┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第27号・・・2012/6/25       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第27号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第13回:ドバイコネクション ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第3回:studio note 寺山紀彦 ●pdwebデザインコンペ2012のご案内 ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第13回:ドバイコネクション ○シャーメイン シャーメインとはロンドンで開かれた国際会議で知り合った。彼女はインド代 表として出席していたので、インドに住んでいると思いきや、ドバイに移り住 んでそこでデザインオフィスを開業したところだという。ドバイにどのような デザインの仕事があるのかまったく想像がつかなかったが、そのときはあえて 聞くこともしなかった。社交辞令的にLinkedinでお互いのコンタクトを交換し たまま、しばらく何のやり取りもなくそのままになっていた。その何気ないや り取りが後で大いに役に立つとは、そのときは知る由もなかった。 ○国際会議 数ヵ月後に世界経済フォーラムの会議に出席するために、ドバイに行くことに なった。例年、秋に開かれるこの会議は、翌年度の1月にスイスのダボスで開 かれる本会議で議論されるアジェンダを決めるために開かれる。Global Agenda Councilと呼ばれる数十の分野の専門家が一堂に会し、実際に世界を動かして いる政界と財界のリーダーにダボス会議で何を議論してもらいたいか話し合う。 さまざまデータや視点を持ち寄ってすり合わせるのだが、当然さまざまな利害 関係が複雑に絡むなかでの駆け引きなので、会期中はすり合わせや、意見を集 約する目的の会議がひっきりなしに続く。そして数日後には結果を出さなけれ ばならないので、時間はいくらあっても足りない。ホテルに缶詰になって、ブ レックファストミーティング、パワーランチ、チームディナーといった具合に 食事の間も作業が進める。当然、数百人が同じ時間に食事をすることになるの で、毎食、同じのホテルの同じキッチンで同じスタッフが調理するご飯を食べ 続けることになる。そうすると会期の最後のほうはさすがに胃が疲れてきて、 なにか家庭料理のようなほっとできるものが食べたくなる。 会期も終盤に差し掛かったころ、慶応大学から来ていた紛争解決の専門家のT 教授と一緒になった。会議室を移動するために歩きながら、「なにかほっとす る食事がしたいですね」とこぼしたたら、T教授も同じように感じていたよう だったので、会議の途中だったが、外に抜け出してご飯を食べにいこうという ことになった。 ○9割が外国人の街 ドバイは住民の9割が外国人で構成される街だ。ここ数10年で発達した街なの で、多くのレストランは集客が容易で、空調などの初期投資が不要な巨大なモ ールの中に収容されていることが多い。観光客向けというよりドバイの街を作 るために移住してきた外国人向けなので、各国の郷土料理が揃う。しかしその ようなレストランはチェーン展開している場合が多く、そういったところにい ってもホテルとそう大差がないだろうから、路面に面している小さなレストラ ンに行ってみたいと思った。ホテルのレセプションにきいても埒が明かずに困 っていたときに、シャーメインがドバイに住んでいることを思い出した。 メールで連絡を取ってみたところ、幸運なことに、スケジュールが空いていて ホテルにすぐにピックアップに来てくれることになった。各国の要人のために 用意された黒塗りのアウディとメルセデスで埋め尽くされたホテルの車寄せに、 明るいパステル色の中型のセダンで乗り付けたシャーメインの車は大人の社交 の場に紛れ込んだ子供のようだった。人目を気にしながらもT教授と私はさっ さとシャーメインの乗り込むと、厳重な警備体制が敷かれたホテルの敷地をさ っさと後にした。 ○インドを後にする理由 会場からの距離と反比例するように、T教授と私の緊張はほぐれていった。離 れてみてどれだけストレスフルな環境に囲われていたかを思い知り、一時でも 息抜きの時間をとることができたことに感謝した。シャーメインには、とにか くドバイの地元の人が普段夕食を食べるレストランに連れて行って欲しいと頼 んだ。彼女も国際会議の常連なので、僕たちの気持ちはよく分かったのだろう。 連れて行かれたその店は、まさに僕たちが必要としていたメニューと雰囲気を 兼ね備えたところだった。モロッコ料理をふるまうその店は、安くてうまい人 気の店らしく大変にぎわっていた。屋外のテーブルに着くなり僕たちは冷たい 飲み物を頼んだ。ドバイはドライシティなので、メニューにはアルコール類は 一切ない。ガス入りの水を飲み干すと、僕たちは上着を脱いだ。汗が出てはす ぐ蒸発するので、シャツの背中には白く塩がふいていた。夕方になって昼間の 肌がこげるようなジリジリとした暑さはなくなったといっても、風が運んでく る空気は熱風だ。会議を抜け出してきたスーツ姿のT教授と私には快適と思え る気温の上限はとっくに超えていた。しかし、冷房の効きすぎた部屋にずっと いるよりは生きた心地がした。 しばらくして、ロンドンで疑問に思ったことをシャーメインに聞いてみた。 「なんでまたドバイに移ってきたの?」。T教授も同じことを聞きたがってい た。インドも決してデザインの需要が少ないわけではない、高い経済成長に支 えられて旺盛な商品開発に伴うデザインの需要があるのだ。インド出身の彼女 が外に出稼ぎに出る理由は見当たらなかった。 ○とにかく早く動く 「だって金払いがいいんだもの」。シャーメインはあっけらかんと言った。イ ンドと違って需要がある割には競合がいない。一言でいうと、中東のデザイン 業界を形容するとこういうことになるのだろう。そして、インドと違って、ヨ ーロッパと時差がないので、ヨーロッパのデザイナーと一緒に仕事ができて、 中東の金払いのよいクライアントからインドのデザインレートではなく、ヨー ロッパのレートでチャージできる。その結果、利益率の高いビジネスもエンジ ョイできる。 ヨーロッパのデザイナーもインドのデザイナーもなかなか中東には来ないので、 彼女はいち早く動いて、金払いのよいクライアントの開拓に努めた結果、状況 を自分の味方にすることに成功したという。しかし、それだけでなかった、ド バイコネクションというべきか、ドバイには投資家が集うネットワークが存在 していることも教えてもらった。ドバイ政府が用意した個人投資家向けのタッ クスベネフィットを用いて多くの投資家が自宅をドバイに構えているのだとい う。ヨーロッパに行くにも、東海岸に行くにもアジアに出るにも便利なロケー ションを生かして、多くの投資家が集い、案件を紹介するネットワークが実は 存在するのだという。無論、投資案件がブランディングを伴う場合、投資が決 定される際に自分のプロジェクトを売り込むのが彼女の戦略であったことは疑 いの余地はない。 ○ドバイコネクション レストランを後にして国際会議の現場に戻ったら、会議に対するまなざしがす っかり変わっていた。そこで、交わされるすべての会話が投資に直結している ことに気づいたのは言うまでもない。 西山浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第3回:studio note 寺山紀彦 ○仕事まだ6年目 私は4年間留学していて、30歳の時に日本に帰ってきました。何故だか分かり ませんが帰ってきたら仕事があると思っていました、今考えると愚かですが… もちろん何にもありません、実家に帰って毎日犬の散歩を日課としていました。 毎日歩いていました。 1ヶ月もするとモノ作りがしたくなり、自作でレジンの中に花を並べた花定規 「f,l,o,w,e,r,s」を制作して満足していました。当時は発注と言う言葉すら 知らない状態で、他の人に作品を作ってもらう感覚もなく、どこに連絡してい いやら五里霧中でしたが、自分でやっていくという根拠のない自信だけありま した。そして、生活しなくてはと友達の紹介で東京に仕事があると聞き、引っ 越して来ました。 東京でも自分で作品作りを行っていて、誰にも知られない作品がいくつかでき たのですが、世間への出し方がまったく検討つきません。 そういった作品を、2年前から日本で活動している友達に見せたところ、商品 化するべきだと言われ、その気になって卸先もないのに貯金を使い、アクリル 定規「f,l,o,w,e,r,s」を100本制作しました。アクリルってこんなに高いか… と思いましたが、製品化されたそれは自作レジンとは比べようもなく綺麗でし た。 ○初めて作品が売れた日 その友達の誘いもあってグループ(novelax)を作って、合同展示会でいろい ろな場所で定規を見てもらいましたが、10回以上展示しても、値段が高いこと もありまったく売れません。そこで聞く評価も 綺麗だけど高いよねと言われ、 一緒に活動している人に迷惑になってないかと落ち込みました。 ある日、展示のお誘いがあり、六本木ヒルズの芝生で販売をしました。今日も 俺だけ売れないんだろうなぁと、みんなは気を使って場所代をプロダクトの面 積割りにしてくれました(定規は小さいからです)。俺だけこんなのかと、落 ち込んでいる時に、1人の男の人が定規を指差して、これくださいと言いまし た。ん? 値段を見ていないのかなと思い、これは16,800円になりますよと言 いました、「はい、ください」とお客さんが言ってくれたのですが、まだ理解 できず、膝がガクガクと震えてきました。 「あ ありがとうごじあます」と震える手で梱包作業をしていたのですが、横 で見ていた友達が手伝ってくれて無事に渡すことができました。その時の震え と友達の喜んでくれた顔、お客さんは忘れられません、作った物が最初に売れ た記憶です。その後、その定規が名刺代わりになって、店舗での販売もしてい ただけるようになりました。 クライアント仕事ではCLASKAの一室(CLASKA room 701)をデザインさせていた だいたり、massitemの商品(sonoiro)なども手がけさせていただきました。個 人の作品も、販売できるものと、考えを伝えられるようなコンセプト重視の作 品など、12作以上は製作しています。 デザインをはじめて6年経ちますが、今でも私のことは知らないけれど花定規 「f,l,o,w,e,r,s」は知っていると言う人にお会いします。すべては人と人の つながりからです。これからも大事にしていきたいと思います。 studio note 寺山 紀彦/Norihiko Terayama web :http://www.studio-note.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●pdwebデザインコンペ2012のご案内 今年で第5回を迎える「pdwebデザインコンペ」。今回から「デザイナーとモノ 作りの現場を直結する」コンペとなります。 皆様からの応募作品は、日本各地のモノ作りの産地のプロが審査を行い、優れ た作品は商品化への道が開かれます。製品化への道がぐっと近づいたデザイン コンペにぜひみなさんチャレンジしてください! そして基本テーマは従来と 同じ「明日のカタチ、生きたカタチを求めて」です。遠い未来ではなく、明日 の暮らしをより快適にしてくれる、モノのあるべきカタチを提案してください。 ※作品受付は2012年9月1日(土)より開始、 最終締め切りは10月31日(水)です。 ○審査員企業 セラミック・ジャパン(磁器・食器系) 能作(銅器・金属インテリア) ハコア(木工系プロダクト) Kom&Co Design(デジタルデバイス系) ○応募ジャンル 磁器、金属、木工、デジタルデバイスなど。具体的には食器、ステーショナリ ー、家具・インテリア、スマートフォン/デジタルグッズなどが対象になりま すが、審査員企業が製造可能なモノであれば、特にジャンルの制限は設けませ ん。 詳細、応募要綱は以下まで。 http://pdweb.jp/dsgncmp2012/index.html 大賞(賞金10万円)、審査企業賞の詳細などは以下まで。 http://pdweb.jp/dsgncmp2012/index2.html ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 東京ビッグサイトで開催されていたDMS(日本ものづくりワールド2012)に行 ってきました。今年は併設イベントの合計で過去最高の出展社数だそうで、来 場者も賑わっていました。あまり時間がなくて、駆け足で会場内を巡ったので すが、やはり気になるのは3Dプリンタ関連。年々その造形物は高精度になり、 価格もリーズナブルになってきているようです。写真の世界はデジカメ、ネッ ト、カラープリンタによって大きく様変わりしましたが、3Dプリンタは、アク セサリーやインテリア小物など個人の手作りクラフトの世界を大きく変えてい くのかもしれません。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.27 2012年6月25日発行 2,400部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. All Rights Reserved ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛