●別ブランドとしての「テラダモケイ」
−−寺田さんにお尋ねしますが、建築系、プロダクト系を手がけられてきて、紙のデザインは初めてだったのですか。
寺田:紙のプロダクトは初めてですね。ただ、やはり事務所では紙は一番身近な素材だし、ちょっとしたスタディ模型などは紙で作ったりしますので、親しみはありました。
−−他にも紙のプロダクトの予定はありますか。また、テラダモケイとかみの工作所はどのように展開されるのでしょうか。
寺田:いろいろ構想はあるのですが。かみの工作所から出るのか、テラダモケイから出るのかは、山田さんと一緒に考えていきます。山田さんは技術開発のところからやってくださるので。モノを作るときはそこからやらないと面白くないので、開発も含めた企画を検討していきたいと思います。
−−今回、かみの工作所の中から出していた添景セットを、テラダモケイとして新ブランドにした経緯をお聞かせください。
寺田:かみの工作所というのはご存知のようにいろいろなデザイナーの方が関わっていて、「紙で道具を作りましょう」というお題のもとに、萩原修さんがプロデューサーとなってまとめてくださっています。その中で添景セットも生まれたんですけども、これは紙の道具といってもかなり専門的なもので、他の作品とは毛色が違うなという思いはありました。それと今、シリーズが増えてきていますので、バリエーションとしても他の作品とバランスがとれなくなってきています。
−−なるほど。
寺田:かみの工作所の作品群の中で添景セットのボリュームがすごく増えてきてしまったので、いろいろな意味でバランスがちょっと取りづらくなってきた。そこでブランド分け、のれん分けしたほうがいいだろうというような判断に至ったんですね。
僕自身、この1/100モデルをもう少し自由に発展させたいなという気持ちもあったのと、萩原さんの方から、やはり添景セットは添景セットでイメージ付けをしたほうがいいので、分けたほうがいいんじゃないかなということを言ってくれたので、そういった感じでシンクロした感じではありました。
ただテラダモケイの販売も山田さんの扱いになりますので、テラダモケイは今後も開発も含め山田さんとコラボレーションしていきます。
●かみの工作所のルール
−−かみの工作所の作品はバリエーションも増えましたね。
山田:今度4月27日(水)から5月22日(日)まで、AXIS(リビング・モティーフ)で「ネンチャクシコウ展」を計画しています。要は粘着素材というお題の中で、紙にまつわる紙の道具というのを今、進行中です。
−−粘着素材とはどういうものですか。
山田:それはシール素材であったり、広い意味での貼るものです。だいたいがシール素材的なものにはなるんですが、それを絡めたかたちの展覧会です。2010年は「トクショクシコウ展」というのをやりまして、「シコウ展」をキーワードに2回目が「ネンチャクシコウ」というわけです。
−−そこでまた新しいラインナップが登場するわけですね。
山田:そうですね。もちろん寺田さんにも参加していただくのと、あとはトラフ(建築設計事務所)さんと、アートディレクターの三星(安澄)さん、新しく加わるところで安積伸さん。それとサダヒロカズノリさん、山田佳一朗さん。イラスト、アーティスト系の方々6名で、新しいことをお披露目しようかなと計画しています。
−−紙は、グラフィック系のデザイナーもプロダクト系のデザイナーも参加しやすい、ちょうど中間点にあるような素材なのかもしれません。
山田:そうですね。今まで紙といえばグラフィック系が大半でしたが、かみの工作所の新しいところは建築家の方にも加わっていただけたことですね。
−−そこは新しいですよね。
山田:うちの印刷加工は、立ち上がって箱になるとか、ただの平面ではないものが多いもので。グラフィックの方ももちろんですが、建築的な発想とか、プロダクト的な発想で紙を捉えることが面白くなってきているのでしょうか。
−−紙といえば、例えばダンボール素材を作ったイスといったプロダクトもありますが、かみの工作所のコンセプトとしてはそこまではいかないのですか。イスとか引き出しとか、もう少し大きいものなど。
山田:別に縛りは今までないんですけど。なかったですね。
寺田:紙で道具を作る、ツールを作るというコンセプトは萩原さん、ずっとおっしゃっています。例えばイスとか収納とかいうスケールのモノは、たまたまないという感じですね。そういうのはダメと言われたことはないです。
山田:あと、今展開しているお店などどうしても展示スペースが限られてるもので、わりとA4以内が多いです(笑)。
−−A4以内ですね(笑)。
山田:無言の何か(笑)。例えばA3とかになるとお店のほうがけっこう難色を示すかもしれません。
−−なるほど。
寺田:商品としてA4以内の大きさのほうが売りやすいですよとか、店舗に置きやすいとか、パッケージもちょっと考えてねみたいなことはお話しいただくので、なんとなくそれで小さいものに収斂してきているのはあるかもしれないですね。平たいものとか薄いものとか、送りやすいものとか。
山田:そうそう、傾向としては。
−−製品化に関しては、プロデューサーの萩原さんがジャッジをするのですか。
寺田:プロデューサーの萩原さんと、ディレクターの三星さんと、山田さんと、三者で合議してやってる感じではありますよね。
−−「これはちょっとかみの工作所のテイストじゃないな」というものは弾かれる?
寺田:ありますよね。アイデアの段階で、「ちょっとかみの工作所っぽくないね」みたいなことを言われると、ああなんとなく却下なんだなみたいな(笑い)。
山田:(笑)。
●機械だけではできないノウハウ
−−今まで作った中で一番大変だった作品は何ですか。
山田:先ほども少し触れましたが、寺田さんの添景セットの1/100シリーズは最初はかなり大変でしたね。レーザーカットは僕らに今までなかった技術、なかった領域で、それを1から開拓して進めていったので。最初に寺田さんからラフをもらって「これ無理だぞ〜」って心の中では思っていたんですけど(笑)。
−−紙のレーザー加工機は通常どんな風に使われているのでしょうか。
山田:最近はクリスマスカードとかですね。
−−ああいうファンシー系はいろいろバリエーションありますね。
寺田:レーザーカットでやっていますと種明かしをしているんですけど、じゃあ機械があるから誰でも同じようにできるかというと、おそらくできないと思います。機械をはじめ実はいろいろな調整があるので。だからそんな簡単には真似できないよね、というようなところまではもってきていますね。
−−けっこうノウハウも蓄えられているのですね。機械があるからデータを流せばできるというものでもない。
寺田:そうですね。その試行錯誤のところで山田さんにはだいぶ苦労していただきました。
−−用紙、素材そのものの選び方からいろいろあるのですか。
山田:そうですね。すごく繊細なので、1箇所抜けないだけでも商品にならないです、普通は。だから刃と紙の、なんていうのかな。バランスとか、その日の湿度によっても出方が変わったりとかする。紙の厚さやテンションの要因もあり、簡単には読みきれないです。
●紙の可能性を切り拓く
−−紙を生かしたプロダクトで魅力的なモノを作るという方向性を考えていったときに、案外限定されてしまうものなのか、それとも加工技術を含めてもっと広がっていくものなのか。そういう可能性はどうお考えですか。
山田:かみの工作所には、紙の可能性を切り拓くプロジェクトといった謳い文句があります。まさにそれを、デザイナーさんの視点で、僕らの工場とか設備とかやってきたことです。印刷や加工の業界はすごくコンサバティブで、今までやったことがないことは基本的にできないというのがまずはあります。
−−「こんなのできない」が、はじめにありき(笑)。
山田:はじめにありきで(笑)。だからうちの現場にしろ営業にしろ、僕がデザイナーさんの案を持って「こんなのやれない?」と言うと、最初はすごく抵抗もありました。
でも、今までダテに何十年もやっているわけではないので、これまでの応用や視点を変えて取り組んでみたりすると、「なんだできるじゃない」みたいなことも往々にしてあります。
−−とりあえずそのコンサバティブな現場の方を納得させるところから始まった、ということでもありますね。
山田:僕の仕事はほぼそこかもしれません(笑)。
−−デザイナーは、素材としての紙のことを熟知している人ばかりではないと思います。その面でもチャレンジブルですね。
山田:そうですね。グラフィック系の方は印刷のこともご存知ですが、そうではない方は、紙の種類だとか適正だとか印刷のことはあまりご存じないんです。それでけっこうムチャ振りとかありますけど、それはそれで真摯に受け入れて、きちっと説明するところは説明して進めているということですかね。
でもムチャ振りされて「いや〜これは…」というところでも、それをきっかけで何かやって逆に発見させられる、勉強させていただくということもすごくあります。
−−なるほどね。そういう意味でも、山田さんが非常に柔軟だから、プロダクトが広がっていったという感じがします。現場とデザイナーさんの間に入り、インターフェイスになられていますよね。
山田:無謀と言われているところです(笑)。
−−かみの工作所は5年展開されてきて、認知度はどんどん高まってきていると思いますが、ビジネス的にも順調に立ち上がってきているのですか。
山田:ここにきて少しずつという感じです。うちだけが儲かっているという状況ではなくて、関わっているデザイナーさんにやってよかったねと思っていただけるような、Win-Winの関係をなんとか構築したいというのが今すごく思っていることです。
−−こういったデザイナーさんと直結した紙のプロダクトは、海外でもあまり類を見ない気がします。本やカードなどにはけっこう凝ったものもありますけど、独立した製品としてこういう幅広い展開をされているプロダクトは、あまり聞かないですよね。だからそういう意味でもフロンティアですね。
寺田:あまりないかもねえ。紙という括りで展開しているブランドはないですね。
山田:そのへんの発想は萩原さんにすごく感謝という感じです。僕だけではとてもじゃないけど、そこまでは発想できなかっただろうし。萩原さんがいて僕らがいて、もちろんデザイナーさんがいて。この三者で、いいテンションで奇跡的にはまって成立しているという感じが今のところはすごくあります。
−−なるほどね。今はデザイナーがかみの工作所で何か作りたいと思いたくなるプロダクトになっていますよね。
山田:そう言っていただけるととても嬉しいです。
−−ありがとうございました。
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