその時になるまでは気にも留めない類の情報であり、事が起こって初めて分かることの1つだ。(クリックで拡大)

それで何が言いたいのかというと、実は先日、とあるマンションに届け物に行った際に入り口付近にゆるいスロープがあり、周囲が暗かったこともあって見えにくかった段差につまづいたのである。かろうじて体勢を立て直したので転倒はしなかったのだが、その弾みで胸ポケットに入っていたケースなしのiPhone 7が滑り出して、ラフな表面の地面を直撃した。

どちらの面から着地したのかさえ瞬時には分からないような状態だったが、レンズが見えていなかったので、思わず、傷だらけになった背面が脳裏をよぎった。ところが、拾ってみるとレンズの縁と、その反対側の2つの角にごくわずかな傷があるのみで、機能的にもまったく問題ない状態だった。

photo
◀本文に書いた理由で、胸ポケットから滑り出たiPhone 7は、レンガのようなタイルが敷き詰められた屋外の床部分に叩きつけられるように落下したものの、赤丸で示した3箇所にごくわずかな傷が付いたのみだった。(クリックで拡大) photo ◀(クリックで拡大)

photo
◀(クリックで拡大)

もちろん、そのためにレンズ部分が盛り上がっているわけではないが、結果としてiPhone 7は3点で着地し、しかも硬度がかなり高かったために被害が最小限で済んだということなのだ。これは実際に落としてみなければ分からなかった事実だが、ジェットブラックの表面処理は、それなりの耐久性を備えていると考えてよいだろう。

筆者は、この出来事の後もケースやフィルムを使うことなく、iPhone 7の薄さとジェットブラックの感触を楽しむことに決めたのである。

 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved