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オールラウンドな新世代CAD
「Fusion 360」の実像に迫る!

オートデスクが低価格で提供している3D CAD「Fusion 360」。さまざまなモデリングツールに加え、レンダリング、解析、CAMなどの機能も搭載。オールマイティなツールとして注目を集めている。ここではプロデザイナーにとって「Fusion 360」は使えるツールかどうかの視点を軸に、オートデスクFusion 360 エヴァンジェリストの藤村祐爾氏に話を聞いた。

藤村祐爾:1979年生まれ。18歳の時に渡米。 工業デザイン学科を卒業後、ニューヨークで6年ほど工業デザイナーとして活動し、2010年に帰国。工業デザインソフトのテクニカルプリセールスとして活動後、現在、オートデスク株式会社インダストリーストラテジー&マーケティングFusion 360エヴァンジェリストとして活動中。
http://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/overview

取材協力:オートデスク株式会社
http://www.autodesk.co.jp/


●Fusion 360はどんなソフト?

--ではまず、Fusion 360の概要、ユーザー状況などからお話いただけますか。

藤村:「Fusion 360」は、2012年に開発が始まり、2014年に製品としてリリースされましたので、かれこれ2年半ほどの製品です。

現時点でターゲットにしているユーザー層というのは、学生、個人ユーザー、スタートアップ(実際に製品を作っている小さな小売事業主、年間売上1,000万円以下の企業)の方々が中心なのですが、ゆくゆくは幅広い企業でも活用していただきたいと考えています。

とくにこれからモノ作りでビジネスを考えているスタートアップの方々にとって、数100万円かかる3D CADの導入はなかなか敷居が高いので、まずFusion 360をお使いいただきたいと考えています。

--Fusion 360は多機能、オールマイティ、しかも低価格ですが、その開発の狙いを教えてください。

藤村:オートデスクの次世代CADとして開発するときに調査したユーザーの声としては、「いろいろなソフトを学ぶ手間を減らしたい」「単一のプラットフォーム上でいろいろなことができるソフトが便利」というリクエストが一番多かったのです。

今の世の中でプロダクトを作ろうと思うと、ソフトも3~4種類使えないと、仕事にならないというのが現状だと思います。それは、グラフィックデザイナーさんなどが「PhotoshopとIllustratorが1本だったら楽なのに」と思う感覚に近いと思います。

ただそういうソフトを開発しても価格が100万円、200万円では、従来のソフトと変わらない。それを低価格で提供することにFusion 360の意味があります。

それと、これまで3Dプリンタが普及してきても、3D CADはあまり話題にならなかった。3Dプリンタに興味を持っても、蓋を開けてみたら「3D CADがいるの? じゃあいい」と引いてしまった人も少なくないと思います。我々メーカーの立場から見れば、CADユーザーの裾野が広がらないと、ビジネスの拡大もないですから、より幅広い層のユーザーを獲得するためにも、低価格であることは重要だと考えます。

--Fusion 360の利用料金は、個人は無料、法人ユーザーはサブスクリプションで月々5,400円ですね。

藤村:企業ユーザーさんも作業期間中や忙しい時だけ、月単位でご利用いただけますので、サブスクリプションは時代に合っていると思います。

また個人、学生、スタートアップの方々は無料でお使いいただけます。2、3人で起業して、これからまさに羽ばたこうとしている人たちにはFusion 360を存分に活用していただきたいです。

●Fusion 360とクラウド利用

--Fusion 360はクラウドを前提にしているようですね。

藤村:もう1点プッシュしたいのは、オートデスクは今後、3D CADがクラウド環境と併用で利用されると考えています。Fusion 360におけるクラウドのメリットはデータ管理とレンダリングや解析など、どうしても時間がかかる計算の並列処理です。

従来3Dデータを誰かに送付したいときは、まずファイルをZIP化し、どこかのデータ転送サービスにアップロードして、そのリンク先を相手先にメールするという手順が必要でした。相手先はその逆の手順を行って、ようやくファイルを入手できます。これは明らかに効率が悪いプロセスです。

また、1万台のPCを目の前に用意することはできませんが、クラウドであれば個人でもサーバーの力を借りて1万台のマシンで並列計算させることが可能です。レンダリング処理をクラウドに投げれば、手元のマシンで3時間かかる処理も20分で完了します。今後は解析シミュレーションも可能にする予定です。

--Fusion 360をローカルにインストールしておけば、自動的にクラウド利用ができるわけですか?

藤村:オートデスクのクラウドサービス「A360」にアカウントを作っていただくことになります。利用方法はFusion 360による作成データの保存先をクラウドにするだけです。

クラウドにデータを上げておけば、データ管理やレンダリングの並列処理だけではなく、PC、ノートPC、タブレット、スマートフォンなど、どんな端末からでも専用アプリでアクセス可能です。タブレット/スマホではビューワーのみの利用になりますが、寸法ツールがついているので、確認作業はどこでも手軽に行えます。

またブラウザー経由のアプリ「ライブレビュー」を用いて「A360」にアクセスすれば、より高度な閲覧をリアルタイムで行うことができます。

 



話を聞いたオートデスク株式会社インダストリーストラテジー&マーケティングFusion 360 エヴァンジェリストの藤村祐爾氏
●デザイナーにもエンジニアにも

--Fusion 360の現在のユーザー数はどれくらいですか?

藤村:マンスリーアクティブユーザー(1ヶ月間のアクティブな利用者数)でのカウントになりますが、ワールドワイドで約5万人です。ユーザー数でいえばその倍くらいになると思います。ちなみに日本はアメリカに次ぐ第2位のユーザー数を抱えており、Fusion 360のユーザー数は、現在、世界中で右肩上がりで推移しています。

--繰り返しになりますが、スタートアップ、つまりモノ作りで起業したいけど、お金があまりないといった企業ユーザーがFusion 360のメインターゲットなのですか?

藤村:Fusion 360をお勧めする利点は価格だけではないのですが、スタートアップ企業の場合、やはりソフトの価格というのは選定理由の大きなウェイトを占めていると思います。そのなかで、仮に安価なものを選択されたとして、それが最適な選択ではない場合も少なくないです。最初に不適切なツールを選ぶと結局無駄になってしまうことが多いんです。しいて言えば、「これでなんとかできる」というのは、概ね最善の選択ではないということです。

Fusion 360はソリッドモデル、サーフェスモデル、ポリゴンモデルを持っていて、それをハイブリッドにして行き来できるというメリットがあります。

履歴もオンオフ切り替えられるので、ソリッドモデルの形状修正なども可能です。今後はメッシュも入れていきますので、そうなると世界で唯一、ソリッド、サーフェス、ポリゴン、メッシュを単一プラットフォームで管理できるCADとなります。しかもスタートアップの方々には無料でご利用いただけます。

ちなみにFusion 360のスカルプト機能は、オートデスクが数年前に買収した、T-Spline for Rhinoを開発しているT-Spline社のものを搭載しています(会社はすでに統合済み)。このT-Splineによって、ポリゴンモデルがボタン1つでサーフェスやソリッドデータになるメリットは、作業効率を上げるという意味で本当にすごいと思います。スケッチして、サクっと3Dモデルにして、ポリゴンでモデリングした形状の上にスケッチをさらに描き込む。こういったワークフローも可能になりました。

コンセプトデザインや初期アイデアの段階で、自由奔放に押したり引いたりとか行うなら、時代はポリゴンだと思います。ポリゴンで作って、ボタン1つでサーフェス化。ドアノブや自転車のハンドルなど有機的な形状もすぐに作れます。

ただ現時点でのFusion 360のサーフェス機能(パッチ)はNURBSではないので、それが弊社のAliasのようなモデラーになれば完璧です。

--Fusion 360は、デザイナーとエンジニアでしたらどちらにより適していますか?

藤村:もちろん両方のユーザーに使っていただきたいです。単一プラットフォームですからデータのやり取りもスムーズで、デザイナーとエンジニアをつなぐツールとしても優れています。

--エンジン的にはInventorからの流用は多いのですか?

藤村:そうですね。それがハイブリッド化して独自の進化をしています。感覚的な比較で言えば、Fusion 360はハイエンドCADと比較して7割前後の機能やパフォーマンスかもしれませんが、通常の制作ではハイエンドCADと同等レベルのことが安価に実現できます。

さすがにハイエンドCADのような大規模アセンブリには向きませんが、パーツが100くらいの製品であれば最適なツールになると思います。例えばハイエンドCADのユーザーさんはその機能の100%を使い尽くしているでしょうか? 一部の機能だけによる簡単なモデル制作など、本来のパフォーマンスの3割程度しか使っていないようであれば、ぜひFusion 360を試していただきたいです。部分的にはハイエンドを凌駕する機能をもっています。

データの読み込みに関しては、Fusion 360は他社製も含む、主要CADのネイティブファイルを読み込むことができます(履歴は消えます)。出力も一般的な中間フォーマットには対応しています。

●解析やレンダリングも可能

--オールマイティなツールということで、Fusion 360では簡単な解析も行えるようですね。

藤村:Fusion 360はCAMや解析シミュレーションも行えます。例えば3Dデータの形状の解析を行う場合、Fusion 360に読み込んだデータであれば、解析結果の修正を元の設計者に戻すことなく、その場でFusion 360で行えます。またダイレクトモデリングを活かして、フィレットなどを実に簡単に削除していくことができます。このような機能は解析者には非常に便利なんです。

--どういった種類の解析ができるのですか?

藤村:Fusion 360では線形静解析(力)、固有値解析(振動系)、熱解析などのシミュレーションが行えます。それらに加え、今後はトポロジー最適化やCFDなども入れていく予定です。私個人の経験でお伝えするならば、デザイナーさんで解析にもすごく詳しいという方はそれほど多くはありません。ただ、この形状で無理がないかどうかの傾向は知りたいと言うのがデザイナーの要望だと思います。

例えばあるものをモデリングしたときにFusion 360はそこに力を加えて、そのオブジェクトにどれだけの力を加えるとどういう挙動になるのかを知ることができます。プラスチックであれば、変位、安全率を知ることで、形状の修正に役立てることができます。

--なるほど、上流で簡単な解析が行えれば、後工程での修正も少なくなりそうです。

藤村:その通りだと思います。Fusion 360はオールマイティでありながら、実践的にモノ作りが行えるので、企業に取ってはコストメリットが大きいと思います。それと繰り返しになりますが、クラウドを活用していただくことで、情報共有、コミュニケーションの円滑さも含めた自由なモノ作り環境にご利用いただけると思います。これは従来のCADではできなかったことです。

--ちなみにレンダリングはいかがですか?

藤村:Fusion 360にはハイエンドレンダラー「Showcase」のエンジンを用いています。静止画のレンダリングだけではなく、モーションをアニメーションとして描き出すこともできるので、アセンブリに対して動きをつけて、機構の挙動などをアニメーションで書き出し検討することができます。

 



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▲電車のモデリングUI。ソリッドモデリングとポリゴンモデリングのハイブリッドモデリング。(クリックで拡大)


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▲レンダリングのUI。高品質なレンダリングを簡単に作成可能(クリックで拡大)

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▲シミュレーション機能で事前に傾向をチェック。(クリックで拡大)

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▲パーツ、アセンブリを図面化し、断面、BOM、バルーンで管理。(クリックで拡大)

 

 

 

 

 

 




●3Dプリンタと「123D」とFusion 360

--基本プロ仕様ということが分かりましたが、3D CADを使っていないエントリーユーザーに向けてはどのような配慮があるのでしょうか。

藤村:3Dプリンタのユーザーは、3Dデータの必要性に直面し、初めて3D CADを使う方もいます。弊社のWebブラウザベースの3Dツール「Tinkercad」で作られたモデルを用いる人もいますが、その次に、多くの人はご自身で形状を作りたくなります。「123D Design」のような簡単な3Dモデリングツールもありますが、履歴はありませんし、設計となると物足りない。そういう人にはFusion 360をご利用いただきたいです。ステップアップできるわけですね。もちろん最初からFusion 360をお使いいただくこともできます。以前小学校高学年を対象にしたセミナーで、3時間ほどのワークショップを行った際には、最後はみんな自分でモデリングを始めていました。

--Fusion 360は多機能ですので、初心者にはインターフェイスが分かりにくいのではないですか?

藤村:初心者にも分かりやすいオートデスクの次世代UIを搭載して極力シンプルになっています。例えばモデリング、CAMなど用途によって画面上のツールが変わりますので、モデリング中に他の機能のボタンなどがあって、混乱するということはありません。操作性は統一しています。

--初心者がモデリングするとしたら、どんな用途が向いていますか?

藤村:やはりプロダクトデザイン系、家具、メカものなどが得意ですが、逆に人体やキャラクター系には特化していません。そういう場合はスカルプト系のツールなど、用途に応じて使い分けていただければと思います。


●新時代のモノ作りプラットフォームを目指して

--プロもエントリーも気軽に使える3D CADは魅力的です。

藤村:今世の中にある多くの3D CADと比べ、Fusion 360は単に3Dデータを作成するだけに留まらず、その他のモノ作りに役立つ機能とシームレス化することで、シミュレーションやCAM、レンダリング、クラウドでデータ管理も行える、従来の枠を超えたソフトになっています。

Fusion 360は今後、新たな時代のモノ作りプラットフォームの土台になることを目指しています。例えば開発プロセスの効率化。何かを設計していてネジが必要になったら、ネジやナット、ボルトなどのデータをダウンロードするだけでなく、実際にFusion 360のUIから、ネジメーカーのWebサイトに飛んですぐ購入できる効率的なシステムの構築などがあげられます。

それと基板、PCBの回路設計CADなどとも連携することで、ボタン1つで基板データを3Dデータ化し、ハードの3Dデータに組み込める仕組みを検討しています。筐体と内部基板の干渉チェックなども全てFusion 360の3D空間上で簡単に行えるようになります。そして製造工程に関しては、Web上で見積もりサービスなどとも連携できると思います。

世界中のFusionプラットフォームでモノが作れる形を整えていきたいです。ハイエンドCADとも棲み分けつつ、既存の他社CADを含めたソフト群とコラボできればよいのではないでしょうか。今後はVRのモノ作りへの活用も広がっていきます。Fusion 360ではすでにマイクロソフトさんのHololendsと連携できるように開発を進めており、近い将来、自分の設計データが簡単に机の上にホログラムで表示されるという世界が来ると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=Hx6biWE2VsM

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▲マイクロソフトHololendsとも連携予定。(クリックで拡大)

--ハイエンドのリプレースを狙うと言うより、エントリーまで含めた、次世代の総合的なモノ作りプラットフォーム計画ですね。Fusion 360は、個人から企業まで、幅広いニーズに対応できそうですね

藤村:私の最終的な目標は、例えば私の母親が「ちょっとFusion教えて」と言ってくるくらい、3Dの敷居が下がったような世の中が来ることですね(笑)。今までまったく3D CADと無縁だった人たちが、それを当たり前のようにやり始める日が来るのはすごいことだと思いませんか。

--ありがとうございました。

 

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▲アセンブリをボタン1つで自動分解。(クリックで拡大)

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▲3軸から割り出し5軸までをカバーしたCAM。(クリックで拡大)


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▲T-Spline(ポリゴン)モデルで有機形状を作成し、簡単にソリッド化。(クリックで拡大)

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▲データをクラウドで管理(ローカル管理も可能)。(クリックで拡大)


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▲パーツを指定したコメント機能で3Dデータを活用。(クリックで拡大)





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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