┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第26号・・・2012/5/25       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第26号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第12回:おまじないを解くおまじない ●新連載リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第2回:吉行良平と仕事 ●pdwebデザインコンペ2012のご案内 ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第12回:おまじないを解くおまじない ○おまじない まず、2枚紙を用意する。 そして、おもむろに自分が不安に思っていることを書き出してみる。書きなが ら、最悪の状況を想定する。たとえば、次のように書いてみる。「今ある数社 のクライアントは、新しいクライアントを開拓しようとしているのを知って怒 って、解約するだろう」「収入がなくなって、子供を育てられない」「親とし て失格だ」「独立という最悪の決断をとった」「独立なんてしなければよかっ た」。 次に、もう1枚の紙に能天気な理想を書き出す。ここでの注意点は、馬鹿にな りきることである。自制心をどこかにおいてくることが肝要だ。たとえば、次 のように書いてみる。「既存のクライアントより金払いが数倍良い新規のクラ イアントが安定して増えていって、収入はうなぎのぼりになる」「クライアン トは自分のサービスが他では得られないことを知っていて、定期的に戻ってき てくれる」「息子は有名大学に入学し、卒業までの学費を全て払い終えてい る」「独立したことで、新しい豊かな生活を送ることができた」「独立は人生 で最良の決断だ」。 最後に、最悪のシナリオを書いた1枚目の紙を灰皿の上にのせて、めらめらと 燃やして灰にしてしまう。そしてもう1枚のシナリオは財布の中にしまってお いて、翌日から20日間、毎日声を出して読み上げる。 ○マイナスのバイアス このおまじないのようなハウツーはベティーが教えてくれた。なんのハウツー かというと、自分でも気がつかない間に、自分でかけてしまったバイアスとい うおまじないを解くためのものである。ベティーは脳の機能に関する本をいろ いろ読んだあげく、試行錯誤を繰り返して、独自の自己暗示の方法を編み出し た。そして、折々に自分に自己暗示をかけてみて、有効だったので知人らに共 有している。 そっくりそのままはやったことはないが、似たような自分なりの「おまじな い」を自分にかけることにしている。特に事態が切迫して睡眠時間が取れない 日々が続いたときには、意識的に知らない間にかかってしまった自己暗示をは ずす努力をするようにしている。 実際はそんなにひどくないのに、最悪の事態に見える。現象は部分的なのに、 全体的に見える。こういったとき、実際より不安に見えるように自己暗示がか かっていることがある。どうしてそうなるのかは分からない。しかし切羽詰れ ば詰まるほど、自分を守るための心理的な作用が働く。右脳が司る無意識が目 前の危険をさらに大きな危険と認識させることで、傷つくことを回避できるよ うに促しているのかもしれない。特に疲れていると、目の前にある事実を歪曲 して、そのときの気分でバイアスをかけてしまいがちだ。バイアスは楽観的に も、悲観的にもかかりうる。そしてその結果、意思決定にもムラがでてくる。 意思決定のムラは、ビジネスの成果のムラにつながる。そして最終的に物事の 達成の打率を下げて、さらに労働時間を長くする。これはなんとしても避けた いことである。 意識的に自分にかかっているバイアスを、とにかく取り払って事実を事実とし て見られるようにする努力を怠ると必ず損をする。しかしこれは、誰しもが経 験的に知っていることではない。そもそもバイアスがかかっているという認識 を多くの人が自覚していないのだ。ひとたび視野狭窄に陥ってしまうと、毎日 の決断がそのバイアスの中でしか行われなくなり、事態はゆっくりゆっくり自 分でも気がつかないうちに深化していく。やがて自分だけでは物事を解決でき なくなるほど、悪化する。やがて現実を見ないですむために無意識が思考能力 を低下させる。そして、輝かなくなる。 ○おまじないを解く はじめてNさんに会ったとき、体内に溜め込んだエネルギーが身体に収まりき れなくてはじけそうだった。生命力にみなぎっている印象を受けた。目ぢから は強く、表情ははつらつとしていた。南国生まれの彼女は屋外でスポーツをす ることも気にせず、いつも健康的に日焼けしていた。東大をでた彼女は、順当 に大企業に就職し、MBAを米国で取得した。そして、帰国後は転職しITベンチ ャーの幹部に納まるというキャリアの持ち主だ。次から次へと目標を設定して は、こなす。そんな障害物レースのような生き方をしてきた人物だ。さらに、 何に取り組むにも前向きで、トラブルが起こっても事態の良いところを見つけ てはその好意的な解釈を拡大した。そして、そうすることで、周囲にいる人間 を勇気付け、事態を好転させる名手だった。彼女を取り巻くすべてが正の方向 に向かって回転し、そして彼女と調和が取れていた。 数年前、その彼女がまた、転職活動を始めたと、風のうわさで聞きつけた。こ れは一緒に仕事をするチャンスがめぐってきたと思って、まずはご飯を食べる 約束をとりつけた。待ち合わせの恵比寿のレストランに約束の時間ぎりぎりに なって到着すると、果たして彼女は2階のテーブルに先に着いて待っていた。 その小さなレストランの2階には、3つしかテーブルがない。すべて埋まってい たが、どのテーブルに座っているのがNさんなのかを見極めるのにしばらく時 間を要した。あまりにも人物の持つ印象が変わってしまっていたのだ。目は精 彩を欠き、思考のパターンも安定せず、したがって受け答えも一貫したものと は言い難いものだった。 すぐに、これは、負のスパイラルに入ってしまっているのだなと思った。ネガ ティブにものを見るバイアスがかかっていて、その呪縛にはまっていたが、本 人はどうしてもそれに気がつかない。少しずつ、少しずつ、日々の判断をマイ ナスのバイアスをかけて行っていった結果、彼女の持ち前の輝きを手放してし まったのだ。こうなると他人には手がつけられない、どのような働きかけもマ イナスのバイアスで受け止められてしまうからだ。 あの時食事を取って以来、Nさんに会っていない。かつてのNさんに戻っていて くれたらと思う。しかしマイナスのバイアスをリセットするきっかけは向こう から自然に訪れたりはしない。Nさん自身が決意をどこかでしないといけない のだが、こればっかりは本人が強い決意のもとで実行に移さなければならない。 そして、いったんマイナスに回転し始めたはずみ車を逆回転させるには、時間 もかかるし、相応のエネルギーを要する。 しかし一旦、バイアスをとることに成功してしまえば、後は、習慣でバイアス を取り除き続けるのは容易だ。そしてバイアスを取り払うことを定期的に行っ ていると、現実をありのまま直視できる視界のメンテナンスができる。視界を クリアにしておくことは身を助けることにつながる。 Nさんが迷い込んでしまった袋小路にかつて自分もいたことがあるだけに、知 らず知らずに自分自身にかけてしまうバイアスの恐ろしさは身にしみて分かっ ている。 西山浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●新連載リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第2回:吉行良平と仕事 ○きもちのよい、線と色をひくこと。 スタジオ名が「吉行良平と仕事」。 当初(今もですが…)よく何をしているのですか? と聞かれることが多かっ た。日本やオランダで経験したことを踏まえ、「自分自身がどのように、その プロジェクト(仕事)にかかわっていけるかを丁寧に考えていきたい」。その 思いを少し入れてスタジオ名に。 何をしているのか分からない名称からなのか、自分から欲しているからなのか、 さまざまな素材、空間、人々の中で動くことが多い。それぞれに求められるこ とも、もちろん違いますが、最終的に「吉行良平」とその案件、プロジェクト、 クライアントである「仕事」が、きもちのよい線と色をひけているかを目指し ています。 他と違う、新しいものを目指しているわけではなく、そのプロジェクトでしか 双方が表現、生産、持続できなかったものに落とし込んでいきたい。もちろん、 一般における美しさや評価、マーケティングなどは意識しなければいけません が、自分が、そしてクライアント、作り手が現場で「美しい」と納得できたか どうか。それが結果、人やものを少し幸せにしていくと考えています。 自分個人の考え(それは時にスケッチであり、お手製の実験モデルであったり、 とにかく何かカタチとなったもの)を持って現場へと何度も運び、今度は現場 からの考えを踏まえてともに手や頭を動かし物をあげていく。 そのぶつかり合いや繰り返しが、そのプロジェクトでしかひけなかった素直な 線をひきはじめます。それは大きなコンセプトということだけではなく表面的 な形、詳細な部分や接合、仕上げにも共通しています。また、発表後も持続し てその商品や作品を見続け、問題点や、双方で認識した美しさを改良していく こと、また次へどうつなげていくかにかかわってくると思います。 地道な試行錯誤を続けていくためにも、「自分自身」がどのようなものやこと を素直に「うつくしい、ここちよい、きもちよい」と感じているかを微細なと ころまで認識したいと考えていますが、自分のことながらなかなか具現化は難 しいです。 できるだけ自分のプロジェクトを持ち、発表、制作することはそれを非常に意 識できるものです(結果的にどれも自分個人で成り立つことはなく、多くのこ とや人に支えられて生まれます)。それらが結果的に少しでも「吉行良平と仕 事」の形として伝わりやすくなればと思います。 ○自分の目を通して何をみているのか。 それを知るためなのか、最近歩くことが多くなりました(自転車も好きなので すが、さすがに運転に集中しないとあぶないので…)。いろんな景色に、自分 の思いをかさねます。それは、建物であったり、また看板と空の色の組み合わ せ、風や雨などの、現象であったり。 現場へぶつける際、少しでも具体的にと思うのですが、自分の空想も入ってし まうので、どのプロジェクトも最初のやりとりはかなり、「?」マークの連続 です…。それでも、多くは実験を繰り返す中でクライアントや作り手、プロジ ェクト自身からの意思のかえりが生まれ、自分自身の方向の認識もかなり整理 され強調されてきます。線を引くための点と点となりえるこのやり取りの「点」 は生産可能か、技術面といった現実的な部分の方向性や決定にも必要不可欠で す。 最近制作したTUAREGによる銅の器「thin」もこの点と点をむすびながら生まれ ました。生活の中へどういう形で、入れていくかという対話の中でサイズや形 を導きだし、また身の回りにある、お互いによいと思うものを集め注意深くそ れを観察、分解しつなぎとめました。薄い銅板は、叩いてさらに薄くのばし、 よくふれる口元だけ錫をひくことで形をひきしめ保持することにもなり、その 柔らかさ、軽さを保ち佇んでいます。 http://www.ry-to-job.com/web_r/works/thin.html 昨年のDESIGNTIDE TOKYOでも発表となったLAUGHによる家具レーベル「see-saw」 は、大阪・堀江にショールーム/ショップをオープン。LAUGHの職人さんの経 験や「ふつう」の捉え方をともにぶつけあい「knotted」というテーブルを制 作しました。 http://www.see-saw-products.com/ 現在進んでいる国内外のプロジェクトも、プロダクトだけではありませんが基 本はこの「点」を“吉行良平”と“仕事”が生み出し、人やものを少し幸せに する気持ちのよい線をひく作業が続いています。吉行良平と仕事(プロジェク ト)がひいた線。是非みていただければと思います。 ○吉行良平 / 吉行良平と仕事 デザイナー / オランダへ渡り、Arnout Visserのもとで研修をつむ。Design Academy Eindhoven 卒業後「吉行良平と仕事」設立。droog design やArnout Visser のプロジェクトの参加を経て、2009年日本へ拠点を移す 。さまざま なクライアントとの商品開発やプロジェクトを行いながら自身のコレクション も発表、販売を行う。 http://www.ry-to-job.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●pdwebデザインコンペ2012のご案内 今年で第5回を迎える「pdwebデザインコンペ」。今回から「デザイナーとモノ 作りの現場を直結する」コンペとなります。 皆様からの応募作品は、日本各地のモノ作りの産地のプロが審査を行い、優れ た作品は商品化への道が開かれます。製品化への道がぐっと近づいたデザイン コンペにぜひみなさんチャレンジしてください! そして基本テーマは従来と 同じ「明日のカタチ、生きたカタチを求めて」です。遠い未来ではなく、明日 の暮らしをより快適にしてくれる、モノのあるべきカタチを提案してください。 ※作品受付は2012年9月1日(土)より開始、 最終締め切りは10月31日(水)です。 ○審査員企業 セラミック・ジャパン(磁器・食器系) 能作(銅器・金属インテリア) ハコア(木工系プロダクト) Kom&Co Design(デジタルデバイス系) ○応募ジャンル 磁器、金属、木工、デジタルデバイスなど。具体的には食器、ステーショナリ ー、家具・インテリア、スマートフォン/デジタルグッズなどが対象になりま すが、審査員企業が製造可能なモノであれば、特にジャンルの制限は設けませ ん。 詳細、応募要綱は以下まで。 http://pdweb.jp/dsgncmp2012/index.html 大賞(賞金10万円)、審査企業賞の詳細などは以下まで。 http://pdweb.jp/dsgncmp2012/index2.html ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 アマチュアバンドに参加していることもあり、楽器のデザインを気にすること があるのですが、新しい音を創造していく音楽にあって、その道具となる楽器 は昔ながらの定番モノが多いのは不思議。エレキギターなど、一時は斬新なデ ザインもありましたが、今はむしろヴィンテージ系が主流なのかも。時代背景 とミュージシャンとテクノロジーと職人とデザイナー。それらが楽器のニュー スタンダードを生み出す日は来るのでしょうか?(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.26 2012年5月25日発行 2,400部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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