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コラム

建築デザインの素 第28回
適材適所

「建築デザインの素(もと)」では、建築家の山梨知彦さんに、建築にまつわるいろいろな話を毎月語っていただきます。立体デザインの観点ではプロダクトも建築もシームレス。“超巨大プロダクト”目線で読んでいただくのも面白いかと思います。

[プロフィール]
山梨知彦(やまなし ともひこ)。1984年東京芸術大学建築科卒業。1986年東京大学大学院修了。日建設計に入社。現在、執行役員、設計部門代表。代表作に「ルネ青山ビル」「神保町シアタービル」「乃村工藝社」「木材会館」「ホキ美術館」「ソニーシティ大崎」ほか。 受賞「日本建築大賞(ホキ美術館)」「日本建築学会作品賞(ソニーシティ大崎)」他。 書籍「業界が一変する・BIM建設革命」「プロ建築家になる勉強法」他。


■プレミアムキオスク

新幹線をよく利用される方はご存知だと思うが、東京駅の新幹線のホームには「プレミアムキオスク」という、昨今のプチ贅沢ブームをターゲットにした売店が設置されている(写真1)。

普通の売店では扱っていない老舗の土産や、チョイと凝った飲み物などを扱っているのがウリだが、品揃えのターゲットがイマイチ定まってないようにも感じられ、これまで利用したことがなかった。同じプチ贅沢狙いでも、ナチュラルローソンが「自然」をテーマに店名とズレを感じさせない商品を取り揃えているのと比較すると、プレミアムという言葉が遡及する商品イメージが、世代によって大きな隔たりがあるためかもしれない。もっとも、僕の専門は大型建築のデザインであるから、門外漢のうがった分析でしかないのだが(笑)。

■冷茶を買う

今日はたまたま早目に東京駅に着いたため、プレミアムキオスクの商品を久々に吟味することができた。眺めていると、ある商品に目が止まった。透明で美しい容器に、水のような透明な液体が入ったものが、ベットボトルのお茶と横並びでディスプレイされている。容器は樹脂かガラス製で、一目でプレミアム感を感じさせる造りだ。最初は「透明なお茶」かな? とも思ったが、どうやら抹茶を飲む直前に混ぜることで、入れたての水出し茶? のテイストとフレーバーを醸し出そうとする新手のボトル入り冷茶のようだ。値段を見ると、何と500円! プレミアム感満載ではないか!(笑)(写真2)。

財力に満ちた50代サラリーマンである私は、懐の余裕に任せ、躊躇なく、その冷茶を買うことにした(余裕があるにしては、500円を支払うのにいささか大袈裟ではあるが。笑)。まさに、プチ贅沢感に浸りきった一瞬であった。

■ひかり号にて、お茶を点てる

新幹線に乗り込み、早速お茶にトライしてみる。残念なのは、休日でひかり号が満員で、グリーン車に乗るプチ贅沢ができなかったばかりか、指定席も満員で、三席並びの一番通路側のC列席であったことだが、お茶への期待感が空間の貧弱さを忘れさせてくれる(写真3)。

早速、お茶を飲んでみよう。このプチ贅沢なこのお茶の取り扱い説明書によれば、抹茶を冷水に混ぜる一連の作業は、「お茶を点てる」と表現され、樹脂ボトル自体がそれにフィットするデザインになっている(お茶を飲むために取説を読まなければならないのも、プレミアム感を感じさせるのかもしれない)(写真4)。

まず、キャップを取る。キャップ自体がガラスを感じさせる透明で厚手な樹脂でつくられ、湯飲み茶碗を思わせるプロポーションと、やや上窄まりなプロファイルを持っている。ついで、キャップの下から現れた2段式のキャップの上段を右回転で絞り込むと、抹茶が冷水の中に投下される(写真5)。その後はボトルをひたすらシェイクして、抹茶を冷水に溶かし込む。だが2、3度振った程度では抹茶は溶けない。ふと解説書を見てみると、解説書には「振れば振るほどおいしくなる」とのツボを押さえたただし書き加えてある。これに励まされるようにもボトルをシェイクすること暫し。最後は上部にまったりとした泡立ちを持った冷茶ができ上がった(写真6:シェイクして、点て終わったところ)。

2段構造になったフタの下段をつまみ、今度は左回転に緩め、フタを取り、キャップを湯飲みにしてそこに冷茶を注ぎ、やっと味わえた。旨い! しかし、あまりにも面倒(写真7)。

気がつけば、満員のひかり号の中で、隣の乗客が、僕の不審な行動を怪訝な顔で眺めていた(笑)。

■プチマニアック

このお茶は、プチ贅沢と言うよりも「プチマニアック」な製品なのだろう。そしてそれを売っている売店も「マニアックキオスク」で、設置場所も秋葉原駅あたりであったなら、キオスクもこのマニアックなお茶も大成功を収めるかもしれない。

つくづく、デザインには適材適所の原則が重要であることを痛感する体験であった。

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▲写真1:プレミアムキオスクの全景。(クリックで拡大)

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▲写真2:冷蔵庫に収納されたプレミアム冷茶。値段のプレミアム感が光る。(クリックで拡大)

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▲写真3:プレミアム冷茶のボトル全景(クリックで拡大)

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▲写真4:取扱説明書が添付されている。(クリックで拡大)

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▲写真5:抹茶が冷水の中に投下される。(クリックで拡大)

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▲写真6:シェイクして、点て終わったところ。(クリックで拡大)

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▲写真7:キャップを湯飲みにして、出来上がり! (クリックで拡大)



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