┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第93号・・・2017/12/22       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第93号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第69回:坪井浩尚/KOSHO TSUBOI DESIGN ●編集長のミニコラム 「2018年の3Dプリンタ」 ●pdwebなどの2018年度媒体資料のご案内 ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第69回:坪井浩尚/KOSHO TSUBOI DESIGN ○「MEANING DRIVEN DESIGN | 意味が先行するデザイン 」 一般的にプロダクトデザインでは、マーケティングや営業部門でターゲットさ れる、おおよその価格、技術、ユーザーが想定された、ある特定のオブジェク トの外観設計を求められる。 強いブランドや、継承すべき分脈があれば異なるが、このようなマーケット・ インの開発では、みかんがたくさん入っている箱に、少しキレイなみかんを投 げ入れるようなもので、デザイン制約が厳しくなればなるほど、革新的な製品 からは遠ざかってしまう。 マーケット・インは、ローリスクで利益をもたらす可能性を有する反面、コモ ディティ化しやすく、競合他社とのコストや流通の激しい競争にさらされる危 険性もはらむ。携帯電話やテレビが、次の製品で少し薄くなるかもしれないと いうのは、想定される予定調和な価値であり、必ずしもそのことだけが私たち の「喜び」として歓迎されるわけではない。 私がデザインにおいてもっとも重要視するのは、その製品が私たちにもたらす 「感情の質感」や「豊かさ」そのものの設計である。造形の美しさや、最先端 技術、高い生産性といったものは、あくまでその感情を作り出すための一手段 であり、最低限モノが行き渡った昨今の日本において、第一に優先されるべき ものではなくなったと感じるのである。 私が「意味の設計」を口にすると、たびたび「プロダクトデザイナーが造形を おろそかにしている」「企画や作り方を変えるな」「デザインは技術の後追い で良い」と曲解されることがあるが、スタイリングや技術を「前提」としてデ ザインを走らせないだけであって、意味の設計を満たす最適で美しい造形や、 厳しい生産要件を満たす現実性は徹底追及することになるので、アプローチは 大きく異なれど、結果としてそれをケアすることとなり、決して軽視している わけではない。 ウォークマンやiPodのように、世の中を一変させるような革新的プロダクトは、 私たちが歓迎すべき意味の創出や、新たな感情の質感を前提に、意匠・技術・ 製法をデザインしてこそ産み出される。 そもそも「なぜデザインに革新が必要か」と問われれば、既知なる市場欲求を 前提としてユーザーに近寄っていては、真にユーザーが望むものが作れないと 思うからである。 リスクは伴うが、新たなビジョンを世に問い、もし受け入れられることがあれ ば、その会社は強度ある長期的な財産を手に入れることができ、市場における 競争優位性を獲得できるのである。その価値から比べれば、リスクは自ら望ん でテイクしにゆくべきものであろう。 ミラノ工科大学のロベルト・ベルガンティ教授はこのような意味からものを考 える思考法を「意味の急進的イノベーション = デザイン・ドリブン・イノベ ーション」と呼び、これまでの「人間中心のデザイン」や「デザインシンキン グ」の次世代概念として注目を浴びている。 では、意味を優先するということは例えばどのようなデザインなのか。 ○The Mirror of Truth | Artwork http://pdweb.jp/column/mailmag/mirroroftruth.jpg http://pdweb.jp/column/mailmag/mirroroftruth02.jpg この鏡は2010年に科学未来館で行われた「地球マテリアル会議」という企画で 概念模型を発表し、後に試作を重ね製作した作品である。よく見ると違和感を 感じると思うが、鏡に映る像が反転をしている。 鏡というものは、他者に映る自分を確認するための道具であると思う。しかし、 現実に現れる像は他者が見た自分の反転した像であるという矛盾を抱えている ことに、多くの人は疑問を抱かない。 私たちは、髪の分け目、ホクロの位置、骨格や筋肉のつき方も左右対称ではく、 本来の自分を確認するためには写真に写したり映像を撮るしかない。日々、反 転した自己像を確認することとなるため、これまで写真や映像に映る自分に違 和感を覚えたことがある方も多いのではないだろうか。 この鏡は、レンズ光学を設計に応用し0.06mmという微細ピッチすべての断片に おいて異なる角度が正確に切られており、本来光が反射し結像する正反転距離 に光を反射し、特定の距離で反転した像が結像されるように光学設計を施して いる。さらに、目と目の距離の視差、瞳の大きさ、脳の中でどのように画像と して浮かび上がるかといった歪み(収差)を、その数式に取り込み補正をかけ ている。一切電気を使わず、自然界の物理法則のみで成り立っているのである。 この鏡のデザインにおいて、意匠設計という意味では、周り縁もなくフラット で特に何かしているようには見えない。通常の鏡の製法とも大きく異なる。し かし、本来の鏡の意味的側面からすれば、こちらの方が正しく意味の本質をデ ザインしているとも言えるだろう。 ○Magic Calendar | Google http://pdweb.jp/column/mailmag/magiccalendar.jpg http://pdweb.jp/column/mailmag/magiccalendar02.jpg このカレンダーは2017年のGoogle社のandroidの企画にて発表した「紙がイン ターネットに繋がる未来」を構想し製作したカレンダーである。見た目は紙の ように見えると思うが、実際はディスプレイである。 私たちは携帯の画面やテレビを見ているとき、バックライトによる直接光をガ ラスや液晶を通して目で見ている。一方、紙を見るという行為は何らかの他光 源の反射光により見えているのであって、その光の特性は大きく異なる。 このカレンダーは特殊なアルゴリズムとバックライト、偏光プリズム、液晶方 式を採用し、反射光における光や色を設置環境下で作り出せる「環境ディスプ レイ」という概念を世界で初めて提唱したものである。 カレンダーの意味的価値はスケジュールの確認だが、その予定を管理するため にはカレンダーにペンで予定を描き入れるか、携帯やパソコンのアプリを使用 の度に立ち上げる必要がある。毎日何度も行うことなので、目をやればすぐに 予定が確認できるものの方が良いと考えた。これまで馴染深い「紙」の1つの 未来として、その意味を先行させて設計したことからこの「紙ディスプレイ」 は生まれた。このカレンダーは早ければ2018年度中に発売を開始する予定だが、 今後新たなディスプレイの可能性を世に問えたらと思う。 ○意匠ドリブン→意味ドリブン この2つの事例は、どちらも意匠的に捉えれば、ただの丸と四角、技術的に捉 えても枯れた技術や、他領域技術の応用と編集である。決して意匠・技術ドリ ブンからでは生まれなかったはずだ。 意味ドリブンでデザインを考えると、これまでのアプローチや製法とは大きく 異なる。しかしイノベーションとは得てしてそのような思考法から生み出され るのだと信じている。 「MEANING DRIVEN DESIGN」は時として、既存のプロダクトデザインの領域を 超え、マーケティング、サイエンス、(IT)エンジニアリングの領域をも自由に 横断しなければならない。しかし、どのようなカテゴリーに属すか、プロダク トデザイナーの範疇かどうかという問いはあまり意味をなさないと考えている。 アプローチや領域は違えど、意味的にはこれまでのデザインのど真ん中なのだ から。 1920年代末にレイモンド・ローウィがアメリカで「インダストリアルデザイン」 という言葉を広めてから約90年。バウハウスもポストモダンもダネーゼも、イ ンダストリアルデザインの歴史は、人間1人が一生を終えるあいだに起こった 出来事に集約される。 この世の中は諸行無常。 人もデザインも進化は必然である。 坪井浩尚/KOSHO TSUBOI DESIGN http://www.koshotsuboi.com/ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集長のミニコラム 「2018年の3Dプリンタ」 数年前に日本でも3Dプリンタブームが起こり、テレビや新聞などマスメディア もこぞって取り上げた。ところが煽ったもののピント外れな内容ばかりで、現 実の3Dプリンタができることは限られていた。そして特にコンシューマー系の 市場は勢いを失っていった。ただこれも歴史的必然であり、まだまだプリミテ ィブなデバイスに輝かしい未来を投影することは悪いことではない。 一方で3Dプリンタは成長の歩みを止めず、一歩ずつ確実に力を蓄えてきている。 2018年は、pdwebでももう少し3Dプリンタ情報を増やしていこうかと思ってい る。おそらくこれからが、デザイナーにとって必要なツールになってくる可能 性を感じている。 森屋義男/pdweb.jp編集長 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●pdwebなどの2018年度媒体資料のご案内 pdwebなど弊社の媒体資料の2018年度版を作成しました。広告やプロモーショ ンを検討されている企業様は以下よりダウンロードお願いいたします。 http://pdweb.jp/info/MEDIADATA_colors_2018.pdf お申し込み(お問い合わせ)メールアドレス→ info@pdweb.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 ○また新しいベースを買ってしまった。しかも2本。1本は前から欲しかったセ ミアコ系のタイプで、もう1本は楽器店でふと目に留まった軽量スティックタ イプ。三脚や釣り竿のケースに入るような細身のベースだ。ヘッドフォン端子 も内蔵している。以前より出張先のホテルなどで暇な時に楽器弾きたくなるの だけれど、これを旅行の友にしようかと思っている。それでは皆様、メリーク リスマス&良いお年を!(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.93 2017年12月22日発行 3,000部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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