┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第34号・・・2013/1/28       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第34号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第20回:名ホスト ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第10回:大森謙一郎 /KENICHIRO OOMORI MOVING DESIGN ●編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第20回:名ホスト ○大使館の並びにある自宅 ミクさんの自宅に呼ばれたのは東京に雪が降った数日後の週末だった。まだ、 年始の雰囲気が残る夕暮れ時の明治通りは車の往来もまばらだった。寒いこと もあってなかなかタクシーがつかまらず、じれてきた頃にようやく空車がやっ てきた。急いで乗り込むと、がちがちと震える声でタクシーの運転手さんに行 き先を伝え、住所をカーナビの画面に入力してもらった。ところがカーナビに は該当する番地は表示されないという。腕時計をみるとすでに約束の時間の19 時にぎりぎり間に合うかどうかの時刻になっていた。 冷え切った身体を、タクシーの暖かい室内の空気で温めながら、携帯を取り出 してメールに添付されていたPDFの地図を探した。直線距離ではそんなに遠い ところではなかったので、10分もしないで目的地近辺まで到着した。住所から マンションではないことは分かっていたが、そのあたりではどの家にも表札が 出ていないため、なかなか確信が得られず、ぐるぐると辺りをまわることにな ってしまった。各国の大使館が並ぶ一帯は、一軒の家の区画が大きい。そのた めに玄関から玄関までの距離が長く歩いて探すには骨が折れる。目的の家が見 つかるまではタクシーに待ってもらうことにした。 それらしい家を特定し、玄関近くをうろうろしてみた。しかしどうしても確信 が持てなかったので、きびすを返したときのことだ。中から70代の女性が出て きて、「こんばんは」と声をかけてきた。いかにも来客を予期していたような 感じだったので、「西山です」と答えると、「お待ちしていました」と返して くれたので、ほっとした。ずっと先のほうに待たしてあったタクシーまで代金 を払いに行って戻ってくると、寒いのにも関わらずコートも着ないでその女性 は、玄関先でずっと待っていてくれた。 ○PR会社を経営するミクさんと奥村さん その日のホスト役のミクさんは有名なPR会社の社長を務めている。CUUSOOのア ドバイザリーボードの1人から、機会があったら、会っておきないということ を言われていたので名前は覚えていた。 靴を脱いで家の中に入ると、はたしてこの人物が家の主と思われる女性の姿が 目に入ってきた。黒のタートル、黒のスラックスに細身のマロン色のベルトを アクセントに合わせた女性が、今夜のホストのミクさんだった。そして玄関を 開けてくれた女性のことを紹介してくれた。その女性は、奥村さんという名で 、今日の料理をサーブしてくれるという。ミクさんの家で長年もお手伝いをし ているとのことだった。 到着したのは約束の時刻ちょうどだったが、すでに何人かの先客がいた。僕を 除く4人のゲストは、オペラ歌手で弁護士という才媛の知人、イギリス生まれ の日本人で投資稼業の友人、国際NGO日本代表夫婦、最近子供をもうけたばか りのイギリス人ジャーナリストという顔ぶれだった。全員40代前半ということ 以外、共通の接点がどうしても見出せなかった。 ミクさんは簡単に全員の自己紹介が終わったことを確認すると、ゲストをダイ ニングに通した。魚の刺繍がしてあるテーブルクロスの上には、豆のサラダや チーズが用意してあり、すぐに食べ始められるようにセッティングが終わって いた。すべて奥村さんが準備をしていた。奥村さんはミクさんがホスト役を存 分にまっとうできるように、その他の業務をすべて仕切っていた。 ○母親の記憶 20年も前の話だが、商社マンだった父親は、南米に駐在している間、とにかく 家にお客さんをよく連れてきた。母親は父親のビジネスに関わりのあるお客さ んの名前と顔を全員覚えていたしたし、彼らのアテンドをするのが、自分の役 割だとわきまえていた。そして文字通り、夫婦で接待する毎日を送っていた。 今の時代、さすがにそこまでのことを商社マンはしないだろうが、当時は日本 食レストランもろくになく、味噌やしょうゆが海外で貴重品だった頃である。 外人に和食での接待をしようと思うと、自宅に呼ぶ以外方法がなかった。 ゲストには日本から南米に出張してきた日本人もいたし、これからプロジェク トを一緒に行う予定の現地のパートナー、クライアントや政府の高官もいた。 とにかく自宅に呼んでは、母親が手作りの料理をふるまった。その頻度は、週 に5回を超えることも珍しくなく、週末も平日もあまり関係がなかった。子供 たちはお客さんが家に来ている間は、客間に顔を出すことを許されず、自分の 部屋でじっとしていなければならない。インターネットも携帯もない時代であ る。本を読むか寝るかぐらいしかやることがなかった。その後、あまりにも不 憫に思ったのか、3人いる子供たちのために、大きなベータマックスのビデオ プレーヤーを購入してくれたが、母親は子供たちと過ごさずに父親と一緒に接 客をし続けた。その当時のことを思い出すと、母親は母親らしいことをしてく れなかったと今でも不満に思う。そして子供たちの面倒は母親ではなく、家に 住んでいた、ねねが見ていた。 父は他界してもういないが、母親と父親はいろんな意味でいいパートナーだっ た。母親は父親と一緒に仕事をしていたおかげで、一緒に悩みと楽しみを分か ち合っていたのかもしれないとも思う。そしてそのパートナーシップは3人の 子供の面倒をみる、ねねがいて初めて成り立っていたとも言える。奥村さんと ミクさんを見て、両親とねねのことを思い出していた。 ○ミクさんの目的 ミクさんは、全員が食事を食べ始めると、話を展開していった。PRが専門とい うことで、見事だった。そして、やがてゲスト全員がなぜそこにいるのかを知 るようになった。 ミクさんは日本にもっと移民が入ってくるように、政府に対してロビイングを していた。日本でも香港やシンガポールのように、東南アジア出身の家事ヘル パーやベビーシッターを廉価にお願いできるようにしたいと考えていた。日本 で日本人にシッターをお願いすると相場は自給1,500円である。1日お願いする と1万円超。20日お願いすると20万円を越す。ところが海外では月のお給金が3 万円程度で済むという。日本では贅沢というイメージがあるが、海外における ベビーシッターはむしろ誰もがアクセスできるサービスである。ひょっとした ら、自動車を保有するに近い感覚かもしれない。 移民の問題は国民のコンセンサスがないと反感を買いやすく、話題として非常 にセンシティブな内容だと聞く。実際僕の周りの人々の反応も賛否両論だ。そ んな中、海外経験が長く賛意を唱えてくれる人をまず味方につけたかったのだ ろう。ミクさんは働く女性や、共働きの夫婦を自宅でのディナーに呼んで、自 分のアイデアを提示し、自分の決意表明を実際のライフスタイルとともにプレ ゼンしたのだった。 「香港やシンガポールのように海外からベビーシッターやオペアが呼べるよう に、世の中を変えていきたい。そうすると、働く女性は増えるし、共働きのカ ップルはもっと仕事に打ち込めるようになるし、高いベビーシッターやヘルパ ーの値段も下がるはず」こうミクさんは食事の席で主張した。 確かにテーブルを囲んでいるのは、そのことが実現すると恩恵を受ける対象者 ばかりだった。つまり、海外で育って、かつて家にベビーシッターさんもしく はヘルパーさんがいた。共働きで、本業以外にボランティアや作家活動を続け ているため、恒常的に時間がなく家事がおろそかになっている。子供が近々生 まれる予定か、すでに子供おり、子供を見てもらうための両親の助けを簡単に 得ることができない。どのゲストもミクさんの話を聞きながら、頭のなかでそ のアイデアが実現したらどういう生活がおくれるようになるか反芻している様 子であった。 なるほど、と思った。このディナーは上手に設計されたPR活動の一環なのだ。 そしてそのプロットでは、奥村さんも重要な登場人物だったということだ。 西山 浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第10回:大森謙一郎/KENICHIRO OOMORI MOVING DESIGN ○5年 大学を卒業後、目指した留学の道を失い就職できずに、5年間飲食店のアルバ イトをしながら、知り合い伝いのプロダクトやグラフィックの仕事をしていま した。デザインの仕事といってもその稼ぎは工具の購入に消えてしまう程度、 今から思うと社会経験もなく中途半端な生活をしていた私が日々真剣に取り組 んでいる人たちと肩を並べられるわけがありませんでした。 そんな中、家具を独学で学びながら自宅で製作していた私に、大学より工房で 学生の製作を補助する仕事の誘いを受け、木工や金属加工を樹脂加工の機械を 使った製作をするようになりました。幅広い学生の疑問に答えたりアイデアを 形にすることは、私にとって大きな経験となり現在の活動の基礎となっている 気がします。5年目になりますが大学工房での仕事を始めたときが、ようやく 立ったスタートラインだったのかなと思う今日この頃です。 ○MOVING 見本市や地域のプロジェクトへの参加で、多くのデザイナーの方々と交流をさ せていただく機会があり、才能や技術を持つ方々の中で自分はどのように人の 役に立てるのかを模索しています。素材を加工する機会があること、浮かんだ アイデアを具現化し確認できることは、私にとっての大きな要素の1つです。 素材を含めた試作は、見た目だけでない人間工学を含めた身体と形状の関係の 探求をすることができる強みがあることを、徐々に理解し楽しめるようになっ てきたように思えます。身の回りのモノで人が直接扱うもの、触れるものすべ てが身体と動作が関わっていることを忘れないため、またmovedは「感動する」 という意味があり、物を通しての感動を多くの人と共有をしたいとの想いも込 め「MOVING DESIGN」を活動名にしています。 ○想いを創る 現在、さまざまな業態の方々とお付き合いをさせていただいています。素材や 製造工程によって作れるものは違いますが、その形態に関わらずクライアント の形にできない想いを具現化・実現化する手助けになれることを目標にしてい ます。 モノづくりは人によって大きく変わると私は感じています。同じモノを別々の 人が作った場合に同じ機械、方法で作ったとしても技術とは異なる次元の何か が違うと感じることがあります。たとえプラスチック製品を製造する量産機械 であっても、使う人のノウハウなどにより製品に違いが出てきたりもします。 その何かとはまだ具体的には分かりませんが、永年に渡り脈々と受け継がれて きたモノに対する想いなのかもしれません。そんな想いのようなものを表に浮 かび上がらせる、造形通訳者みたいな役割を果たしたいと考えています。 山中漆器の「SINAFU(しなふ)」では永く愛されるウッドボウルを作りたいと いう依頼への想いに対して、山中温泉が長年に渡り湯治客をもてなしてきた歴 史と共に歩んできた山中漆器を新しく表現することを目指し、「料理をより美 味しく魅せる木器」を提案しました。器の裏の指を添える部分に凹みを作るこ とで楽に持て、料理を美しく出すことができるというものです。シリーズで3 種類作りましたが、それぞれ持ち方が違うため凹みの形状も異なります。また さまざまな手の大きさにも適応する必要がありました。このため私自身が木工 ろくろを挽いていくつも試作品を作り、周りの人たちに持ってもらい感想をい ただくことを繰り返す中で、指の掛かりや持ちやすさを追求し、ようやくでき 上がったのが「SINAFU」です。私にとっても想いが詰まった木器となっている ため、多くの方に永く大切に使っていただけたら嬉しいです。 昨年からは製品の形状を創るのではなく、魅せ方や売り方を創るお仕事もさせ ていただいてます。「RENBLOCK/レンブロック」という間伐材を樹脂に混ぜ込 んだ特殊プラスチック素材で作られたインテリアブロックのブランディングな のですが、レンブロックのデザイナーでもある社長の想いを実現したいと奮闘 している最中です。 私が関わらせていただいた当初は、素材やエコである商品自体を打ち出してい ましたが、人に生活に密着した提案が必要との考えから、組み立てることで何 が生まれるのかを表現するようにホームページやパッケージをリニューアルし ました。少しづつではありますがその反応を感じられるようになってきていま す。 現在進行中で最も新しいプロジェクトとしては江戸切子の商品開発のお手伝い をさせていただいています。大変興味深い江戸切子の新しい取り組みに声を掛 けていただき、私にとっても新たなチャレンジとなっています。「光の屈折と 反射」が大きな鍵となる斬新な商品となりそうなのですが、その中にバランス のいい和みのような柔らかい要素を加えたいと考えています。私の想像を超え る化学反応が起こるのではと私自身も期待してところです。 私に文章が書けるかと心配していましたが、結構長くなってしまいました。読 みづらい点がありますことご了承ください。今後もさまざまな共有、共感が生 まれるよう日々を過ごせたらと思っています。ありがとうございました。 大森謙一郎/KENICHIRO OOMORI MOVING DESIGN 木工、金工、樹脂加工を自身で行い製造の可能性を探求中。地域産業とのコラ ボレーションによるブランドBridgE new experimental product designやセル フプロデュースブランドCentralを展開、企画から製造、販売までのデザイン 業務及びブランディング業務を行っています。 http://www.kenichirooomori.com ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 デスクトップオーディオ、というわけでもないのですが、音楽をイヤホンやヘ ッドホンで聴くことに少し飽きてきたので、机の上で小音量で臨場感のある音 楽を楽しめないかと検討しました。小型スピーカーにアンプを内蔵したいわゆ るアクティブスピーカーの音はあまり好みではないので、古いラジカセのスピ ーカーを取り出し、ワインボトルの入っていた木箱の両端に取り付けて、密閉 型のパッシブスピーカーを製作。これがなかなか能率がよくベースもどうにか 聴こえます。それにiPod touchなどを直結して鳴らしていましたが、さすがに ボリュームがもう少し欲しいときがあるので、先日、数千円の小さなデジタル アンプを購入。これが大正解で、ノイズのないクリアで立体的なサウンドを、 机の上で再現してくれています。次は評判のよい市販のフルレンジユニットを 用いて、デジタルアンプの実力をより発揮できそうなバスレフ型スピーカーを 作る予定です。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.34 2013年1月28日発行 2,700部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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