┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第22号・・・2012/1/27       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第22号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●連載コラム:西山浩平の空想デザイン 第9回:エンジニアパパ ●連載コラム:上海的モノ生活 第16回:人が動く、モノは止まる国民的大イベント=春節 ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●西山浩平の空想デザイン 第9回:エンジニアパパ ○ユーザーイノベーション学会の打ち上げ 座っているだけで汗の出る暑い日だった。ミュンヘンの郊外にあるバーベキュ ーを振舞う屋外レストランに連れてこられた我々は、席に着いてめいめい好き なものを注文した。100人近い出席者がいるユーザーイノベーション学会も3日 目の最終日となる頃には、参加者同士は往年の知り会いであったかのような気 分になる。しかし研究分野を横断する学会だったので、ほとんどの出席者がお 互いの研究内容を知らないでいた。だからバーベキューの席で隣に座る人同士、 相手の研究分野を聞くところから始めなければならなかった。 とはいえ学会を主宰したMIT教授のエリックによる音頭で乾杯をした頃には、 大きな笑い声が至るところで起こり騒がしくなっていた。フェアウェルランチ と銘打った打ち上げは開始早々リラックスした雰囲気に包まれざっくばらんな 話ができる感じになっていた。 たまたま隣に座ったのは、ミュンヘンでもっとも権威のある工科大学で教鞭を とる研究者のホアキンだった。会話を始めたときは気にならなかったが、しば らくすると機械と話をしているような気分になってきた。1つひとつの文章が やたら短く、助詞をあまり使わないので文章がぶつ切りになって聞こえるのだ。 ホアキンにとって英語が第一外国語ではないにしても、あまりにも極端な話し 方だった。母国語で話をするときもマシンのように話をするのだろうなと、話 を聞きながら考えていた。 ○部品製造現場にも健在:創意工夫をするユーザー ホアキンは学会初日に発表をしていた。エリックも一目おいている証拠だ。発 表の内容はドイツの中間材のイノベーションの発生プロセスに関するものだっ た。論旨は明快で、結論の裏づけも非の打ち所がなかった。中間材、つまり部 品のイノベーションが担当部門とはまったくない社員や個人のユーザーによっ てもたらされることがあるということを証明した内容だった。 エリックは、医療の現場では新製品のヒントとなる創意工夫はメーカーよりも ユーザーに近いところで起こりやすいということを先行する研究で証明してい た。つまり、医療機器メーカーより、現場にいる婦長さんや患者自身のほうが、 かゆいところに手が届く工夫ができるのでイノベーションが起こりやすいとい うことだ。エリックはこのようにユーザーがイノベーションを起こす現象にユ ーザーイノベーションと名前をつけて研究分野として世に知らしめた一人者で ある。目下のところエリックの関心事は、他の業界でもユーザーイノベーショ ンは起こるのかというところにあった。さまざまな業界や学会に声をかけて、 関心のある研究者や企業経営者に情報の共有を依頼していた。日本にいる僕に 声がかかったのもCUUSOOにおける無印良品とのプロジェクトでユーザーが主導 する形で商品化をしていたからだった。そういった意味ではホアキンの研究は 製造業においてもユーザーがイノベーションを起こしていることを証明してお り、その研究成果はエリックにとってはとても意義があることだった。 ○ホアキンのスイッチ ホアキンとの会話は最初は研究について詳しく聞くだけだったが、アルコール も入り上機嫌になってくるとホアキンはプライペートに関する内容についても 話をしてくれた。子供が2人いること。2人とも女の子で、毎朝大学に出勤する 前に保育園に自転車で送っていること。彼自身がメカニカルエンジニアとして かつては大企業で働いていた経験があること。相変わらず、マシンのように話 す彼にもプライベートがあるのだと知ってほっとする一方で、子供たちと話を するときも同じようにマシン語で話している画像が頭を離れなかった。その想 像では子供たちはもはや人間ではなく、四角いロボットのカタチになっていた。 ふと奥さんがどんな人なのかが知りたくなって聞いてみた。そしたら驚くこと にその質問が、ホアキンのなかのスイッチを押したことになったらしく、突然 情緒豊かに語りだした。ホアキンは鼻息も荒く串刺しにした魚にかぶりつきな がら、「彼女と結婚したことが、僕の人生の最良の決断だったよ」とはなし始 めた。よほど自慢の奥さんだったらしく、プロのダンサーだったという奥さん との馴れ初めを聞かせてくれた。ホアキンはすらりとしているし、よく見ると 映画俳優のようなルックスをしているともいえなくもないが、決してもてるタ イプではない。ひざの抜けたジーンズを常にはいていて、ぼさぼさの髪をして いる。典型的な女性受けしないタイプなのだ。だからよほど彼の世界とは別の 世界に住んでいた奥さんとの出会いが彼にとってはとても大きな意味を持って いたのだろう。事実、ホアキンは熱っぽく人間味豊かに次のように語ってくれ た。 ○イノベーションの本質 「結局のところ、人は別の世界に住む人との出会いによってしか、新しい発見 はできないのさ」。ホアキンはその後、別人のように彼の人生の経験と今回の 研究の成果がいかに1つの軸でつながっているのかをそれは色彩豊かに語って くれた。 同業のエンジニアたちとしか接点がなかったかつてのホアキンが、アーティス ティックでセクシュアルな世界で活躍する奥さんのような相手と出会うことは めったに起こらない。しかしだからこそ双方が惹かれあって共通のゴールが見 出せたとき、新しいノウハウが生まれるのだという。商品開発の現場でもメー カーの担当者たちは自分たちの知識や常識を超えた考えやひらめきを持つユー ザーと出会わない限り、社内の枠組みを超えた発想はできないのと似ている。 ホアキンは奥さんとの出会いと商品開発においてメーカーとユーザーと出会う ことには共通項があると説明してくれた。 もはや僕の頭の中のホアキンの子供たちはロボットの形はしておらず、目をき らきらさせた5、6歳の女の子たちの姿に変わっていた。こちらの納得したよう な表情を確かめるとホアキンはウインクをして大きなジョッキにまだなみなみ と入っているビールをごくごくとおいしそうに飲み干した。 これまでユーザーとメーカーは対極の存在として語られることが多かった。し かしごくまれにより良い製品を生み出すために、ユーザーが製造をし、メーカ ーがその工夫を消費する。そういうクロスオーバーが起こるとそれまでの景色 は一変する。突然変異のように役割が反転する現象を研究者たちは、興奮とと もにイノベーションの秘密に迫ろうと日夜探求を続けている。 西山 浩平 Linkedin : Kohei Nishiyama Twitter : Kohei Nishiyama ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●上海的モノ生活 第16回:人が動く、モノは止まる国民的大イベント=春節 稲吉実菜子/フリーライター 中国で春節とはお正月のこと。1年で一番盛り上がる祝日で、中国人は家族と 一緒に新年をお祝いするのが一般的。となると、当然ながら広大な中国のこと、 人の移動も半端ではなく、加えて国民総休暇状態なのでいろいろと不便なこと も発生するのです。今回はそんな旧正月事情について。 ○春節進行にふりまわされる! 中国のお正月は陰暦のために日時は毎年流動的ですが、今年は1月22日が大晦 日、23日が元旦にあたります。12月くらいになると国家から法定休日が発表さ れ、いわゆるお勤め人は大晦日から1週間が休みになります。 ただ、地方に戻って休暇を過ごす人はもっと長く休みを取ることが多く、その ため地方出身者が多い工場などは生産体制が春節進行にならざるを得ません。 例えば冷凍食品の工場などは12月早々から大車輪で生産し、旧正月のかなり前 には休みに突入してしまいます。なかには半月以上の冬眠に入るところも。 そうなると多くの会社が春節前に在庫を確保しようとしてちょっとした争奪戦 が発生するわけです。そのために前もって段取りを組まないと本当に悲惨なこ とに。春節前のある日、電話がかかってきて「商品Aがやっぱり作りきれなかっ たから、ごめん○個でいい?」なんて事態も起きてしまうわけです。また、物 流面もストップするので、生産はできたものの物流が確保できずに届かない!、 なんて悲しい話もこの時期は周りでよく耳にします。 ○人材確保が悩みのタネ 休みが長い工場系は別としても、いわゆるサラリーマンでも春節前は頭の中が ピンク色になっている人が大量発生です。もう案件が進まない、進まない!  とくに今年の旧正月は1月なので、西暦のお正月休み(1月1〜3日)後に通常モ ードに戻ることなく、休み気分な人が多いのでは?  私の周りの中国人営業担当は年末のご挨拶! と言いながら、会社の正月休み 予定表を配り歩いていましたが、きっちり休みを取るための前準備であること は間違いありません。彼の営業先は飲食店のために正月休みはなし! 万が一 休暇中にトラブルで呼び出されたらせっかく取った電車のチケットが無駄にな ると、不安みたいです。 実際、春節前にあるトラブルが発生して、人材を集める必要があったのですが 、見事に人が集まらない! たとえ休日手当がもらえたとしても、この時季に 働くという概念は中国人にはあまりないそうです。まぁ、日本人も正月に働く 気にはなれないでしょうが、正月前後までも休むのはちょっと痛手です。 中国に来るまで旧正月がこんなに大イベントだとは知るわけもなく、お正月が 遅いだけかと思っていたら大間違い。ヨーロッパのバカンス? っていうくら いの大型連休だったのでした。きっと休み明けも正月ボケで仕事が捗らないで あろうことは今から容易に想像できるので、恐ろしくもあります。 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 ○pdwebメールマガジンの読者の皆様、いつもご愛読ありがとうございます。 本年もよろしくお願いいたします! 気がつけば、本メールマガジンもレギュ ラー配信だけで22号目。気がつけばもうすぐ丸2年になります。本メルマガは、 pdweb.jpとはまた異なる視点での情報を毎月お届けしています。ビジネス目線 や海外コラムなど、デザイン業務に直結する情報ではありませんが、皆さんが デザインを考えていく上でのちょっとした糸口や何かのきっかけとして、お役 に立てれば幸いです。また、広告も募集していますので、info@pdweb.jpまで お気軽にお問い合わせください。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.22 2012年1月27日発行 2,400部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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