┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第32号・・・2012/11/26       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第32号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第18回:欲張りに生きる ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第8回:furnish(ファーニッシュ) ●編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◆◆ 消耗品プレゼントキャンペーン ◆◆◆Objetの3Dプリンタをご購入で ◆  プレゼントさせていただく消耗品は  ◆もれなく消耗品をプレゼント! ◆なんと最大120万円分 2012年12月28日まで◆    http://goo.gl/Obslv ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第18回:欲張りに生きる ○虎ノ門にあるホテルにて 突然彼女は、大きな声を出して騒がしく向こうからやってきた。そして土田さ んの首に手を回すとほおにキスをした。落ち着いた雰囲気の土田さんはスイス に本拠地を置く国際NGOの日本代表。普段は政治家や企業のトップと接しなけ ればならないので仕事柄あまり派手なことはしない。その土田さんが顔をほこ ろばせてうれしそうに歓談をするのだから一緒にいたみんなは、あ然として土 田さんとその女性を交互に見比べた。一手に視線を浴びているのに気がついた 2人は、釈明を余儀なくされた。 大学時代に学校行事の幹事を務めた2人は、いわばクラスメイトということだ った。土田さんもその女性も海外暮らしが長かったので、日本で会っても挨拶 はあちら風ということなのだった。頭では納得はしたもののやはり日本人同士 が抱擁して再会を喜びあうという映像に目が慣れていなかった。 そもそも彼女はその場に呼ばれているわけではなかった。土田さんがそこにい るということをたまたま知って、ふらりと入ってきただけなのであった。そし て気がついたら彼女はその会に普通に溶け込んでいた。 ○ハナさん その晩僕は知人のペーターが来日するというので虎ノ門にあるホテルの上層階 にあるラウンジに呼ばれていた。ペーターはスマートシティの専門家だ。僕が 関わった停電検索という市民から節電努力を集めるスマートフォンのアプリケ ーションの開発がきっかけになって知り合いになった。ペーターは発電だけに 頼るのではなく、蓄電や節電を上手に組み合わせることで都市のエネルギー問 題を解決するアプローチを提唱している世界レベルのシンカーだ。国際会議で も同席する機会が何度かあって気心が知れる中になっていた。 その日はスマートシティ関連の国内の関係者が集まっていた。政府の高官もい れば、コンサルティングファームのパートナーもきていて、半分社交、半分ビ ジネスといった感じの会だった。それが、その女性がやってきたおかげで随分 と趣向が変わった。 その女性の名前はハナさんだということが土田さんに紹介されて分かった。ハ ナさんは卒業後、大手外資コンサルティング会社に就職するも、その後PR会社 に転職したという。元々勤めていたコンサルティング会社の役員も何人かその 場にいたこともあってハナさんはすんなり会話に入ってきた。 しかし、全員が紺かグレーのスーツを着ている場にシルバーの金具をふんだん にあしらった黒革のライダースジャンパーは目立った。その底抜けに明るい雰 囲気や大振りなジェスチャー、そしてセンスは悪くないが、でもどちらかとい うと派手な格好はPR業界ではノーマルなのだとしても、だ。いずれにしても彼 女が登場してからは何の話しするにしても彼女は話題の中心になっていた。 ○いざ、中目黒へ。 23時も回った頃だろうか。ペーターが海外と電話会議をしなければならないと いうことで、中座をしたのを契機にお開きにしようということになった。その 週は東京デザイナーズウイークが開催されていたこともあったので、仲の良い デザイナーがたむろしているバーに顔だけ出しに行こうと思っていた。その趣 旨を伝えるとみんなも行きたいと言い出した。果たしてスーツ組とデザイン組 が仲良く交流できるか不安だったけれども、タクシーを2台呼んで、その中目 黒にあるバーに向かうことにした。 バーはほどよく込んでいて、よい雰囲気だった。そのお店の内装は、廃材で間 に合わせたかお金をかけずに自分たちで作ったかのどちらかで、中目黒っぽい といえば中目黒っぽかった。 10坪ない店内には50名近くいただろうか? うるさく怒鳴ったりする人もおら ず大きな音楽もかかっていなかったので、話をするには快適だった。 気がついたら土田さんをはじめ、スーツ組は到着するなりすでに先にきていた デザイナーたちと打ち解けていた。4割は海外から来たと思われる外国人で、 耳に入ってくる言語も少なくても4種類はあった。連れて行ったスーツ組みが あまりなじめないのではないかという心配は杞憂に終わった。ほっとしたとこ ろで、僕も何か飲もうと遅れてカウンターに近づくと、ホテルでは話があまり できなかったハナさんがそこにいた。 ○子供は要らない どういった話の流れかよく覚えていないが、最近生まれた僕の子供の話になっ た。僕と妻の結婚は晩婚だったので、子供を授かれたことを天に感謝している。 子供が成人する頃には、僕らはもう60歳を越しているし、早くから結婚した同 級生には孫ができていることを考えると、気分は親とおじいちゃんの中間ぐら いなのだということを話したら、ハナさんはワハハと豪快に笑った。 「最近、ハナさんのプライベートは充実しているんですか?」と話題を向ける と、彼女の反応は瞬速で返ってきた。 「私、子供はもたないって随分前に決めたんです。」 「随分、断定的ですね。」 「ええ。でも、だんなは子供が欲しいっていうんですよ」 「なぜ、子供は要らないんですか?」 「だって、こどもができたら犠牲にしなければいけない大切なものがたくさん あるから…」 ハナさんは台湾生まれだという。だから中国語も話せる。英語もネイティブ。 日本語もばっちりだ。プログラミングもできて社交的。コンサルティングファ ームいたからそれなりにもビジネスも分かる。海外を飛び回る仕事を続けるに は、子育てをしていたら無理だという。 見るからにファッションもエンジョイしているようだ。結婚もしていて。充実 した生活を送っているのが見て取れる。言わんとしていることは、よく分かっ た。 ○ふとしたひとこと 「もっと欲張りに生きたらどうですか」と何気に言ってみた。 「?」 意図せずその一言が、彼女の琴線に触れたようだった。 「僕も妻も同じことを考えて40歳になるまで独身で通してきたし、子供も持た ない方針だったんです。でも今は、親になってよかったと思っています」 「40を越してから子供ができる確率はグンと下がるんです。だから妻と僕は一 時、養子をもらうことを覚悟していました。僕らはたまたま、元気な子供を授 かれたけど、リスクバランスを考えるともう少しだけ早くスタートすることを 若い人にはアドバイスしますけどね」 ハナさんは、そのバーにしてはちゃんとしたワイングラスに、なみなみと注が れたそれほど悪くない赤ワインに目を落として、黙ってグラスに唇をつけた。 その間しばらくワインを飲むでもなく、ワインが唇に触れるにまかせて、先の 僕のコメントを反芻しているようだった。呼吸するたびワイングラスは白く曇 ったり透明になったりを繰り返していた。そしてやがて、ハナさんはニコッと 微笑むと無言でうなずいた。 ほどなく、僕はスーツ組の人に誘われて彼らの行きつけのバーにもう一軒だけ 付き合うことになってみんなと別れた。 翌朝起きて携帯をチェックすると、ハナさんからメールが届いていた。 「もっと欲張りに生きることにしました」 西山 浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第8回:furnish(ファーニッシュ) 2005年に立ち上げたfurnishですが、デザインの「何」も知らない2人が開業当 時によく話をしていました。 「自分にとってデザインとはなんだろう?」 furnishを立ち上げた当初は、名前の通り家具にまつわる商品を展開していま した。 まったくデザインの仕事や勉強をしたことのない2人が、当時アジアンテイス トの家具が流行っていたのをいいことに「流行に乗って丸儲け」などと考えな がら自分たちでデザインした図面(今思うとかなり簡易的なものですが)を持 って、いざインドネシアへ。 家具工場で図面を見せながら相談し、「大丈夫ウチなら良いもの作るよ」の言 葉にまかせて帰国して待つこと2ヶ月、届いた家具は本革ではなく合皮、しか もガタガタでサイズも違う。さらには注文した数量よりも数が足りない。「ど ういうことだ!」。素材やサイズの違いの文句と先払いした分の過払料金の返 金を願うためすぐさま問い合わせすると、工場は「大丈夫。今回のソファーは 本革よりも高級な合皮を使用しましたから。ガタガタするのは自然の木を使っ ているからですよ。あとお金の件に関しましては次回の注文で過払い金分をデ ィスカウントしますから」。 言葉が出ませんでした。注文したものと違うし自然の木を使ってるって…自然 のものではない木もあるのか? 工場側のお気楽な答えに関して、ほとんどの開業資金を費やしてしまった自分 たちが情けなくなってしまいました。デザインをすることは作り手のことも知 らなくてはいけないのだと痛感しました。モノを作るすべてのことを知らない といけないんだと。結局売り物にならない家具達は友人や知人に原価同然で買 ってもらい、また1からのスタートとなりました。 ○自分たちでモノを作ることはできないかな? 家具での失敗を期に次に考えたのは商品を自分たちで作ること。生産から管理 まで自分たちで行えば、納得ができる商品を作ることが可能だからだ。 簡単そうで難しい局面にいきなり来てしまった。すでに運営資金も底をつき始 め、デザイナーや製作者に知合いがいるわけでもなく、何を作ることができる のかもまったく分からない状態でした。 とにかく何かを作ってしまうしかない。手当たり次第身近にある素材を集めて 2人で朝から晩まで考える。考えて考えて、考えた挙句にフェルトを用いたコ ースターが完成した。えっ? 結局ただのフェルトのコースター?… そうなんです。ただのフェルトのコースターだったんです。しかし2人の中で は最高の出来でした。普通のコースターなのに商品としては2人の中で納得の いくものでした。早速いろいろな小売店に連絡をしては営業、断られてはまた 営業の日々。ある日飛び込みで行った家具店のオーナーが興味を持ってくれま した。コースターに興味を持ってくれた以上に僕らの話に興味を持ってくれた のです。モノを作る気持ちと不器用な熱意に興味を持っていただき、商品の販 売がスタート。商品が売れれば新商品が作りたくなる。自分たちで作れる商品 はいつもフェルト素材。商品ができればまた扱ってくれる。いつしかfurnish はフェルト商品でのラインアップになりました。 ○もっと商品を沢山の人に見てもらいたい 商品を売ることを覚えたら、次はもっともっと多くの店で商品を扱ってもらい たい。自分たちでまわる営業にも限界がある。出展料や準備資金等をなんとか 工面して時期をみて展示会への出展を決めた。展示会では多くの人たちに見て いただき、意見を頂戴し、商談も決まった。さらに本格的な販売がスタートし た。 そして展示会での収穫は販売店の拡大だけではではなかった。同じ展示会に出 展されていたデザイナーやメーカーの方々の交流が僕らにとってとても大きな ものでした。今まで同業の知合いがいなかった僕らが仕事での悩みや相談がで きる人達に出会えたことが今のfurnishがある大きな理由になると思います。 ○DESIGN HEARTの仲間との出会い さまざまなデザイナーとお会いして話をさせていただいたり、一緒にイベント に参加したり…。つきあえばつきあう程奥が深くのめり込んでいきました。そ んな中、2009年に参加した展示会で出会った仲間が「今度皆で展示会を企画し てみよう」との呼びかけに集まり名付けた名前が「DESIGN HEARTデザインハー ト」。http://www.designheart.net/ 今ではグループでの展示会だけではなく、さまざまなイベントを企画したり、 全員で1つのプロジェクトを企画したりと多岐に渡って活動をしています。こ の、DESIGN HEARTは建築家、木工、家具職人、溶接職人、インテリアデザイナ ー、グラフィックデザイナーやプロダクトデザイナーなど、さまざまなメンバ ーで構成。皆が各々の意見を尊重し、他にない新しい「モノ」や「コト」への 試みを続けております。 ○共同ブランドの設立 そんなDESIGN HEARTのメンバーで、家具の製作を得意とするデザイナーと一緒 に先日新しいブランドを立ち上げました。その名も「feelt」。 http://www.feelt.jp/ furnishが得意とするフェルトの素材を用いて家具を作る。今までにない新し い家具のプロダクトです。 furnishが2人で始めたコースターのデザインが、今ではいろいろな人の力を借 りて、開業当時はできなかった家具の製作も今ではできるようになりました。 長いようで短い道程、そしてこれからも続くさらに長い道程。今後のfurnish の活躍をどうぞ皆さんご期待くださいっ!! furnish(ファーニッシュ) 吉川聡志 http://www.furnish.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 今年もデザイナーズウィーク、六本木と青山一丁目を巡りました。プロジェク トというより、個人目線のデザインが多かったように思います。ヒトがモノを 作るということ。そんなことを考えながら、展示物を楽しく拝見してきました。 (M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.32 2012年11月26日発行 2,700部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. All Rights Reserved ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛